340:イルミスの町と赤い夕日
「重機も無いのによくやったなぁ」
『流様、この世界は魔法があるから、元世界より進んでいる所も多いよ?』
「あぁ確かになぁ。謎エネルギーで動く魔具やら、てんこ盛りだしな」
「ジュウキ? それは一体どんなものなんだ? うちの商会では聞いたことがない。やはり魔具なのか?」
エルヴィスの問に、流は元世界の事を話す。丁度少し離れたところに大岩があり、それを例に出来ることを聞かせる。
「す、凄いな。あの岩が一人で動かせると言うのか?」
「そうだな。重機と言う機械……まぁコチラで言えば、ゴーレムと言ったほうがいいか? それで動かせる」
「う~む。こっちのゴーレムでは無理だろうな。お前の世界にある力は凄いな……そして同時に恐ろしい」
恐ろしい。その言葉を聞いた流は、なぜ? と数秒考える。それは流にとって素晴らしい技術力であり、安全に作業が出来る革新的なものであるのだから。
だが、その技術の歴史も同時に思い出す。それは――。
「そう……だな。ああ、使い方次第では兵器になるだろうな」
「ええ、私もエルヴィスの意見に同意だわ。この世界はナガレのいた世界と違って、命の重さがとても軽い。効率的に戦争に勝てるなら、どんな犠牲もいとわないのが、この国の方針よ」
ジャバとの宴会の席でセリアに語った平和な世界。それはセリアを始め、エルヴィスもルーセントも誰もはじめは冗談だと思っていた。
だが流はアイテムバッグに入れてある、一つの物を取り出す事でそれを証明する。
「そうだな。お前から見せてもらった異世界の動画は圧巻だった。映写技術はあるが、あのような板に繊細に記録し、音も保存できる技術はない。本当にお前の言っている事に、私は魂の底から信じたよ」
「ああ、俺も価値観と言うか……そうだな。平和に慣れすぎていたから、驚異に対する感覚が鈍っていたのは間違いないな」
そんな話をしながら、お互いの文化について話しは尽きず、出発してもまだ続いていた。
特に流が興味があるのは、やはり魔法と魔力についてだ。どうも以前聞いたことと同じ情報で、学ぶ師匠を見つけたほうがいいとの事。
流はさらに、魔法について興味深く聞く。その質問は多岐にわたり、種類や出来ることに興味津々だった。
しかしエルヴィスとしては、異世界の技術の危険性と可能性に、顔を青くしたり高揚したりと忙しかった。
どうやらこの異世界人の視点でみると、その科学力と技術力は驚異そのものであるらしい。
特に軍事面と、兵器については流のつたない知識ですら驚異であるらしく、エルヴィス・セリア・ルーセントなどは顔をしかめている。
ちなみにLは流の話に感動し、涙をながしているが。
「ナガレ、今聞いた話だが……」
「ああ分かっている。エルヴィス、お前やセリア意外には、信頼出来る奴にしか言わないさ。その危険性がお前の説明で分かったしな」
「その方がいいわね。その知識があれば、その科学力と言うモノが無くても、魔具で代用もできそうだし」
「うむ、お嬢様の言うとおりじゃ。例えば戦車と言ったか? それなど魔具でガワだけでも作れよう。それがあれば戦も変わる」
「そこまでか……。あぁ、分かった。俺の知識は浅いが、それでもこの世界にとっては驚異になりかねない。注意しておくよ」
自分の何気ない一言から、この世界のたくましい商人や将軍にかかれば、危険な武器になりかねない。
そんな事を認識した流は、今後の行動にますます注意をしようと気を引き締める。
やがて話も終わる頃、次の宿泊地であるイルミスの町へと到着する。町の背景にそびえる平たい山は、まだまだイルミスのはるか先に見えるのを見て、流は嘆息するのだった。
「今日はここまでか。魔物も雑魚ばかりで、運が良かったな」
「それだが、私はこんな平和な旅は初めてだ。あぁ、あのドラゴンは抜きにしてな」
「そうなのか?」
「私は旅はそんなにしないけれど、確かに平和な旅路ではあったわね、ドラゴン意外は」
「そういうものか? すると何かまた起きそうな予感が。なんてな~。ハッハッハ……ぇ?」
『流様。学習能力ってご存知ですか? ほら、フラグが音を立ててやって来たよ?』
「ぅ、うん」
思わず可愛くお返事をする流。何やらイルミスの町の方から早鐘の音と、住民たちの悲鳴がかすかに風で聞こえてくる。どうやらただ事じゃないのかも知れない。
それを確認した流の瞳は泳ぐ。その震える瞳の先に見えるもの……それは。
「真っ赤な夕日にとっても映えるねぇ。あ、まっかっかだわ~」
「ナ、ナガレ。あれは……嘘だろ!?」
『流様。もう映えるは古いです。今はナチュラルだよ』
「こ、小僧……どうするのじゃ!?」
「アナログの塊にダメ出しぃ!?」
「もう! 話が噛み合ってない!! ナガレ、どうするのよ? あれ、『レッド・ドラゴン』だよ!!」
「デスヨネェ……」
流は現実逃避気味に、迫るレッド・ドラゴンを見つめる。バサリバサリと羽音からもお怒りを感じるそれは、真っ直ぐ流たち一行に向けて飛んでくるのだった。
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