327:脱出
北門は現在混乱中である。それと言うのも同時に黒煙が三箇所から立ち昇り、その原因究明と消化に駐屯兵を差し向けていたからだ。
その北門の責任者たる兵長は、テロの可能性が高いと憤る。
「どうなっている!! 報告はまだか!?」
「ただいま最初の火の手があがった場所より報告が来ました! どうやら破壊音と爆発音に該当するものは、確認出来なかったの事です。さらに火の手ですが、煙幕を使われたと」
「なに? すると他の二箇所も……陽動か!? しまッ――」
北門へと続く大通り、そこに砂塵が舞い上がり何者かが大挙して向かってくるのが見える。
「――ちぃ。魔法師は楼門に上がって攻撃準備、結界師は正面の防御! 同時に大門の閉鎖をしろ!!」
「兵長、大門の閉鎖は間に合いません!!」
「出来なくてもやるんだよ!! やれ!!」
「ッ、ハ!!」
兵長は苦虫を噛み締めながら、向かってくる砂塵を睨む。程なくして結界師が到着すると、大門正面に向けて結界を張り封鎖する。
それに少し安堵した兵長は、魔法師に壁の上から攻撃するように指示を出すと、自分は残りの部下と共に、大盾で防衛陣を築く。
「あら、なかなか有能な指揮官ね。じゃぁ、Lちゃんお願いできるかしら?」
「L頼む」
「はぅ、マイ・マスターの頼みなら~いつもでも、ど・こ・で・も・何度でもぅぅ(ビクン)」
「ビクンすんな。で、いけるか?」
「お任せあれ~! んでは失礼して……」
Lは口を〝ガパリ〟と開くと、馬の背に立つ。そのまま口内を青く光らせると、青い雷撃のブレスを吐く。
それは一筋の青い光の塊であり、昼間でも恐ろしく明るかった。
「なんだあれは!? シールドに魔力を最大限込めて耐えてみせい!!」
兵長はそう指示すると、見るからにヤバイ光に最大限の防御態勢をとる。
迫る青い雷光、半ば無理と思いつつ祈るように、いや神に祈りそれを耐える、が。
「グガアアアア!?」
シールドに青の雷光がぶち当たった刹那、あっけなくシールドを持つ兵は弾け飛ぶ。
さらにそのまま結界を粉々に破り、結界師の側頭をかすめてそのまま閉まりつつある大門を貫通したのだった。
「えげつねぇな、お前のブレス……」
「はぅッ!! 褒められちゃった、うへへへ」
『多分褒めていませんよ? ……それより流様、上にいるよ』
「ん? あぁ……セリア上は任せてくれ」
「じゃぁお願いね。本隊はこれより正面突破する! 続けえええ!!」
『『『ハッ!!』』』
迫る敵兵に恐怖を覚える。だが兵長は吹き飛んだ部下を見て、命に別状はないと判断すると残存兵に各個撃破の指示を与える。
その命令を受け、兵士は死にものぐるいで敵へと斬り込むが、本命は頭上にあった。
「このまま殺られてたまるかあああ!! 魔法師は自分の判断で魔法を放て!! こちらを巻き込んでも躊躇するな!!」
「し、承知しました!!」
やがて敵が目前に迫る。その数は二十数騎! 残りの残存兵で肉壁になるように食らいつくが、敵の力量が遥かに勝っており、次々と突破される。
もうだめかと思った刹那、頭上から魔力が高まるのを感じ、魔法師の攻撃準備が完了したのだと知り活力を取り戻す。
さらに視認できる距離に、状況確認をしに行った部隊が戻ってくるのが見えた事で、高揚感が体をめぐる。
「いいぞ放て!! 敵の頭を葬り去れ!!」
「――炎の壁よここに≪ファイヤーマぎゃべ!?≫」
流は嵐影を屋根に登らせて、そのまま疾走する。
防壁と建物の間、やく十メートルを飛び超え、流は妖気をクナイに具現化した「飛竜牙」を魔法師へ向けて撃つ。
魔法師は詠唱中の右手にそれをうけ、集中が乱れ詠唱は中断された。
「セリア様!! 大門の閉鎖止まりません、このままなら閉じ込められてしまいます!!」
「くッ、確かここの開閉所は……大門の上、楼門か!! ナガレ!! そこの建物の中にいる兵士か、カラクリを止めて!!」
セリアの叫びを聞きながら、防御壁の上に到着すると、嵐影から飛び降りる。
そして開閉所まで侵入し、兵を見つける時間が無いと判断すると、そのまま建物の外で美琴を抜刀し、静かに構える。
鑑定眼を即発動させ、建物の中にいる生命反応を探りその目の前にある丸い歯車らしき構造物を見分ける。
「あれか……ジジイ流・薙払術! 巨木斬【改】!!」
大門の上にある開閉所に向けて無骨で荒々しい、巨木をもへし折る斬撃が歯車めがけて飛んでいく。
直後〝ヴァゾッ〟と言うような音と共に、楼門は斜めにずり落ち、敵の増援が戻ってくる通路へ建物が落下する事でそれを塞ぐ。
それを見たセリアはここが攻め時と言わんばかりに、突撃の号令を出す。
「大門の動きが止まった!! 今だ進めえええ!!」
『『『オオオオオオオ!!』』』
馬の通る幅ギリギリの隙間を駆け抜けるセリアたち。
歯ぎしりをしながらそれを見逃す事しか出来ない兵長は、持っていた短槍を民間人のような男へと投擲する。
「武人かと思えば、なんだ小物かよ。フンッ!!」
ルーセントはそう言うと、短槍を斬り飛ばしして最後尾を守り脱出を果たす。
それを確認した流は嵐影に騎乗すると、そのまま飛び降りて後を追うのだった。
んんん……
どうもイマイチです。
書き直すかも知れません。
感想・評価・ブックマークをお待ちしてしています。切実に(´;ω;`)




