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283:ドラゴンヘッド

 枯れたような女神が乱れた白髪のスキマから、龍人へ呪詛のようなモノを吐きかける。

 すると龍人の周りに不気味な顔が浮かび上がり、それが次々と現ると石のようになり動かなくなる。

 さらにその生首のような気色の悪い目がギョロリと開き、女神と同じ……いや、ソレ以上に聞くもおぞましい声で「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」と叫ぶ。

 流石の龍人のこれには参ったらしく、発狂するように悲鳴を上げた。


「うあああああああああは、離せえええええ!? 気色悪い!! ギャアアアアアアきもちわりいいいい!!」

「馬鹿が、離すわけがないだろうが!!」

「そのまま女神の寵愛をうけてろボケが!!」

「エド! 頼む!!」

「ま~かせておけ!! 全員準備はいいか!?」

「エドさん完了してる、いつでもやれる!!」

「よーし! んじゃ、見せてやるドラゴンヘッドの意味をなぁ!!」


 盾役の三名がさらに押し込み、氷の台座に出来た割れ目の中へと龍人を押し込むことに成功する。

 それを見計らってドラゴンヘッドのメンバーは、上から見ればまるでドラゴンが口を開けて咆哮しているかのような陣形になり、それぞれが詠唱を始めた。


「「屈強な刃よ風斬の羽と化して我が剣に宿れ!!」」

「「「水の精霊よ盟約により一筋の光となれ!!」」」

「聖なる導きよ。かの者に継続たる癒やしの水を纏わせたまえ! 大聖女の息吹!!」

「「イズ・ラズ・ファーガシー・雷鳴より生まれしその光神よ、かの者の剣に顕現し全てを貫く光となれ!! グズモット・カノン!!」


 前衛二人が剣を斜め前に向け、圧縮された空気を纏う刃を苦しげに構える。

 中衛三人は呼び出してあった水の精霊から力をもらい、剣に圧縮された水を纏わせる。

 癒やし手の娘は、リーダーのエドに継続ダメージ回復の魔法をかける。

 魔法師二人はエドに雷属性の強化魔法、グズモット・カノンをかけ一撃の威力を超強化する。


「キタキタキタ!! 仕上げだ! クソ龍人め、涙して真っ二つになりやがれ……第五術式リリース!」


 詠唱済みの魔法を詰め込んだ高級魔導媒体から魔法を開放し、エドの体に青白いスパークが飛び散る。一気に容姿が変わり龍人のようでもあったが、どちらかと言えばリザードマンに近いだろう容姿。

 それはドラゴンモードと呼ばれるドラゴンに近い姿になっており、その威力は「一回だがドラゴンの一撃を撃てる」ようになっていた。


「これが俺らの最大にして最後の業だ!! こいお前ら!!」


 エドはドラゴン化した体で剣を真上に掲げる。魔法師二人による〝グズモット・カノン〟によりほとばしる雷撃が剣より自分の体内へと流れ込み、ドラゴンモードの肉体とは言えかなりのダメージが入る。

 それを回復魔法〝大聖女の息吹〟で回復しつつ次の仲間のアクションを待つ。


「「エド受け取れ!! 風鋭羽斬(ふうえいはざん)!!」」

「「「死ぬなよ!! 水金の槍!!」」」


 前・中衛たちが咆哮するかのような、ドラゴン陣形の口の奥にいるエドに向けて、斬撃とギラつく金色が美しい水の槍を放つ。

 それらがエドに着斬する刹那、エドは溜まりに溜めた力を放つ。


「クサレ龍人めが! 喰らいやがれ! ジ・ドラゴ・ツザンメンブルッフ!!」


 風鋭羽斬と水金の槍が直撃する寸前、エドは〝ジ・ドラゴ・ツザンメンブルッフ〟を撃つ!!

 するとその二つの力を吸収し、冗談のような光の線となって正面へと突き進む。

 その大きさは直径一メートルほどで、まばゆい光と風と水の鋭い刃。それらが掘削機の先端のように凶悪に回転しながら光の帯を守るように進む。


 その気配を感じた盾職三名は盾をその場に放棄し、高速離脱する。


「くっそおおおおおお!! いい加減離しやがれええええええ――ッ!? なんだあああ!?」


 目前に迫る白金に輝く力の塊に戦慄する龍人。それは明らかに凶悪な威力を持っているが分かるほど、見た目以上に危険なものだと理解する。

 ふと視線をながせば、盾の奴らが中指を立てた後、親指でクビを斬る仕草が見えた。

 だがそんな事に気を回す余裕すらなく、龍人を貫くように襲いかかる。


 次の瞬間、硬質なモノがぶつかったような音がした後〝ギゥィィィィン〟と周囲に響く。

 さらに数瞬後、氷の台座のはるか後方が「爆発したように吹き飛ぶ」のが見えた。


「よっしゃああああああ!!」

「やったか!?」

「くあ~残念だ!!」

「これは倒したろう!!」


 一番近くから見ていたドーガ、イズム、ガッゾの三人は龍人に直撃した瞬間を目撃していた。

 だからこそ確信できた、「これは完全に龍人を屠った」と。



「ドーガ! この事を早くエドに報告しに……ってどうした? ひぃ!? く、クビがああああ!?」


 イズムはドーガの肩を揺すった瞬間、クビが置物のようにその逞しい体から転がり落ち、盛大に血飛沫を打ち上げる。

 それに焦り、背後へ数歩下がると背に〝ドン〟と衝撃を感じた。静かに後ろを見ると、そこには見知った顔があった。


「ガ、ガッゾ! ドーガが死んだ!! 何があった?? って――ヒァアアア」


 今イズムが話していた相手、ガッゾは「首だけ」リザードマンのスピアに刺さっており、その首と会話をしていたことに気がつくイズムは、さらに数歩後ずさる。

 さらにドン……イズムはその衝撃を受けた原因をゆっくりと振り返り確認する。


「ハァ~イ! 驚いたかぁな? 俺の名演技、ス・テ・キだったろぅ?」

「バ……バケモ――」


 龍人は右手を真横に一振りすると、イズムの首が放物線を描きながらきれいに吹き飛ぶ。


「オイ、誰がバケモノだ? この『アルギッド』様はな、バケモノ呼ばわりが一番カチンとくるんだぜ? 覚えておけクズが。あ、死んでるか」


 龍人――アルギッドはそう言うと、未来の嫁の事を思うと心は弾むのだった。

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