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358:商人は情勢を見極める

「意外だったわね……」

「ほんとだね。あのイルミスさんが、オバケが怖いなんて……」

「こんな可愛らしい姫を怖がるなど、人としてどうかと思いますが?」

「「Lちゃんは人として、恥じらいを持とうね?」」

「そんなに褒めないでくださいよ……えへへ」

「「褒めてないからね? ね?」」


 その後気絶したイルミスを、プロのメイド達が隅々まで綺麗にあらうと、そのまま担ぐ。

 あまりに見事な手際に、美琴たちは拍手をおくる。それに応えるように、やり遂げた顔をしたプロのメイドたちは、優雅に一礼すると浴室を出ていく。


「さ、私達もあがろうよ。ほら、ルーセント。いつまでメイドを口説いてるのよ! バーバラに言いつけるわよ!?」

「おっと、これは手厳しい。ではミミーよ、またな。その美貌、いつまでも続くように祈っておるよ」

「まぁ、ルーセント様ったら……ふふ」


 ルーセントとメイドのミミーは見つめ合う。そんな老いてますます、別の意味で盛んなお爺ちゃんに呆れるセリア。

 

「まったく仕方ないわねぇ」

「あはは。でもなんかステキなお爺ちゃんだね」

「ええ、ほんとうにステキなほど頼りになるわ、ああ言うところ意外はね」


 メイドの手にキスをすると、ルーセントは笑いながら去っていく。

 その姿に呆れるセリアは、湯船のへりへ肘を付けてため息一つ。

 いまだ気絶している流を見て、その後自分たちも浴室を出る。


「じゃあLちゃん、私と美琴は出ているから任せても?」

「もちろんですとも! あたしにおまかせあれ~」

「逆に流様が心配だけど、まぁ仕方ないか。悲恋おいで」


 美琴がそう言うと、湯船に沈んでいた悲恋が浮かび上がり、美琴の手に戻ってくる。

 今まで濡れていただろう悲恋は、今は全く濡れていない。本当に色々不思議な妖刀だ。


「これでよしっと。じゃあいこ、セリアちゃん」

「ええ。じゃあ外で待っているね」


 浴室から出てすぐ右側。そこには脱衣所と休憩スペースがあり、本来はここで着替えをするようだ。

 元の服は魔具で洗濯したようで、すでに乾いている。元世界でも、ここまで早く出来ないだろう洗濯の技術に驚く。

 別に新陳代謝もない美琴だったが、やはり綺麗になっている着物は良いものだ。

 セリアもやはりこの洗濯が気に入ったようで、その技術に舌を巻く。


「うちでもここまで綺麗に、しかも早く仕上げられないわよ。すごいねここのメイドたち」

「ほんとだよ~。私なんかいつ脱がされたのかすら、まったく気が付かなかったもの」

「「すごいよねぇ」」


 二人はそう言うと、イスに座って流を待つ。それからLも合流し着替えが済んだ後、流の着替えをすませ夕食会場へと向かう。


「しっかしお前ら容赦ねぇなぁ。気絶とか修行以来だぞマジで」

「あら、安いものでしょ? 乙女の裸体、そんなに安くはないよ?」

「そうだよ。私なんか、あんな残念そうに見てさ。もぅッ!! それに生き返る時も気絶してますよ?」

「ぐぅッ。……お、おお? あの壺は素晴らしいな~、九谷焼に通じる美があるぞ。うん、サイコーダー」


 流は足早に歩き、美琴たちを置いていく。その姿に呆れつつも、妙におかしくて笑う娘たちだった。





 メイドに案内され大きな扉の前に来る。扉の前に待機している執事がドアを開けると、そこには食事をするには珍しい大きな円卓があり、色とりどりの料理が並んでいるのが見える。

 生の魚・肉・野菜・果物それらの食材が中央に上品に置かれており、とても不思議な空間だ。

 その周りには調理済みの料理がならんでおり、どうやら円卓で食事をするらしい。


「先程は失礼しましたわ。まさかミコトがゴーストだとは、本当に思わなかったですわよ。もぅ、そういう事は初めから言ってほしいものですわ」

「え~。私何度も死んでるとか、幽霊だとか言った気もするけど……」

「まぁいいですわよ。いい機会ですし、わたくしはゴーストを克服しますわ! さ、ミコト。わたくしの右隣へ。ナガレは左隣へおいでなさいな」

「だ、そうだ。行くぞ美琴、伯爵様の苦手を取り除いてさしあげろ」

「むぅ……分かりましたよ。イルミスさんはいい人ぽいですし」

「あら嬉しいわ。さぁさ、お二人でおいでなさい。わたくしの胸の中へ!」

「「それは勘弁して」」


 お風呂でリフレッシュしたはずだが、余計に疲れてしまう二人。そしてコレである。

 ゲッソリしつつも、イルミスの隣へと座る。遅れてこれまで見なかった顔が入室すると、開口一番で苦笑い。


「あ~。その顔じゃヤラレタ(・・・・)な? だから言ったろう、風呂は女子が終わってからにしろって」

「エルヴィスか……お前が正しかったよ。おかげでひどい目にあった」

「ほっほっほ。ワシは楽しいひと時じゃったがな。おかげで寿命が伸びたわい」

「やれやれ。随分と明暗が別れたようだが……イルミス様もお疲れの様子。詳しく聞きたいものですねぇ?」

「フン。別に何もなくてよ? ただ少しだけ驚いただけですの。さぁさ、嫌味な殿方もお席につきなさいな」


 エルヴィスが席につくと、円卓に置かれていたランプの魔具に火が灯る。

 それを合図に料理が次々と運ばれてくるのだった。

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