表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

273/539

272:切り札

「因幡のおかげで、何とか有効な手札も手に入ったし来てよかったな」

「もぅ! 無茶はだめなのです! 気をつけるのですよ?」


 流は「分かったよ」と、白々しく返事して札をしまっている。美琴が不思議そうな顔で、その様子を見て話す。


「流様、その札持っていけるのかな?」

「それな、俺も思ったんだが多分大丈夫だ。この札からはこの店特有の骨董品の気配が全くしないし、なんつーか……そう、ヒトのようなモノだと思う。多分だが封座の一部を使ってるからかもしれない」

「封座さんか~懐かしぃなぁ。昔はボクをよく可愛がってくれたのです。それにしてもその御札、本当に封座さんの体の一部なのです?」

「それは間違いないと思うぞ? 俺は子孫らしいからか、なんか分かるんだよなぁ。そう考えるとちょっと不気味だよな……」

「一体どこを使っているんでしょうね? ちょっと怖い」


 子孫に不気味だと言われ、もっと不気味な女幽霊に怖いと言われる封座だったモノ……。実に哀れである。


「もぅ! そんなこと言ったら、封座さんがかわいそうなのです! そのうち出てきて、頭ゴチンってされるのです」

「マジで出て来そうだから困る……」

「それ、なんかワカリマス」


 本当に哀れである。そんなご先祖様の話がポツリと途切れ、因幡が思い出したように話す。


「あ! そう言えば自然に話していたのです。美琴ちゃん久しぶりなのですよ」

「そう言えばそうだったね! 因幡ちゃんをいつも見ていたから、自然にお話してたよ」

「うちのヒキコモリが、やっとお外へ出れるようになったんだ。褒めてくれ」

「もぅッ!! でも本当のことだから、何も言えないのがクヤシィ」

「あははは、でもまた会えて嬉しいのです。あ、そうそう。お客人に後で渡すものがあるのです。裏磐梯山という所に生えている黄金笹と、恐山の湖の水と、その水中に生えている黄泉茸。そして羅臼岳山頂に生えている、氷華茸などなど、で作ったお薬があるのです」

「福島・青森・北海道まで行ってたのか……しかもまたレアそうな名前だけど、やっぱりそうなんだろう? それとあの水飲めないと思うけど?」

「それはそうなのです、ド○キで買えたらそこで買うのです。そのままなら飲めないけど、ボクが材料にする時点で問題ないのです」


 そりゃそうだと、納得する流と美琴。そのあとしばらく旅の話を聞いて、驚きと感動をすることになる。どうやらチョットした冒険があったようだ。

 その後店内に戻ると三人が待っており、そのままトエトリーへと戻ることになった。


「古廻様、くれぐれもお気をつけて。あの女は本当に嫌らしいですからね」

「せやでぇ? まだここにおった時に、あの分体を仕込んでいたほどですねん」

「フム、憚り者への注意もそうですが、あの札の取り扱いには十分にご注意を」

「分かったって、そう心配するなよ。あぁ、そうだ。戻った時の時間はどのくらいずれている?」

「そこは大丈夫でっせ。ほぼ異怪骨董やさんへ来た時間から、さほど進んでいまへん」

「助かる、じゃあ今度こそ王都へ行ってくる」

「はい。夜朔も向かっておりますので、向こうで役に立てるかと思います」

「お客人、気をつけてね?」

「ありがと因幡、色々助かった。じゃあ行ってくる!!」


 流はそう言うと異超門に消えていく。それを見守る四人は、心中穏やかではなかった。


「あのクソ女め、必ず息の根をとめてやるさかい覚悟してまっとけ」

「フム、ますます拠点の整備を急ぎませんとなぁ」

(ふたば)……貴女だけは必ず」

(お客人、御札が触れるようになったからと言って、無理はだめなのです……)


 それぞれが思いを胸に刻んでいる頃、流はトエトリーの屋敷へと戻ってきた。


「おかえりなさいませ旦那様」

「セバス、待っててくれたのか?」

「あれからさほど時間はたっておりませんので。それと嵐影に旅支度を済ませ、外で待たせてあります」

「それは助かる、流石はセバスだな」

「恐悦至極に存じます」


 話しながらエントリーホールへと向かう流たちは、そこにいるメイドと執事に挨拶すると、扉の前にいる嵐影へと乗りこむ。


「スパイス関連については、〆達に伝えてあるからその通りに動いてくれ。それと、ここの所在が憚り者と呼ばれる存在にバレた。今後は何時襲ってきてもおかしくないから、皆も大変だけど頼むな?」

「「「承知致しました」」」

「じゃあよろしく!!」


 そう流は言うと、嵐影に北門へと急がせる。


「……マ?」

「そうだ、屋根の上を走ってくれ」

「……マ!」


 時速にしたら五十キロは出ていそうな速さで、頑丈な石造りの屋根のみ選び疾走する。

 そんな嵐影背中から見る景色は賑わっているのに、たった一人いないだけで妙に寂しく見える。

 やがて北門付近に近づくと、嵐影は家々の間の岩壁を蹴るようにして地面へと着地する。

 北門へと近づくにつれ、何やら人だかりが出来ている。見れば氷のドームが出来ており、その中に人が恐る恐る入るようだった。


『流様……あれって』

「やめろ、聞きたくない」

「……マァ?」

「お前まで中へ行きたいとか言わないでくれ」


 そんな流達を見つけたのか、氷のドームより氷狐王が出てくる。すると門番達が血相を変えて大騒ぎしはじめ、槍や剣を構えて威圧する。

 しかしいくら威圧しようとも、氷狐王は何事も無かったように流への元へと歩いてくる。

 当然、北門は大パニックであった。



内容を少々変更しました。

274話へ、その部分を移植しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ