390:盾と鉾
三人の視線の先にあるもの。それは露出が異様に多い、改造巫女服を着用した娘だった。
その娘、Lは「チッ」と吐き捨てるように一言漏らすと、口をガバリと開き青い光を充填する。
「ちょ!? あいつ龍人か!! なんで龍人が俺たちを狙う? つか、やべぇぞ、ブレスを放つ気だぜ!!」
「メンドウすな。まぁ、問題はねぇのすか」
ノーミンが見た先では、先生が呪文を詠唱していた。しかも早い。すでの完了しつつあり、最後の発動条件を満たす。
「――光の盾よ此処に顕現し我を守れ。上級魔法・五芒の盾! ≪ララリリス・ヴァーハン!!≫」
先生が右手で印を切るように空間に光の文字を描く。するとそこに五つの光の盾が現れ、それを中心に魔法陣が描かれる。
それと同時にLも臨界に達したように、青い光の塊・ブレスを吐き出す。
双方共に、ほぼ同時に鉾と盾を繰り出す。まっすぐに伸びる青い雷光は、そのまま光の盾にぶち当たると、甲高い高音が響く。
直後、光の盾に弾かれた青い光は、周囲を破壊しながら明るく照らす。
その様子、まるで青い花火が地上で炸裂したかの如く、光と破壊音で薄暗い大地に喝を入れた。
それに呼応したかのように、大地は一気に砕け散り、草原に道標にある巨石すら破壊する。
舞い散る土埃。それを気にせずブレスが続く限り吐き続けたLも、やがてブレスが尽きた事でそれを止める。
「…………チッ、逃したか。やはり只者じゃなかったかなぁ? 特にあの男」
Lは黒い衣服の男が只者じゃないと、直感的に感じ最高出力のブレスを放つ。
しかしそれは男の魔法により阻まれたようで、土煙が晴れた草原だった場所には、三人の痕跡は何も無くなっていた。
どこに消えたのか、Lにもそれは分からない。上空から監視し、しかもこの隠れる所も無いような場所にも関わらずだ。
そんな見失いようもない場所だったが、この失態である。
流にどう報告したものかと、どんよりとした気持ちになり、思わずつぶやく。
「マイ・マスターに怒られないかなぁ……いや、むしろ叱って欲しいッ!! 今、叱られにイキますね! 待っていてください、マイ・マスター!!」
顔を恍惚に染め上げ、HENTAI娘は大空を駆ける。朝日を背負い、愛する主人の元へと。清々しい朝が台無しである。
◇◇◇
「な、なんだ!? 天領の方角が明るくなったぞ!!」
エルヴィスがそう叫ぶ方角へ、全員の視線が集まる。すると下の方から青白い光がぼんやりと見え、直後に甲高い音で何かが弾ける音がした。
流はそれを冷静に見つめ、その原因を話す。
「あれは多分Lだろう。あいつ俺が余裕と思って、上空から手出しをしなかったみたいだ」
「そうだったのか。てっきりまた敵襲かと思ったぞ」
「でもナガレ。あの様子なら敵と遭遇したか、それともノーミンと言う奴に見つかったんじゃないの?」
「ああ、セリアの言うとおりだろう。まぁLは変態だが強い。それもかなりの強さだ」
「え、ええ。なぜ変態と言う時、嬉しそうにしているかは聞かないでおくわ」
流は「そうか?」と顔を撫でながら、イルミスたちの元へと向かう。
「イルミス、Lが何かと遭遇したようだ。至急ここを立ちたいが、お前は本当に付いてくる気か?」
「もぅ、あたり前じゃない。わたくしは貴方とどこまでも行くと決めたのですわ」
「だけど領地はどうするんだよ? お前がいなくなったら混乱するだろう」
「それも大丈夫ですわ。ほら、もうお忘れですの?」
イルミスはそう言うと、どこからか取り出した扇子を開く。異世界産のものらしく、作りが華美なそれを広げると顔を隠す。
そして扇子を〝はらり〟と落とす。それに思わず目が行くと、いつの間にかそこには別の娘がいた。
それは最初に会ったイルミスの姿であり、屋敷で世話になったメイド長の姿だった。
「と、言うわけで、ミミに全て任せていますわ」
「なるほど、こういう時のためでもあったのか」
「ええ、特に今年は予言の三百年目。貴方がいつ来ても大丈夫なように、色々仕込み済みですわ」
「なるほどねぇ。ハァ~、どうせ来るなって言っても、無理やり来るだろうし。だけどなぁ……」
『流様。お願い、イルミスさんも連れて行こうよ。ね?』
美琴の意外なお願いに、流もイルミスも目を見張る。その様子はイルミスの同行を、本当に願っているようだ。
「おい美琴。いいのか?」
『うん。多分……イルミスさんも、いなきゃダメなんだと思うんだよ』
「? まぁ、お前がそう言うなら別にいいが……。イルミス、本当にいいのか?」
「そのためだけに生きてきたのですから、当然ですわ。あ、今は不死者でしたわね」
「ならいいけど。ん~、じゃあ行くぞ!! それとアンタたちもヨロシクな?」
蘇ったイルミスの友たちは、流の挨拶に頬を緩ませ何度も頷く。
そして流と少し会話した後に、去っていく後ろ姿を見つめイルミスと話す。
「イルミス……お前が俺たちを呼び戻した理由が分かったぜ」
「ええ。気持ちの良い男でしょ?」
「へへへ、本当だね。まるで昔に戻ったようだよ。あぁ……またこの光景が見れるとはね」
イルミスをふくめ、全員は過去の光景を思い出す。
それは千石と楽しみながら、この世界を旅した思い出と重なるからだった。
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