212:終焉~執念の一撃
氷の王から爆発的に高まる妖力。
その妖力は青い渦となり、さらに空間を凍らせ、氷の鋭い礫で周囲が覆われる。
それに氷狐王が覆われた瞬間、無くした足が復活した。さらに、まるで氷の鎧を纏ったようになり、頭・胴体・足と凶悪な鋭さを持った氷が吹き出している。
「グルゥゥゥゥゥ……。小僧、なめ過ぎだ……この氷狐王の真の力をもって、キサマを葬り去る!!」
「あぁそうかい。名前負けの犬っころには、『誰が飼い主』かを分からせてやるよ」
氷狐王はそれに答えず、宮殿の天井付近まで高くジャンプする。
そのまま空中にとどまると、まるで氷の羽が生えたかのようになり、そこから無数の振動する氷の刃が生み出された。
振動する刃はやがて、氷狐王の眼前に集まりだし一本の巨大な日本刀になる。
「王の怒りにふれた愚かな人間モドキよ、後悔するまもなく死ぬがよいわッ!! 〈ワレの求めにより顕界せよ! 魂滅刀・永氷月下!!〉」
氷狐王は美しくも禍々しい高速振動する、巨大な氷の日本刀から妖力を噴出させ、それを縦に口へくわえる。
さらにその莫大な妖力で刀を鋭くコーティングし、触れたもの全てを破壊するばかりか、魂から滅する一撃をもって流を葬り去る!
『滅べッ! 不遜で矮小な存在よ!!』
腹話術のように話す氷狐王は、急降下して縦にくわえた刀を流へ突き刺すように迫る。その切っ先が流をつらぬくまで、距離は十一メートル!
さらに迫る距離が七メートルになった瞬間、長さ三メートル程の八つの「氷の三日月」が流を囲むように出現し、一気に流へと襲いかかるまで五メートル!
「やれやれ、だからお前は偽王なんだよ」
そう言うと流は美琴を納刀し、片膝をつく。その間迫る三日月は、鳥かごのように流を包み込み、脱出不可能な必殺の間合いまで攻め込む――が。
「ジジイ流納刀術! 奥義・陸翔燕斬!!」
――本来、陸翔燕斬は鞘を後ろへ飛ばすことで、最大の威力を発する業だ。しかし流は妖力を使い、さらに昇華させ「天女」まで呼び出す事になった。だが今回は――。
納刀したままの姿勢で、美琴の莫大な妖力を詰めた鞘から引き抜く。その瞬間、刀身から妖力がほとばしり、以前より妖艶にして怪しげな天女が抜け出た刹那、その愛用の死女神の鎌で八つの禍月を、踊るように回転しながら斬り払う!
だがそれを見越したかのように、頭上三、ニメートルに巨大な氷の切っ先が迫る!
切っ先を睨みつけた流は〝ニヤリ〟と口角を上げると、すでに飛ばした斬撃が「魂滅刀」へぶち当たった瞬間に、美琴を下に向けて飛び上がる。
斬撃がぶち当たることで、一瞬突撃が停止したのを見計らい「触れると魂から滅する」と言う危険な刀へ美琴を突き立て、棒高跳びのような格好で氷狐王の頭上へと舞い上がった。
その信じられない様子を、氷狐王は真っ赤な凍る目でジッと見ていた。
無駄に優れた視覚は、コマ送りされた出来損ないの映像のように、カクカクと敵が動くのを見つめることしか出来ないのが恨めしい。
やがてあの憎き人間モドキが、何かを叫んでいるのを氷の耳が拾う。
「ジジイ流・薙払術! 巨木斬!!」
流は氷狐王の頭上へと飛んだ限界点から、体をひねりながら「巨木斬」を放つ。
その無骨な斬撃は、氷狐王の首めがけて無慈悲にネジリ斬り裂く。
氷狐王はその斧のような斬撃が、自分の首に〝め゛リ゛ィッ〟と食い込む嫌な感覚を、無駄に高性能な視覚で見ていることしか出来ない。
やがて恐ろしい斬撃は、自分の首の中程まで進む恐怖を感じたが、それもすぐに終わる。
そのまま一気に人間モドキが放った斬撃が、自分の首を切断したのだから。
回転する景色。その頭上には、人間モドキが実にイヤラしく嗤っていた……。
そのまま氷狐王の首が落ちるのを流は確認すると、何事もなかったかのように〆達の元へ歩き出す。
「終わったぞ~? って……なんだよ、その馬鹿面は」
流は三人の元へと向かう。すると全員が口をポカンと間抜けに開けて、まったく動かななかった。
壱は普段のマヌケ顔がさらにマヌケになっており、参は純白の執事服を肩からずり落とす。
さらにあの傾国の美女たる娘は目と口を大きく開き、愛用の扇子を〝ぽとり〟と落とし、中から殺盗団のなれの果か、地獄の亡者が片手を出していた……怖い。
「おい! お前たち、正気に戻ってくれよ!」
「……ハッ!? こ、これは失礼しました」
「フム!? ま、まさかこのような結果になるとは……」
「古周りはん、アンタってお人は……」
やっと正気に戻った三人は、やっと話し始めた瞬間だった。
「「「古廻様!! 後ろッ!!!!」」」
突如叫ぶ三人。その原因は、首を切断した氷狐王の「クビだけ」が、地面を這うようにして流へと襲いかかる。
その凶暴なアゴを目一杯に開き、流へ噛み付くために〝ヴィクン〟とひと跳ねし、頭上からマルカジリする。
「あぁ……」
流はそう言うと、後ろを振り返らずに右手をスッと上に掲げる。
やがて凶暴な氷の牙が流へと襲う寸前に、その掲げた右手の人差し指をデコピンのように〝ビシッ〟と氷狐王の牙へと当てた。
噛みつかんとしていた氷狐王は、時間が止まったかのように動かなくなる。
次の瞬間、〝ピキキキキ〟と硬質な物がひび割れる音がしたかと思うと、氷狐王の頭は粉々に砕け散ったのだった。
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