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360:道楽の極み

「うお!? Lお前なにしてんだっ――って、えええ!? 火が入ったの、か?」

「イルミス様、これは!? まだこのような仕掛けがあるとは!!」


 驚く一同。とくにエルヴィスを見て、勝ち誇ったように口角を上げる伯爵様。


「だれが……そう、だれが仕掛けは一つだと言いましたか? 本命はコチラですのよエルヴィスぅ? 薄っすらと火が入ることでスープが食材へと浸透し、レアに近い究極の味を楽しむ。それが分からないとは……愚かッ!!」

「くぅッ!? 性悪伯爵様がぁ」

「ホホホホ!! ザマァ無いですわねぇ? だから貴方はまだまだでしてよ? はい、いつもの♪」

「ぐぬううううううッ」


 メイドが運んでくる一つの皿。そこに乗っている物体は異様な色をしている。

 紫色のソレは、何か動いているようにも見え、微妙に声がした。

 それがエルヴィスの目の前に置かれてしまう。


「ううううぅ……気持ち悪い……」

「何だそれ!? おい、まさかソレを食べるのか!?」

「正解。それがエルヴィスの特別メニューなのですわ。私が出したメニューを看破する。それが出来なければ、ソレを食すと言うゲームですのよ?」

「見事看破出来れば、報酬もあるのですがね。今回は私の負けです。くそぅ」


 エルヴィスは紫色の丸いが、ドロリとした物体へナイフをいれる。

 次の瞬間「ギャアアア!!」と、その物体が悲鳴をあげ、顔のようなものが浮き出てた。

 その恐ろしい光景に、美琴は「ヒィィ」と声にならない悲鳴をあげ、セリアは口をパクパクさせている。

 

「うおおお怖い、怖すぎる……それ食べれるのか? マジかよ、死ぬぞエルヴィス」

「ナガレ。商人って奴はな、一度契約したら死んでも遂行する。それが商人としての生き方だ!」


 ナイフとフォークを頭上にかかげ、エルヴィスは勢いよくムンクの叫びのような、謎の物体へと突き刺す!

 紫の謎物体は、より一層激しく叫び真っ二つに裂け赤い液体を撒き散らす。

 それをエルヴィスはフォークに突き刺すと、赤く滴る液体ごと一気に口へと放り込む。

 歪む表情、歪む頬肉。まだ生きているのか〝ウネウネ〟と動くそれは、口から触手のようなものが這い出す。


 見ている美琴とセリアはパニック寸前! 涙目で「ヒィィィ」と叫ぶと、両手で顔を覆う。

 だが指の間からしっかりと見る。乙女はいつだって見たいのだ、そう言うお年頃なのだ。


「エルヴィス……お前の死は無駄にしない。あの世でも元気でな」


 流は親友(とも)との別れを目に焼き付ける。その親友の顔色はさらに悪くなり、それでも無理やり咀嚼して飲み込む。

 なんと言う男、いや漢なんだ! と、流は涙をながし感奮(かんぷん)するが。


「グウウウウッ!!」

「「「エルヴィス!!」」」

「うっまあ!! うっっっまあああああい!!」

「「「……はぁ?」」」

「蜂蜜より上質で、気品ある味わい。さらに植物とは思えない、肉とも魚ともどれとも違う旨味!! さらにこの食感と、歯ざわりが癖になるッ! 甘さと旨味が詰まった謎の感覚で、私の心はもうだめでしょう。まさに至宝と言える一品ですッ!!」


 苦しんでいたはずのエルヴィスだったが、いきなり復活したかと思えばコレである。

 流たちは何がなんだか分からずそれを見ていたが、イルミスが拍手をしながら楽しげに口を開く。


「アハハハ。本日も気に入っていただけて何よりですわ。貴方にいつでもご提供できるようにと、専属の職人を雇いましたの。そのかいがあり、わたくし大満足ですわ」

「え~っと、これは一体どういうことだ? あれ、美味いのか?」

「ええ、最高のお味ですわよ? 一度食べたら病みつきになるほどに、ね?」

「そうなのか!! なら俺も食べさせてくれないか?」


 流の言葉にドン引く一同。いくら美味な食材でも、アレを食べる勇気は無い。

 そんな流に、エルヴィスは真剣に話す。


「やめておけ。確かに美味い。最高の一品だ。だがな……この後。いや、今後しばらく何を食べても『まずく感じる』おまけ付きだ」

「あら嫌だわ。まるで呪いの植物みたいな言い方は、正直感心しませんわよ?」

「フン、当たらずとも遠からずでしょうに。このマンドラの実はな、あまりに美味すぎて、しばらく舌がコレのみを欲する。だから何を食べてもまずく感じるワケだ」

「まぢかょ……」

「ああ。まったくこの性悪様の手口はいつもこうだ。盛大な餌で獲物を釣り、それを楽しみながら、罠にかかった奴が最大に困る事をする。だが、見返りもそれなりにある。性悪様、今回の相場は?」


 イルミスは楽しげに微笑むと、指を一本ずつ立ち上げる。まずは人差し指、勿体つけて中指。最後にあざ笑うように薬指をあげ。


「と、まぁ三つかしらねぇ?」

「はぁ。これまた奮発しましたな」

「三つ? 金貨三枚くらいか?」

「ハハハ……桁が違うぞナガレ。竜貨三枚だ」


 流はこの遊びが普通じゃない事を知る。なぜなら日本円換算で三千万円の遊びだからだ。

 金持ちの遊びについていけないと思うが、それでもこの遊びの理由が知りたいと思う流であった。

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