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213:〝もにょ〟とするヤツ

「わあああああああ!?」


 突如マヌケな声が頭上よりすると、流の頭に〝もにょ〟っとっした柔らかい物が落ちてくる。

 それを左手でツマミながら、自分の顔の前に持ってくる。


「こ、古廻様!? ご無事で!!」

「フム、一体何が……なぜデコピン一撃で崩壊したのですか?」

「ハァ~、肝が冷えましたでぇ! って、それよりその小狐はなんですの?」


 全員、流が左手でツマんでいる存在に注目する。それはどう見てもアイスブルーの瞳に、モフっとした毛並みが美しい、全長三十センチほどの銀色の小狐だった。


「何って……なぁ美琴?」

「うん、自称王様なワンちゃんです」


 いつの間にか悲恋から抜け出た美琴は、流の後ろから覗き込むように銀キツネを見ている。


「え? 氷狐王なのですかその子!?」

「うっそやろ……」

「フム……それがあの氷狐王の中身とは」


 驚く三人を見て呆れる流は、氷狐王を三人の前へとぶら下げる。


「ほら、よく見てみろよ。アイツの妖気を感じるだろう?」

「こ、コラァァ!! ワレをつまむな! 今すぐ離すがよい! 命だけは助けてやろう、だからは~な~す~の~だ~!」

「本当ですね、間違いなく氷狐王のソレです……」

「フム、意味が分かりませんな」

「そうなのか? コイツ、はじめから俺たちには視えていたぞ。な?」

「はい、頭の中にいたよ」

「ホンマかいな……」


 驚く三人を不思議そうに見る流と美琴。それに不満なのか、短い足をパタパタ動かして必死の抵抗をする氷狐王。はたから見ればとても滑稽だが、それが今の現状だった。


「驚きましたが理解しました。それで最後はどうやって、この子の頭を砕いたのですか?」

「あぁ。クビを切り落とした時に、鑑定眼でコイツのつなぎ目を見つけたから一撃入れといたんだよ。だからチョットした外部からの衝撃(・・・・・・・)で壊れたのさ」

「そ、そこまででっか!?」

「フム。驚きを通り越して、驚愕ですな」

「えぇ……。実は私達は、古廻様が勝てるとは思っていなかったのです」

「そやで、良くてギリギリ戦えるかどうかと言う予想やったから。それがどうですかいな、まさかの余裕勝ちや! しかも氷狐王の本体があるなんて、誰も知らなかったものを見つけるなんて、一体全体どういうことやねん!? と思いますわぁ」


 そう言うものなのか? と流は疑問に思いながらも、首の後ろの皮をつまみながら〝ぷらり〟と氷狐王をまじまじと見つめる。


「まぁなんだ、おいワンコ」


 氷狐王はビクリとすると、涙目でプルプル震えながら必死に抵抗の意思を示す。


「だ、誰がワンコだ! ワレは氷狐お――」

「ワ・ン・コだよな?」


 流が被せるように氷狐王の言葉を遮る。一縷(いちる)の望みをかけ、周りに助けを求める視線を送る……が。


「ええ、犬ですね。異論は認めません」

「フム。間違いなく犬ですな」

「せやな、犬っころで間違いないわ」

「今度は可愛いですから、ペット枠で飼ってもいいね♪」


 氷狐王は絶望した。自分を召喚した凶悪な神ばかりか、同等の存在にまでそう言われてしまい、妖刀にまでバカにされる始末にさらに絶望した。


「ほら……」


 流は氷狐王の眼前へ右手を差し出す。つまり――


「はぃ……お手です…………ワン」


 氷狐王は泣いた、心の中っでたくさん泣いた……だからこそ、こう思う。

 

(クソッ! クソッ! クソッ! この氷狐王たるワレになんと言う真似を!! 必ず復習してやるッ!! 必ず氷漬けにした後に八つ裂きにしてやるのだ!!)


 そんな風に、決意も固く復習に仄暗い炎を燃やしていたが、憎き人間モドキが何かを言った。


「よしよし、じゃあ今日からお前は『ワン太郎』だ!」


 その瞬間、突如氷狐王もとい「ワン太郎」の体が白く光りだす。


「これは!! 古廻様、ワン太郎に『汝と契約を結ぶ』と仰ってくださいまし!」

「お、おう分かった」


 氷狐王は「やめてぇぇぇ!!」と悲痛な叫び声を上げるが、誰も聞いていない。哀れだ……。


「こうか? コホン……我、古廻流は珍獣・ワン太郎『汝と契約を結ぶ』ものなり!!」

「いえ、そこまで言わなくても……」


 そう流が右手のひらを〝バッ!〟と開き宣言した瞬間、白い光が集まりだしてワン太郎を包み込む。光の中から「ギィャアアアア」と何かの悲鳴が聞こえたが、気のせいなのだろう。

 やがて光が収まり、それが収束する。そしてその中から出てきた氷狐王の首には、紅白の注連縄(しめなわ)が巻かれており、紙垂(しで)と言われる白い紙をよじった三つの紙の中央には『いぬ』と書かれていた。


「ワン太郎……お前……」

「ぅ……何だ? ワレの首を見て何だと言うのだ?  ん? って!? アーーーーーッ!!」

「ワンちゃん可愛い♪」

「ブハッ! おい、氷狐王! お前なんやねん『いぬ』って」

「フム。キツネなのに犬『いぬ』とは滑稽ですなッ! プッ」

「氷狐王、今日から堂々と名乗れますね……『いぬ』と……ぷふ」


 絶望でもう言葉が出ない氷狐王。そこにこの原因たる漢がとどめを刺す。


「良かったな、これで俺が飼い主になったようだから、毎日お手の練習をしてやるぞ? 明日は犬かきの練習だ」

「…………ふっ!! ふざけるヴぁギャアアアアアアアアアアッ!?」


 突如首の紅白の注連縄(しめなわ)が、えも言われぬ苦痛を氷狐王へとぶち流す。

 思わず悶絶した氷狐王は、転げ回りながら自分を召喚した邪神を見ると、うすく微笑んでいた。

 それは「もう絶対に逃しはしない」と言うような、冷酷で無慈悲な表情に魂からゾっとするのだった。

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