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280:三十三

「隊長、商隊が置いていった荷物の中に使えそうなのはこれだけです」

「ほぅほぅ、これはいいのが揃っとるじゃないか」


 部下より報告があった品は〝即効性体力回復薬〟〝即効性魔力回復薬〟〝煙幕〟〝弓と矢束〟。


「隊長さんちょっといいかい? コレなんだが」

「エドと言ったか? どうした――ほぉ。流石はアルマーク商会と言ったところか」


 エドが持ってきたモノ。それは「静謐(せいひつ)の聖女」と呼ばれる石像だった。

 ルーセントはセリアの元へと行くと、静謐の聖女を渡す。


「セリア様、こちらをお持ちください」

「これは? 手のひらより少し大きいくらいだから、まぁ持てるけど……邪魔ね」

「ははは、そう邪険に扱うものではありませぬぞ? この像は――」


 その時だった、突如リザードマン達が雄叫びを上げた。これまで用心してゆっくりと進軍していたが、その後の攻撃が無いと見て通常スピードで向かってくる。

 

「隊長の旦那、どうするんだ?」

「エド達は魔法師二人と、癒やし手(ヒーラー)が一人。盾が三人。そして前・中衛が合わせて六人か……魔法師の二人は?」

「上級魔法で魔力は使ったが、回復薬で八割戻してある」

「八割か……腹具合で連続使用が出来ぬから上等だな。それでお前たちは大丈夫なのか?」

「そっちも回復薬で問題ない。おかげで腹がタプタプだがな」


 ルーセントはそれを聞き、当初の予定通りに人員を配置する。

 まずは騎士達を全面に押し立て、限界が来たら下がらせ冒険者の盾と交代する。

 その間に回復し前線へと戻り全体の守りとする。

 

 そのスキマを狙って前衛が攻撃し、敵の数を減らす。そして魔法師が詠唱を終えたそばから、敵の塊を狙って殲滅という作戦だった。

 もっと人員がいれば効果的な戦術も組めるのだが、この人数ではそれが限界だった。セリアもそれを分かっているので、何も言わずにそれを見守っている。

 やがてそれらも終わり、セリアの隣にルーセントが来たことで敵を見据えながら口を開く。


「みんな、私のわがままに付き合ってくれてありがとう。これが本当の最後になるかもしれないから言っておく。あの世で会えたら一杯奢らせてね?」

「ははは。お嬢様は最近やっと、酒の味が分かるようになりましたからな。それは楽しみだ」

「こんなべっぴんな娘さんに酌をしてもらえるたぁ、あの世での楽しみが出来たってもんだ」

「お姉さんな私より、先に死ぬなんてのは許さないわよ?」

「それを言っら俺もだな。あがこうぜ姫さんよ!」

「「「我ら近衛隊はセリア様のために!!」」」

「よっし! 俺ら〝ドラゴンヘッド〟はジャジャ馬姫にあの世で乾杯だ!!」


 これから死ぬのがほぼ確定したような状態でも、こんな冗談が言える自分に驚きつつも、覚悟を決めてセリアは檄を飛ばす。


「よく言った、楽しみは後にとっておけ! これよりまだ南門へ着かないであろう、商人たちの援護を開始する! 着いてもどうせ開門まで時間がかかるだろう、私達が倒れたら全てが無駄になると知れ!!」

『『『オウ!!』』』

「総員攻撃に備えよ!! この〝馬車と荷物の砦〟が難攻不落だと、トカゲ共に教えてやれ!!」

『『『オウ!!』』』


 セリアがそう宣言した直後、動きを一層早めたリザードマン達は半包囲で荷馬車の砦を囲む。

 

「ルーセント!!」

「ハッ! 煙幕放てえええええええ!!」

「トカゲ共! バカデケェ鼻の穴によ~っく吸い込めよ!!」


 冒険者達が煙幕を、次々リザードマンの中へと投げ入れる。

 次の瞬間〝ドッムォ〟と鈍い爆音が響いたかとおもえば、白い煙が急速に広まる。そして――。


「グギャアアアアアオ!?」

「へっ、どうだ特製の赤カラシ入り煙幕の味はよ~!?」

「続けて声のする方へ一斉射撃!!」

『『『ハッ!!』』』


 騎士たちが弓で次々と矢を放ち、「正面の一点だけ」を狙い撃つ。

 赤カラシの匂い・音・煙・痛み、これら全てが野生の嗅覚を襲う。その壮絶な衝撃は、鼻の穴や目、そして喉を強烈に襲う。


「風魔法放てええええええ!!」

「「了解!!」」


 ルーセントの指示で風魔法を「正面に向けて」煙幕を巻き込みながら進む。

 やがて前方からも、悲痛な叫び声が響いてくるのを確認すると、セリアはさらに指示を出す。


「道は開いたわ!! さぁ~トカゲ共の大将の顔を殴りに行くわよ!!」

『『『よろこんで!!』』』


 セリアを先頭に、最終防衛陣地〝荷馬車の砦〟から出撃する全員。総勢三十三名の決死隊は煙の中を突き進む。

 あいも変わらず、煙の中では悶え苦しむリザードマンを槍で突き、剣で一閃し、鈍器で潰す。

 セリアの左側にはルーセントがおり、それが敵を静かに始末しながら話す。


「お嬢様、どうやらここまでの賭けに勝ったようですな」

「ええ、この静謐の聖女のお陰でね」


 リザードマンは人語が話せないわけじゃない、むしろ他の魔物より話せるのだ。それゆえに、人間の話している言葉も「理解」できる。

 そこでセリアは一計を案じた。それは「荷馬車の砦での防衛」を宣言する事により、そこでの防衛戦をすると言う事を大声で知らしめる。

 特に防衛体勢の配置を大声で指示しており、その効果は大きかったと言えよう。

 それによりリザードマンは本陣の守りを薄くし、その薄くなった部分で荷馬車の砦を半包囲した。

 半包囲が完成した事で好機とみたセリアは、薄くなった隙を突いて決死隊で中央突破に成功しつつあった。


「エルヴィスは実に良い仕事をしましたな」

「お陰で異常状態にならなくてすむ。本当に感謝だわね」


 二人が言う静謐の聖女とは、『清らかな乙女』のみが扱える、最上級の異常状態耐性アイテムである。

 効果は指定した人数を、異常状態から一定時間守る事ができた。そこでこの特製を活かし、煙幕で混乱させて一気に敵の中心にいるであろう、強者を駆逐するのが最大の目的だ。

 強者さえ倒れれば、またリザードマンの動きが悪くなり、脱出の好機につながるとの期待からの強行的戦術であった。

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