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329:ジャバ・ケロック

 一行は岩場地帯を抜け、背丈ほどある草原地帯を走る。

 草の色は赤紫で綺麗な色をしており、夕暮れ間際の太陽がそれを余計に際立たせた。

 その景色に心を奪われていると、エルヴィスが流の隣にやって来る。

 

「ナガレ、この先に湖がある。そこで一泊がセオリーなんだが、お前も騎士団もいるし、このまま次の町まで強行しようと思うんだが?」

「俺はそれで構わないけど、セリアはどうだ?」

「ええ問題ないわよ。私達はそんなヤワじゃないしね」

「なら決まりだ。エルヴィス、案内よろしく」

「任せてくれ。そうだな、まずは湖に着いたらお前のラーマン……ランエイと言ったか? そいつと、軍馬の休憩を入れよう。私のキャラバンが使うキャンプ地があるから、私たちも少し休もうか」


 そのまま草原地帯を走ること数十分。突如開けた視界の先に見える、大きな湖が見えた。

 大きさは向こう岸は霞んで見え、湖中央に巨大な島があり、その中央には天険とも言える険しい山があった。

 そのまま景色を楽しみながら、浜辺へと到着する一行は雄大な自然に息を呑む。


「こいつはデカイな!! ほぼ向こう岸が見えないぞ? そして中央の島にロマンを感じる、埋蔵金とかありそうじゃないか!?」

『徳川埋蔵金ならぬ、異世界埋蔵金とかありそうですね!! 金属探知機持ってきましょうよ!!』

「女幽霊が俗物的すぎて、ロマンのかけらも無いんだワン」


 そんな二人を嵐影の頭の上から、呆れた顔で見るワン太郎。その様子を楽しげに見ながらエルヴィスは湖の中央を指差し、流へと話す。


「ははは、よく分からんが楽しそうでいいな。それでこれからその島に渡り、そこで休憩する」

「え? 行けるのかよ!! でも橋も無いし、船も無いぞ?」

「それは……あぁ来たようだ」


 エルヴィスが指を指した先の水面が盛り上がる。流はその巨大な生命力を感知し、美琴へと手をかけた瞬間。


「うおおおお!? でっかいカエルが出たぞ!!」

『うわぁ~おっきい~』


 流と美琴が驚くのも無理はない。そのカエルは顔だけで横十メートルほどあり、綺麗な黄緑色をしていた。

 その顔つきは実に優しげで、目は◎で外側は黒いが、中央がピンクだった。


「やぁ、ジャバ! 今回もまた頼むよ。報酬は……ほら、コイツでどうだい?」

「ケロケロ。エルヴィスちゃん、しばらく見ないから心配してたケロ。お~今回も上質なモルモル牛の魔力煮込みかい? そりゃありがたいねぇ。味もいいが、魔力も高まるケロ」

「喜んでもらえてよかったよ。今回は馬車はないが、この人達を島まで運んでほしい。その後は対岸まで頼むよ」

「ケロケロ、いいケロよ。んじゃ、ちょっと荷台を取ってくるから待っててケロ~」


 そう言うと巨大なカエル、ジャバは水中へと消えていった。


「お……驚いたな。カエルのデカさにも驚いたが、普通に話せるんだな」

『異世界は常識が容赦のかけらも無いですね!!』

「私からすれば、貴女も大概よ? でもまぁ、驚いたわね……噂には聞いていたけど、本当にいたんだ、ジャバ・ケロック」

「ははは、驚いていただけて嬉しいですよ。以前、彼女に襲われましてね。交渉の末、友好的なお付き合いをさせてもらっています」

「流石商人。アレと交渉まとめるとか、その交渉術をご教授願いたいね?」

「何を言う、お前だってスパイスの流通始めたんだろ? 界隈で話題になってるぞ」

「ま、そのお陰でお前の家と揉めて、ここにいるワケだがな」

「お互いアルマーク商会には苦労する」

「違いない」


 そう二人は笑う。どう見ても悪徳商人のように。


『もぅ、何をしてるんですか。ほら、カエルちゃんが来た……え゛!?』

「え゛!? あ、あれに乗るのか……」

「なぜ祭りなんだワン!?」


 ジャバ・ケロックの背中には、幅二十メートルほどの正方形の白い荷台が乗っており、その中央には櫓のような物があり、そこでは子ガエルが太鼓を叩いていた。提灯(ちょうちん)つきで。


「おまたせしたケロ~。ささ、乗っておくれケロ」

「ジャバ、そ、それはいったい何だい?」

「ん? あぁ~ケロケロ。これは悪やつよけだケロ。最近悪いやつがこのあたりに出て、困ってるケロ。ま、その話は泳ぎながら話すケロ」


 そう言うとジャバはクルリと背中を向けて、荷台のスロープを見せる。そのスロープを上り、全員が乗り込んだの確認すると、背中の子ガエルが太鼓を激しく打ち鳴らす。

 ジャバはそれを合図に、ゆっくりと泳ぎだすのだった。


「するとその悪いヤツってのが、最近このあたりに住み着き、ジャバの子供たちを食べちゃうのかい?」

「そうなんだケロ。もぅ許せないケロケロ! ケロがいる時は逃げるくせに、いない時に空から来るんだケロよ」

「そりゃ困ったねぇ。うちの商会も、ジャバが困ってるのは見過ごせないな」

「ありがとうエルヴィス。あ、そうだ!! 背中に乗ってる人間じゃない人、もし見かけたら倒してほしいケロケロ」


 いきなり話を振られ、驚く流。だが獣人もおり、自分なのか? と、口を開く。


「えっと、俺のことかい?」

「ん~ちょっと歩いてケロ。他の人はそのままケロ」


 流は言うままに歩く。すると「ケロロロロ!!」とジャバが唸ると、流へ話し始める。


「そう、間違いなく今歩いている人間さんのような人ケロケロ!!」

「よく分かるなぁ。一応人間なんでヨロシク」

「わかったケロ! それで頼めるケロリ?」


 急ぎの道中に、いきなりの討伐依頼。流は腕を組むと唸り考えるのだった。

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