336:因果応報
mosa様より、とてもステキなレビューをいただきました!!
骨董無双の魅力を余すこと無く表現していただき、心の底より大感謝です!!
ありがとうございます!!
これからも、よりよい作品に仕上げて魅せます(ง •̀ω•́)ง✧
「あの、この子を助けて……いえ、村の住民を助けてくれてありがとうございます」
子供の母親が美琴へと礼を述べたのをきっかけに、村人全員が美琴の周りへとあつまる。
やがて美琴に跪き涙をながし感謝するものまで現れ、終いには女神様と祈るものまで現れる。
「ちょ、ちょっとやめてくださいよ!! 私は女神じゃなくてオバケなんです!!」
「オバ女神様!!」
「それ、なんかちっがーう!!」
「まぁ生きてる(?)年齢からすりゃ、確かにお――」
「ナンカイイマシタカ?」
「いえ、何も……」
そんな村人との温かい交流をしていると、エルヴィスが不安そうにやって来る。
どうやらドラゴンが気になって仕方ないらしい。
「ナガレ、そんな悠長にしていて大丈夫なのか? ここに向かっているんだろう」
「あぁ、それなら今頃は守備隊が、本来の仕事をしているだろうさ」
流は守備隊が去った方角に視線を向けて、吐き捨てるようにそう言う。
――その頃、狩猟村を脱出した守備隊の後方では、いつか見た地獄が迫っていた。
「ギャアアアア!? た、隊長タスギャバア」
「マズイ。次」
「ひがギャア腕えぇ腕ぇえぇ」
「油ガ少ナイ。次」
「ぎゃばッ」
「クンクン。内蔵苦イ。キライ。次」
後方から突然襲ってきたドラゴン。それは翼が大きく、足の爪が異様に発達したドラゴンだった。つまり――。
「エッジドラゴンだ……と……馬鹿な!! どうしてこんな場所にいるッ!! 斥候魔法ではドラゴンとの報告しか聞いてないぞ!!」
「す、すみません。地上にいたもので、てっきり普通のドラゴン亜種かと」
「このヤクタタズが!! これなら村にいて得物が食われているのを、囮に逃げだしたものをッ!! クソッ、全隊散開して逃げろ!!」
「逃ガサナイ。俺、機嫌悪イ」
そうエッジ・エッジドラゴンは言うと、回復したばかりの足の爪を周囲に飛ばし、逃げている兵士を切り裂く。
それでも逃げる兵士もいたが、なぜか真っ直ぐとキースへ向けてやって来る。
「ヒィッ!? ど、どうしてコッチへ来るんだああああ!!」
キースは顔面蒼白になりながらも、木々がまばらに生える草原に馬を走らせる。が、空を飛ぶ速度には敵わず、やがて目の前へと降りてくる。
その異様さに恐怖を超え、失神寸前になった瞬間だった。
「オイ、人間。ナゼオマエノ腰カラ、強クアイツノ気配ガスル?」
「は……こ、腰? ッ!? 金貨袋……ま、待ってくれ!! これは俺のじゃない、もらったんだ!! そいつは村にいるから、そいつが全部悪い!! 頼む助けてくれ!!」
「村? アア、アノ趣味ノ悪イ村カ。俺ハ最近、アノ近クニ住ミ着イタ。オ前達ガヤッテルヨウニ、俺モ真似シテ見タ。褒メテクレ」
キースはその言葉で背後を振り返る。すると……。
「ひぃぃぃ!? ど、どうしてこんな酷い事を!?」
「ドウシテ? 不思議ナ事ヲ言ウ奴ダ。何時モコレヨリ酷イ事ヲ楽シンデルダロウ?」
キースは見た。部下たちが良くて即死。最悪四肢をもがれ、体のどこかが欠損し、半殺しの状態を。
目の前のドラゴンは、それを自分たちがやっていたから真似たと言う。
その行動と思考に恐怖するも、どうしようもない現実が目の前にある事に、キースは絶望する。
「サテ、オ前ガ彼奴ジャナイノハ分カッタ。ナラバ村ヘ行ッテ殺シテ来ルカ。今度ハ確実ニ殺ス!!」
キースは幸せだった。ドラゴンが飛び立つと同時に、首を噛みちぎられ意識を失ったのだから。
エッジドラゴンの上位種、エッジ・エッジドラゴンはまずそうにキースの顔半分を吐き捨てると、そのまま大空へと昇っていく。
憎き敵である、あの恐怖の塊が人の形をした何かを、本能が殺せと命じるままに。
◇◇◇
その頃、流たちは開放した村人たちへと積んできた食料の大半を渡していた。
もともとここの住民を流が開放するなら、それを与えてやるか、しないなら、こっそり分け与えるつもりで持ってきたものだ。
「なんと、なんとお礼を言ったらよいのか……開放ばかりだけではなく、このような贅沢な食料までいただけるとは、俺たちは女神様へなんとお礼を言えばいいのか……」
「いや、ですからね。私は女神じゃなくてオバケなんです」
「「「オバ女神様ぁぁぁ」」」
「だからちっがーうの!! もぅ、流様なんとかしてよー」
「オバ女神様ぁぁぁ」
「流様まで跪かないでくださいよおおお!! もぅ!!」
そんな様子に呆れるワン太郎は、嵐影の頭の上で〝へにょ〟っとしながら、流へとこれからの事を聞く。
「あるじぃ~それはそうと、この村人どうするワン? 聞いた話だと、トエトリーはむろん、アイヅァルムへの移住も出来ないんだワンよね?」
「それ、な。セリアお前の親父は俺にこういったな。協力は惜しまないと」
「ええ、確かにそう言ったわ。そして私もそれに協力するし、それ以上の願いも叶えるためにここにいる」
「ありがとうセリア。ならば頼む、この人達を俺の責任でアイヅァルムへと移住させてくれないか? 移住費用は俺が全額負担する」
「ふふ、そう言うと思ったわ。でもね、見縊らないでくれるかしら? 元はここはクコローの領地。ならその救済も私が責任をもってするわよ」
「そうか、ありがとうセリア。俺のワガママに付き合わせてしまって」
「や、やめてよね。そんな真っ直ぐ見つめないでょ……はずかしい」
流に真剣に見つめられてしまい、思わず照れてしまうセリア。そんな微笑ましい状況を、ルーセント呆れるように指摘する。
「お嬢様、それはワシも反対ではありませんが……バレたら戦ものですぞ?」
「何を言うのよ、今更でしょう? ナガレに聞いた話だと、戦はもう避けられないでしょ?」
「それはそうですが……分かりました。この老骨にかけてお守りいたします」
「ありがとうルーセント。では行動しましょう」
そうセリアが言うと、騎士たちを始め、村人も移住の準備をするのだった。




