394:石頭は未来の俺? 【100万の瞳に感謝!!】
みな様のおかげで、ついに骨董無双も超・大台に乗ることができました!!
詳しくは、後ほど活動報告にてご報告させていただきます!!
ありがとうございまっす!! (´;ω;`)ぅぉぉぉん
ジト目が突き刺さる背中をかばうように、流はエルヴィスの元へと向かう。
どうやら橋番に、エルヴィスは通行を拒否されているようだった。
「どういう事だ!? 私はそんな話は聞いていないぞ!!」
「い、いえ。ですからエルヴィス様はその……お家を出奔されたと聞きまして、もし来たら追い返せと」
「誰がそんな根も葉もない事を言った!? 私は今でもアルマーク商会の嫡男だぞ!!」
「ワシじゃよ」
憤怒の表情でエルヴィスは声のする方を睨みつける。が、すぐにその表情は困惑に変わる。なぜなら……。
「お、お祖父様! どうしてここに!?」
見れば橋の欄干から下の川へと、釣り糸を垂らす男がいた。
その男は深く三度笠のようなものを被っており、それを右手で取るとエルヴィスの馴染みの顔だった。
頭はハゲあがっているが、白いヒゲを仙人のようにたくわえ、口には煙管をくわえている。
目は感情が薄くガラス玉のような瞳をしており、褐色の肌は老人とは思えないほど艷やかだ。
その煙がゆらりと天に昇るのを見つめながら、農夫のような衣服で孫に話す。
「どうしても何も、ここはアルマーク・フォン・リッジ……ワシの町じゃからな」
「それはわかりますが、お祖父様は館から出てはいないと聞いていたのですが?」
「フン。そう思わせたい奴らが、ワシをここに軟禁しておきたいのだろうさ」
「そうだったんですか……って、それよりどういう事ですか、私が町へ入れないと言うのは!!」
「キサマ、あの子はどうした?」
「っう。そ、それは……」
エルヴィスは理解する。祖父のリッジが何を言わんとしているかを。
「す、すみません。あいつはまだ見つけられていなくて。ですが、この近くにいるとの情報は得ています」
「馬鹿者。そんな事は百も承知じゃ。それでどうするのじゃ? 約束では、あの子も連れてくると言うておうたろうが」
「それは……で、ですがお祖父様! 今はあいつよりも重要かつ、緊急事態なのです! ここでは話せないので、町への滞在許可を!!」
「ならぬ!! 商人は約束が全て、よもや忘れたとは言わせぬぞ?」
「しかしッ!」
「しかしも案山子もないわ、馬鹿者が……」
ため息を吐きながらリッジはそう言うと、欄干に置いてあるティーセットから一対のカップを持つ。
その風体に似合わず、優雅にソーサーをつまみ赤い茶を楽しむ。背後の絶景とその仕草。そしてマイセンのカップがよく似合っていた。
「ん? ちょっと失礼。なぁ爺さん、そのカップはマイセンじゃないか?」
「……ん~? なんじゃヌシは? ……ん? んんんんッ!? お、お主! コレがなんだか分かるのか!!」
「あ、あぁ。そりゃ分かる。そいつはマイセンのカップだろう?」
「そうじゃ! この神器はマイセンと言う! なぜお主はそれを知っているんじゃああああ!!」
「うわぁッ!? そ、そんなに食いつかないでくれよ! 説明するから落ち着けって、な?」
カップを静かにティーセットの上に戻すと、流の両肩を思いきり前後にゆする。
視界がガックンガックンと揺れたことで驚く流は、なんとかリッジを落ち着かせる事に成功する。
「むぅ、すまぬ。よもやお主のような若者が、マイセンを知っているとは思わなんだでな」
『わぁ……このお爺ちゃん、流様と同じ匂いがするよぅ』
「俺もそう思った。爺さんは未来の俺か? こんにちは未来の俺。どうぞヨロシク」
「なにッ!? ど、どこから声が……まさか、その日本刀からか!?」
「そうだ、こいつは悲恋美琴。俺の相棒にして伴侶だ」
『は、伴侶だなんて!? 恥ずかしいなぁもぅ』
リッジはその光景を見て驚く。
「なんと言うことだ……お主は一体何者じゃ?」
「俺はエルヴィスの友で、この日本刀の主だよ。それにしても当然のように日本刀と言うかい」
「はっはっは! それは当たり前じゃわい。日本刀はこの国を救った侍の持ち物として、一部には有名な物だからな」
「なるほどねぇ。今ならその意味も分かると言うものか。なぁイルミス?」
遅れて後ろからやって来たイルミスへ、流は同意を求めた。彼女は微笑を浮かべながら、右手をあげてこちらへと来る。
まるでペチェニアの花が咲いているような笑顔だ。魔性すぎる。
「あらまぁ~リッジじゃありませんの。お久しぶりですわねぇ?」
「……フン。今日はその姿か。ま、なんじゃ。久しいのイルミスちゃん。相変わらず美しいわい! どうじゃな、久しぶりにその美しい美体をよ~っくと見せてはもらえんかのぅ? ほっほっほ」
「『うわぁ……本当にそっくりぃ……』」
「待て、キミタチ! 俺はあんなんじゃないぞ!? たぶん!!」
ますます突き刺さるジト目を背中に受け、流は涙目になる。そんな流の勇姿を見つめる、猛将・ルーセントの瞳は実に優しげだった。




