399:七色の宝
この回で、400話目となります。ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます!!
投稿したと思ったのに、投稿ボタン押していなかったみたいです……(´;ω;`)
今夜もう一話UPする予定です。ごめんね。
「なんと、お主が極武級だとおおお!?」
「こいつはたまげた。まさか極武級とはなぁ。俺も久しぶりに見たぞい」
「まぁそ言うことだよ。状況が捜索から大きく変わった今、俺に依頼したほうが遥かに生還率は上がると思うが……どうする?」
「どうするもこうするも無いわ!! 頼む、シーラを助けてくれ!!」
リッジは流の手を取り、力強く握る。それに流も同じように握り返し。
「ああ、任せてくれ。生きていたら必ず連れ帰って来るよ」
「頼む!! 報酬は言い値で支払おう!!」
「俺からも頼む、どうか助けてやってくれ!!」
「はいよ、任せてくれ! っとその前にだ。その熊のいる場所はどこだ?」
ふと思えば、流はその場所を知らない。エルヴィスは知っているようだが、休ませてやりたいし、それならギルドからの案内を待つか? と、思った時だった。
「それなら大丈夫よ流。わたくしがその場所を知っていますわ」
「そうか! 頼りにしてるぜイルミス」
「ふふ。そうすると時間が全てとなりますわ。ここは高機動で動ける、わたくしとワン太郎。そしてLの四人で行くのがベストかと。もしもの連絡要員として、嵐影はここに」
「そうね。悔しいけど私とルーセントでは、本気のあなた達の足手まといになりかねないわね」
「そうじゃな。それに何も無いとは思うが、一応エルヴィスの護衛も必要じゃて」
「すみませんお二人共。それじゃあナガレ、馬鹿な妹だがよろしく頼む」
「あぁ、任せとけ。イルミスの言う通り、嵐影はもしもの連絡要員に残ってもらう。何かあったらすぐに呼びにきてくれ」
「分かった。では皆さんよろしくお願いします」
そう言うとエルヴィスは頭を下げる。そしてリッジとガランも同じように頭を下げると、ガランは奥へと歩き出す。
「少し待っておれ。蜜熊の大好きな、特級品のはちみつを用意する。その蜜を使えば、確実に蜜熊はそっちへ誘導されるだろうからな」
様々な工具の並ぶ工房内。その雑多ひしめく工房の奥へと消えていくガランを見つめながら、流はだれとなく尋ねる。
「そんなに食い意地のはった熊なのか?」
「そうじゃ、あの蜜熊は特殊でな。たとえ自分がかなりのダメージを負っていても、蜜さえ食べればかなり回復する。それほど体の維持に必要な物らしいからの」
「蜜で回復とは、安あがりな熊だこって。さて……戻ってきたか」
ガランは片手に収まるほどの、小さな白い壺を持ってきた。そしてテーブルの上に置くと、流に蓋を開けるように促す。
「ナガレ、これは超希少な蜜でな。七色蓮華と言う花の蜜じゃ」
「七色蓮華? へぇ、こっちにも蓮華があるのか」
翻訳先生がそう翻訳しているだけで、実際は違う言葉なんだろうと思っていると、隣でリッジが叫ぶ。
「七色蓮華だと!? おまえ本気か?」
「本気も本気じゃわい。もしここで出し惜しみして、あの娘が死んでしまったりしたら目覚めが悪いわい」
「すまない……この恩は必ず返す」
「気にするな。ほれナガレよ、蓋を開けてみなさい」
「あぁ。わかった……」
そこまで高級な蜜なのかと、恐る恐る蓋を開く。すると……。
「おおおおおお!? なんだこれは!! 蜜が七色に光り輝いているぞ!!」
「本当だワン。それにとっても美味しそうな香りだワンねぇ」
『それになんて綺麗な色なの……吸い込まれそうなほど綺麗……』
三人が驚くのも無理はない。蓋を開けた瞬間、虹色に光があふれだし、さらに上品で甘い香気が辺りを包む。
誰しもが思う。これは蜜を舐めるまでもなく、最高上級の旨味が約束されたものだと。
それほどの一品であり、リッジが驚くのも無理はなかった。
「確かにこれは極上品のようだな……見た目・香り・そして味わなくても確信できる旨味。見事すぎる」
「じゃろう? これは俺が昔、偶然に見つけた虹色蓮華から採取したものでな。とんでもなく高価なものじゃよ」
「そこまでか? まぁ、これなら納得だが……ちなみにいくらくらいだい?」
「知らんほうがええ。手元が震えて落としても困るでな? ハッハッハ!!」
「余計に怖いんだが……」
笑うガランに流は頬をひきつらせる。そんな流に気がついたリッジは、流の肩に手を置くと、安心する声で笑い飛ばす。
「なぁ~に。お主は気にしないで持って行くといい。金銭的なことはワシに任せてくれ。無駄に大金持ちなもんだでな? ハッハッハ!!」
「ったく、嫌味に聞こえないから困るねぇ。その言葉に素直に甘えとくか。よし、すぐ出るぞ! エルヴィス、ちゃんと寝ておけよ?」
「ああ。それが私の役目だからな。しっかり休ませてもらうよ」
流は頷くと、セリアとルーセントへ向き頷く。二人の自信たっぷりな表情に安心した流は、入り口へ向けて歩き出す。
「それじゃ行って来る。セリア、ルー爺。あとは任せたよ」
「誰がルー爺じゃ!! たく……小僧、お嬢様を悲しませるなよ?」
「私は心配していないからね? だから怪我しないで戻って来なさいよね」
「はいよ。嵐影、三人を頼んだぞ?」
「……マ」
嵐影は「分かってるって、安心しろ」と言ったように聞こえた流は、頭をひと撫でする。
「悪いが緊急事態と言うことで、後でクレーム来るかもしれんが対処よろしくな?」
「ナガレそれはどういう意味じゃ?」
「こう言う事さ!!」
「あ~~~~れぇ~~~!?」
流はいつの間にか嵐影の背に乗っていたワン太郎を掴むと、それを勢いよく放り投げる。
弧を描き斜め上に飛ぶワン太郎は一瞬で氷の塊になると、そのまま氷が空間よりあつまりだし氷狐王になる。
それに飛び乗った流たちは、驚くリッジとガランをよそに駆け出して行くのだった。




