表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

329/539

328:虫玉

 楼門の落下で増援もすぐには来れず、どうやら追撃も無くアルザム脱出に成功する。

 先行していたセリアたちへと追いつく流。そしてセリアの騎士たちに感謝の言葉で歓迎されるのだった。


「ふぃ~全員無事で何よりだ」

「ふふ、あなたのお陰でみんな無事よ。まさか建物ごと斬っちゃうなんて、想像出来なかったわ」

「まぁあの程度はなぁ。それでこれからどうするんだ? 予定ではこのまま北上しようと思っていたんだが……」


 流が来たことで、後方から先頭集団へと上がってきたエルヴィスは、その問に答える。


「本来ならば道なりに、このまま北上する。大体この速さで行けば五日くらいか」

「けど、近道があるって言っていたろう?」

「そうだ、これからお前に見せたい場所がある。そしてそこを通れば二日短縮出来るが、険しい道だ」


 そうエルヴィスは言うと、苦々しく西の方角を睨む。どうやら目的の地は西にあるようだ。


「もう少し進むと、湖がある。そこを西側に回り込み、そのまま山間部へと進む。そこは魔物が多く、道も険しい。私にはドラゴンヘッドがいたからよく使っていたがな」

「魔物、か。俺は一応冒険者だが、討伐クエストとか受けたことないし、魔物とはあまり戦った事がないからなぁ。ちょっと不安」


 その言葉で一同はドっと笑う。


「あるじぃ。トカゲ人間も魔物だと思うんだワン」 

「あ、そうか。あれが魔物か」

『それと蛇娘や、豚の王様たち。それに緑の小人(ゴブリン)もそうでしょうに』

「おおお!? 懐かしき我が闘争の日々よ!!」

『何かっこよく言ってるんですか、忘れてたくせに』

「まったく仕方のない、あるじだワンねぇ」


 そんな話しをしながら、岩場が多い平原をひた走る。途中セリアの話しの中で気になることがあり、その話しに自然とながれる。


「――すると、セリアが戦ったのが死人だと?」

「そうだワン。鎧娘が戦ってたのは間違いなく死人だワンね」

「三左衛門、どうなんだそいつ?」

『ワン太郎殿の話しからすると、寄生型でしょうな! そのムカデのような虫が本体であり、獣人はガワとして機能していると言うところですな!』

「またキモチワルイのが出てきたなぁ……それで倒す手段は?」

『虫玉と呼ばれるコアを破壊すればよろしい! お、拙者も西洋かぶれの仲間入りですな! ハッハッハ!!』

『もぅ三左衛門まで……。流様、虫玉って言うのはね、大抵は心臓か頭のどっちかに入っているよ。すっごく気持ち悪いだぁ……ネト~っとしてて』

「うへぇ、確実に戦うフラグじゃんソレ……」


 話の内容と、新たなオバケに顔を引つらせるセリア。そんな青い顔で恐る恐る質問する。


「えっと、もし私があの虫に噛まれてたら?」

『ハッハッハ! お嬢さん、噛まれた場所から体内へと入って来て、脳髄を食われますな!!』

「「イヤアアアアアアアア!?」」

『もぅ、流様まで一緒に叫ばないでくださいよ。大丈夫ですよ、噛まれた瞬間に寄生虫を斬り飛ばせば』

「「ほ、本当に?」」

『そんな怯えた顔で見ないでくださいよ。大丈夫ですって、昔から食われた人を見てきた、経験からのお話ですからね』

「「恐ろしい事をサラっと言える、美琴(あなた)が恐ろしい」」

『もぅ、二人して! まぁ……ほんとにね……色々酷かったんですよ』


 美琴は過去にあった凄惨な事件を思い出し、静かにため息を吐く。

 そんな言葉の重みに二人も申し訳なく思い、謝罪する。


「あれだ、ちゃかして悪かったな」

「私も怖いとか言っちゃってごめんね」

『あぁいいんですよ、数百年前のことですからね。ただ今でも思い出すんです、あの……グチャグャドロ~な食事風景を。あぁ~キモチワルイ』

「「そっちかい!?」」

「三左衛門、その死人は数は増やせるのか? セリアの話では相当耐久力ありそうだが」

『そうですな。邪法師の力量にもよりますからな、なんとも判断は出来ませぬな! が、エスポワールを生み出した力から考えると、相当な力は持っているかと!!』

「また面倒な……」


 アイヅァルムの混乱、死人の投入。今回の一件はどうも実験投入したように感じる。

 そうすると、その対策にも今後は注意しないといけないだろうと、流れは考える。だからこそ、その道の専門家達に意見を聞く。


「今回の一件、お前達はどう思う?」

『そうですなぁ、まずは向日葵お答えいたせ!』

『ふぇ~寝てるのに起こさないでくださいょぅ……でぇ、なんです?』

『ふむ、あとで拳骨を褒美につかわす!』

『ひぅ!? そ、そうですね。あの手の死人は量産型と呼んでいます。自我はありませんが、敵中を混乱、壊滅を狙うのに適していますので厄介ですね』

「なるほど、一人から複数へ寄生するのか……。つか亡霊なのに、拳骨痛いのかよ!?」


 死人よりもっと謎な存在の、悲恋の中の人に困惑しながら才蔵へと質問する。


「才蔵。話からすると、基本的に隠密行動をとるタイプの死人のようだが、対処法はあるのか?」

『はい大殿。対処法はございますれば……ただこの世界の人族の力は、未だ未知数ですので、もう少し見極めてから判断したいと思いますれば。そして私は忍者です!!』

「あぁ、はいはい。忍者了解。セリアは戦ってみてどうだった?」

「そうね、勝てる……とは思うわ。ただ予想以上に複雑な攻撃をしてくるから、予備知識があれば勝率も上がるでしょうね」

「なるほどな。三左衛門、死人関係はお前に一任する」

『ハッハッハ! 死人のことはお任せあれ!!』


 三左衛門の力強い笑いに流もうなずく。そしてこれから確実に遭遇するであろう、死人との戦いに覚悟を決めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ