429:L、最大の失敗
あけましておめでとうございます!
今年も骨董無双、ならびに乱太郎をよろしくおねがいします!
あらすじを変更したので、お暇なら見てくださいね~(╹◡╹)
縫い付けられた森長を見つめながら、Lは思う。そう、思ってしまった。これは失敗したと!
「……もし。あそこであたしが、メデッ熊の攻撃から逃げたら、マイ・マスターは侮蔑の視線と言葉であたしを責めた。いえ、きっともっと酷いことをするに違いないッ!! 失敗したわッ! あのまましくじって、マイ・マスターに折檻してほすぃぃぃ! そうと決まれば、オイ熊!! 今すぐさっきの続きからやり直しだ!!」
「アヴォヴォヴォヴォヴォ!!」
ビシリと右手人差し指をさしながら、Lは大真面目で森長へとそう言い放つ。だが森長は感電していてそれどころではなかった。
そんな様子を冒険者とシーラは唖然と見上げる。だからこそシーラはボソリと呟くように話す。
「あの人は一体何を言っているんだゾ……」
「知らん。知りたくもない」
「俺が聞きたいわ。頼むから余計なことをしないで、そのまま討伐してくれ!!」
「本当にあいつらは一体何者なんだ……そしてあの男も当然普通じゃない……か」
ラースが見つめたその先。そこには銀髪の男が吸血熊へと歩を進めていたのだった。
銀髪の男、流はLの力任せの戦いに驚いた後、蜜熊を倒しながらボスへと近づく。
いまだ一心不乱に蜜熊を貪り続け、その血肉は一体どこへ消えていくのだろうと不思議に思う。
「やれやれ、なんだこのダストボックスは?」
『流様。不謹慎ですよ? ここには冒険者の方々もいたんですから』
「あぁそうだった。これは失礼しました。あんたらの敵は俺が討ってやるから、そう怖い顔で睨まないでくれよ」
流は森の茂みの中からこちらを睨む人影を見る。おぼろげだが、ソコにいる何か……。
恨みと恐怖で凝り固まった視線は、広場を見ているようだ。
「さて、そろそろ行きますか。見ていて気持ちのいいものじゃねぇしな」
『なにあの食欲? 本当に気持ち悪いね』
流は吸血熊の手前十メートル前まで来ると、そこで足を止め静かだがよく声の通るように話す。
「オイ。いい加減腹も膨れたろう? この世で最後の食事はこれにて終い、そろそろ喰い納だ」
「んぐッ……プハ~! うま・うま・うんまあ!! ゴクッ、ぅまぃ」
『だめですよ、聞いていません』
「あ、そう。それならそれで構わないんですけどね!」
流は美琴を抜刀したまま、頭を低くして吸血熊へと突っ込む。その姿、まるで低く飛ぶ燕のように、黒い影が地面を舐めるように疾走する。
「俺流・弐式! 七連斬!!」
威力を高めるための溜め込み型の弐式連斬、七連を食事中の吸血熊へと叩き込む。本当に容赦のない男である。
そのまま吸い込まれるように連斬が、吸血熊の胴体へと叩き込まれ、その八メートルはあるだろう巨体が吹き飛ぶ! はずだった。
「っ? なにぃ!?」
連斬はたしかに全てが当たったが、微動だにしない吸血熊。しかもまだ食事を続けている。
そのまま斬り込むも、斬ってはいるのだが、ダメージがないように感じられた。
「どういう事だこれは?」
『もしかして……イルミスさん! この熊さんはヴァンパイアなんでしょ?』
美琴は近くで戦っていたイルミスへと問う。それに打てば響くようにイルミスは答えを話す。
「ええそうですわ。ダメージが通らないなら、その食事で回復しているからですわ。元々蜜熊は体力回復特化の魔物……まぁ、今は正体が分かりましたので妖獣ですか。それが吸血によって、その効果が元の個体よりはるかに上がっていると思われますわ。今から言うことをよくお聞きになって! その未熟な真祖はまだ『吸収した命の量』が少ないですわ。だから、吸収した分の命を刈り取れば死にますわ!」
「サンキュ~イルミス! そういう事かい……なら」
『刈尽くすまでだねッ』
「だな。まずは鑑定眼……よし、まずは機動力から削ぐか。ジジイ流・薙払術! 巨木斬!! 【改】」
流は無骨で巨木をもへし折るように叩き斬る業、巨木斬。その【改】は通常の威力の二倍で、吸血熊の右足首へと放つ。
次の獲物へと行くように右足を動かそうとしていた吸血熊は、突如右側が滑るように地面へと転がる。
見れば足首から先が切断され、後ろに転がっていた。
「ぐうッ!? なんだ一体!! 足が……くッ、キサマいつの間に!?」
「さっきからずっと居たんですけどね。軽くショックですわ、今気づいたのかよ」
『こんなに存在感あるのにね』
「またしても食事の邪魔をするのかッ!? まぁいい。これだけ力を溜めれば、キサマにも勝てよう。クク……そうだ。力試しだ、かかって来――」
「――あいよ!」
流は吸血熊が言い終わる前に、転んだ吸血熊の眉間に刃を突き立てる。
そのあまりの迷いの無さに、冒険者達は驚く。なんて酷いヤツだと!
「よ、容赦のかけらもねぇ……」
「鬼かあいつ!? だが」
「ああ! アイツならやってくれる、絶対にな!!」
「ナガレ様、怪我しないように頑張ってだゾ!!」
「だがもうすでにこれは!」
「ああ、眉間に一撃だ。これは――やったか?」
そんな温かい応援をされているなどとは思わない流。だがやる事はやりますよ~とばかりに、吸血熊へと追撃をかけるのだった。
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