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397:踊る二人と、過去の過ち

 呆れる流がワン太郎と目があう。するとワン太郎はセリアの頭に寝そべりながら、一息固まっている四人へ向けて吐き出す。


「「「「冷たッ!?」」」」


「たく、気がついたか?」

「お、おう……これもまたすごい出来じゃなぁ! これも購入したいわい!」

「うむぅ!? 剣のデザインが素晴らしいのぅ。ほしい!」

「ちょっと流。わたくしもほしいですわ!」

「確かにいい出来だ……見事としか言い様がない。だが」


 エルヴィスは流へ顔を向けると、ニヤリと口角を上げる。そして確信があるとばかりに得意げに話す。


「ナガレ、お前これと同じものを、まだまだ持ってこれるんだろう?」

「まぁな。ほぼ無尽蔵に持ってこれるはずだ。だが一回の運ぶ量は決まっているから、大量には無理だがな」


 驚く三人。だが流は残念なお知らせをする。


「しかしこれを市場に卸す気は今の所ないんだ。一度王家に売ったことがあるんだが、火種にしかならない予感がしてな。だから個人的に、気に入った人に売るくらいかな」

「うむぅ。それは残念じゃが、あの馬鹿共にかかったらお主の言う通りになるじゃろう。なぁ、ではワシらには売ってくれんかのぅ?」


 三人の光り輝く視線がまぶしい。目から怪光線でもでてるんじゃないかって勢いで、直視するのが困難だ。特に爺さん二人の視線は、アツイを通り越してイタイ。


「わ、分かったから、そんなに見つめるなよ。特に爺さん二人はやめてくれ。精神的にくるものがある」

「まぁ! やっぱりわたくしの流は違いますわぁ。ふふ♪」

「じゃあ、ワシに!!」「じゃあ、俺に!!」

「おい、おまえはすでに一つセットで持っているじゃろう? 欲をかきすぎると、火傷をするぞジジイ」

「何を言うか。ワシの収集欲に際限などありはせんわ。耄碌(もうろく)して忘れたか、ジジイ」

「「…………ジジイッテメッ!!」」

「まてまて! 喧嘩すんなよなも~。ほら、もう一つのセットあるから、仲良くしろよ。な?」

「「…………うん!!」」


 爺さん二人が、実にいい笑顔で子供のように頷く。本当にこの笑顔は、いったい誰得なんだろうとツッコミを入れたい流だったが、そこをグット我慢して話を続ける。


「はぁ、いいか爺さんたち。だから言ったろう、個人的には(・・・・・)売るってな?」

「つ、つまり俺らには……?」

「あぁ、そのつもりさ。だから喧嘩するなよ?」

「「おおおおおお!!」」


 ガランは右手をそっと差し出すと、それを手に取るリッジ。そして楽しげに踊りだすと、華麗にターンを決め、部屋の中を楽しげに踊りだす。もう意味が分からない。


「お、お祖父様。それにガラン師、それくらいにしないと日がくれます」

「「ぬ? これは失敬ッ!!」」

「アルマーク商会は、まともなやつはエルヴィスしかいないワン?」

「い、いやワン太郎様。そうじゃないんだよ……多分、ウン……」


 エルヴィスはワン太郎の右手の肉球で、〝ぽむ〟と左足を叩かれる。その様子を見た爺さんたちはさらにヒートアップ!


「おおおおおお!? 小狐が話しおったぞ!!」

「めんこいのぅ~。どれ、うちの工房で飼ってやろうぞ!!」

「えー。ここでワレに被弾するのかワン? 嫌だワンねぇ」

「「かわえええのぅ~」」

「おいおい、本当にこの爺さんたち、誰かなんとかしてくれよ……」


 その後何度かこのようなやり取りの後、やっと話がすすむ。なぜ今ここに来たのかと言う理由を話し終え、エルヴィスもその緊急性を説く。

 二人は真剣にその話を聞いていたが、リッジが話す。


「ふむ……そうすると、原因はうちの馬鹿どもか……本当にお主には迷惑をかけたのぅ」

「まぁそれは否定しない。そしてこれからも大迷惑がかかるだろう。命がけのな」

「ほんにすまん……」

「ナガレよ。俺が言うのもあれだが、どうかこのジジイを責めないでやってくれ。こやつは今も色々と――」


 ガランの言葉を遮るように、リッジが言葉を被せる。


「やめてくれガラン。何をどう言い繕おうが、ナガレに迷惑をかけているのは間違いない」

「だが……」

「いいんじゃ。ワシの覚悟がたりなかったばかりの結果じゃからな。ワシが責められてもしかたないわ」


 しょんぼりと肩を落とすお爺ちゃんたち。その姿を見た流は、苦笑いぎみに二人へと話す。


「俺が憎いのは、メリサをさらった元凶を作った存在だ。それは人形と呼ばれる、堕ちた悪神のみ。だから爺さんが憎いわけじゃないから、そこはご解しないでくれよ?」

「ナガレ……感謝する」


 そう言うとリッジは頭を下げると、美琴へと話しかける。


「あんたはミコトさんと言うのかい? 本当に色々大変だったろうが、これからも主を守ってやってほしい」

『ええ、それはお任せを。流様の肉体が滅ぶ瞬間(・・・・・・・)まで、全力でお守りしますとも!』

「ありがたい。ワシの不始末、どうか二人で正してくれたら嬉しい」


 そんな二人のやり取りをガランは何度も頷き見守るのだった。

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