320:街の憩いの場へ行こう
「そう、ねん……このままボーイに付いていきたいのだけど……ねん」
「俺も行きたいがなぁ……トエトリーの守護を任されている以上は……」
「お前達がそこまで言うほどの人物なのデスネ?」
「そうだ、ナガレは面白い漢だからな」
「あはん♪ ボーイは最高よん、もぅビンビンキチャウわん」
セルガルドは「そうか」と一言漏らすと、静かに目を閉じる。
そして侍の生き様は人を魅了し、共に戦いたいと思わせると言う記述を思い出すのだった。
「彼と共に戦う事はじきに訪れる。その時になったら嫌でも力を貸してもらうデスネ」
「あはん♪ それはのぞむところよん」
「是非もない。アイツと戦場を駆けるのも悪くないな」
「それに……ボーイは極武級すらも、いつまでもつやらん」
「フッ、たしかにそうだな。俺たちを軽く超えて行く、か。どこまで行くのか……興味は尽きない漢だ」
「お二人共、冒険者ランクはこれ以上ないですよ? って、まさか……」
「あはん♪ ま、どうなるかはボーイ次第だけどねん」
その後今後の事と共に、内通者についても話し合われる。判明している周到な手口と、その手段について意見を交換するのだった。
◇◇◇
流たちは城から逃げるように出てくると、そのまま街を歩く。
嵐影を先頭に、騎馬隊が二十二騎付き従う。その先頭の二騎は流の左右に並走する。
流の左手がセリアであり、右手はLだ。Lは相変わらず流をじっとりと見つめ、ニマニマしているが、周囲の警戒はぬかりない。
その証拠に、追い剥ぎが三ブロック先から逃げてくる気配を感じ、そっと先行して追い剥ぎに一撃いれると、また戻ってくると言う感じだ。
セリアにいたっては、背後のニコニコ顔のルーセントを気にしつつも、流にからかわれながら馬を歩かせる。
「セリアさぁ、本当に着いてくるの? 危険だぞ? 痛い思いしちゃうぞ? 泣いちゃうぞ? おばけより怖いの出ちゃうぞ? 漏らしちゃうぞ?」
「もぅ! 私は子供じゃないんですからね。それでどうして王都に行くの?」
「ん……まぁ色々あって、な」
流はこれまでの経緯を話す。少し話していると、どうせなら落ち着いた場所があるとセリアに案内される。このまま大通りを行くと広場があるらしく、そこでかなり遅い昼食をとりながら話すことにする。
トエトリーと違い、屋台はポツポツとありながらも、飲食店が広場を囲むように円形に建ち並び、訪れた客たちが飲食を楽しんでいる。
広場の中央には巨大な噴水があり、馬の口や騎士の剣。その上にある女神像の壺から水がながれ落ちるのを楽しむ。
「へぇ、この街も綺麗で落ち着くいい場所だなぁ」
「でしょう? 私の大好きな場所なんだよ? ふふ、一緒に来れてよかった」
『あ、見てくださいよ。お店の人が何か持ってきてるよ?』
「ん? ほんとだ。ってセリア?」
セリアはそれを見ると、店員たちに手をふってこちらへと誘導する。
その間にルーセントたちが広場のテーブル席を確保し、全員が座ると一斉に店から店員たちが出てきて料理を運んでくる。
「セリアちゃん! 今日は大活躍だったそうじゃないかい? ほら、いつもの持ってきたよ。コッチの皿はサービスだ。食べておくれ」
「わぁ~。おばちゃん、いつもありがとう! おばちゃんのパイ大好きなんだ~」
「おいおい、俺のパスタも忘れないでくれよ?」
「イミーさん! うん、大好き! ありがとう」
「おいイミーばっかりいい顔すんなよ! ほれセリア嬢ちゃん、鹿のロハシュ煮込みもあるぜ?」
「待て待て!! ジャイアント・ムガムガワニの串焼きを忘れちゃぁダメだろ?」
「セ~リア? そんな品の無い料理ばかりじゃなくてさ、アタイのピンクフィッシュの唐揚げ食べなよ。今日も絶品よ?」
「わわ!? みんなありがとう!! 温かいうちに美味しくいただくね♪」
突如押し寄せる店員たちに困惑する流。だがいつものことらしく、喜んでそれらを受け取るセリアを見て、セリアが街の人に好かれているのだと思う。
やがてセリアの騎士たちにも料理が並ぶと、今日の戦が嘘のように陽気に食事を楽しむ。
「わぁ~、あるじぃ。おいしそうな香りでワクワクだワンねぇ」
「ふふ。ワンコちゃんも、いっぱい食べてね。今日はありがとう、本当に助かっちゃった」
「くるしゅうないワン。遠慮なくゴチになるワンょ~」
先程までの凛々しい顔立ちはどこへやら、セリアがワン太郎を撫でながら楽しげにパイをかじる姿が、実に可愛らしい。
そんな流の視線に気がついたのか、セリアは頬を染めて恥ずかしげに話し出す。
「も、もぅ。そんなにジックリ見ないでよね」
「あぁ……いや、楽しげで見ているこっちも楽しくなる」
「そ、そう……?」
『こほん、それでお話の続きしましょうね?』
「ぁ、そうだった。それでどうして王都へ?」
流はムガムガワニの串焼きを一口かじり、肉のジューシーさに驚きながらも、味より過去の苦味をかみしめる。
その後ポツリポツリと、これまでの経緯を話すのだった。
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