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207:躍然な幽霊

「それで〆が馬鹿なのはよく分かったが、俺を何とかしてくれ。寒くて体が動かん」

「酷いです、古廻様ぁ……グスン」

「おっと、失礼致しました。フム、これは死後硬直ですな。少々お待ちを」


 参は懐から札を五枚放り投げると、五芒星の形になりて流を黄色い光が包む。次第に関節が動くようになり、全身に血が流ていくのを感じる。


「フム。これでどうですかな?」

「お。おお動くぞ! サンキューな参! それと多分だが、俺のために喧嘩してたんだろう? 壱も参も、そして〆もありがとうな。あと復活させてくれた事に感謝してる」

「こ、古廻しゃま……ぐすん」

「いえいえ、ちょっと死にそうになっただけですよって、お気になさらず」

「ちょっとそこまで出かける気軽さで、死にそうになるなよ。まぁ無事で良かった」


 四人はこれまであった事を話し、情報のすり合わせをする。どうやら本当にこちらの世界でも大変だったようだ。


「それで、この神殿みたいな建物が俺の墓標だったと?」

「はぃ……。お言いつけ通り、古廻様が『人間はやめるつもりは無い』と仰っていたので。人のままここに安置しようかと」

「はぁ~。それで壱と参が人ならざる者にしても、俺を復活させようとしたと?」

「堪忍なぁ~。僕達も最初はそれを受け入れてたんでっけど、やっぱり古廻はんは僕らにとって特別な存在と改めて思いましてん。それで参を巻き込んで愚妹の討伐に乗り出したワケでっけど、逆に殺されそうになったチュ~、なんともしまらない話ですねん」

「フム。兄に同意したとは言え、ご意思を違えてしまい申し訳も無く……」


 三人が申し訳なさそうにシュンと項垂れているのを見る流は、さらに申し訳なさそうに右手の小指で額をかきながら話す。


「い、いやぁ……。それがさぁ、俺ってば人間やめちゃったみたいよ? 何て言うの、え~っと?」

『妖人化ですよ、流様』


 突如聞こえる懐かしい声。

 その声に聞き覚えのある三人は、うなだれていた顔を上げて声の主を見る。

 

 悲恋から抜け出た美琴は、実に美しかった。

 絹のような白肌に、新月の夜の海を思わせる黒髪はとても艶が良く、目鼻がくっきりとし、口元も佐藤錦のような〝ぷっくり〟とした瑞々しい質感であり、誰が見ても「美少女」と言える顔立ちだった。

 そんな美琴の着物は、デザインは古いが品の良い下が濃い桃色だが、徐々に上に行くほど淡い色になっている、京友禅の艶やかな振袖に身を包み立っていた。


 そんな美琴の瞳は呆れた感じで流を見ているが、その姿は実に嬉しそうだった。


 「あらあら、まぁまぁ! 美琴じゃないですか!! よく出る気になりましたね、古廻様が倒れた時に異界骨董屋さんで会った時以来、いえ。それより人前に出るのは百年以上無かったのでは?」

「おお! 美こっちゃんや、久しいな~。僕もそのくらいは会ってないで!」

「フム、美琴ではないですか。久しいですね、元気そうで何よりです。死んでますけど」

「あ、あのその……。皆さんお久しぶりです。とても恥ずかしいですけど、流様が私の主になってくれたので、頑張って出てきました!」


 そう言うと美琴は〝フンスッ〟と両手を握りしめ気合を入れる。その表情は生気に満ち、美琴の強い覚悟を行動でしめす。幽霊だけど……。


「お前は頑張らないと出て来れないのかよ、おばけの癖に」

「あ、またそう言う事を言うんだから! 知りません、フンだ」


 そんなやり取りを見る三人は、心底良かったと思う。

 あの呪いそのものだった悲恋美琴の呪縛から解放され、一人の少女として明るく生きている美琴を見て。

 でも三人は思う。幽霊なのに元気だな……と。

 

「まぁ良かったで~。これからは幸せになるんやで?」

「フム。生前の分まで楽しむのですよ?」

「うん! 壱と参のおじさん、そして〆さんも、またこれからよろしくね!」

「お、おじ……。あぁ任せとかんかい!」

「見た目は若いと思いますが……。フム、古廻様を頼みましたよ」

「うふふ。本当に御めでたいですね。あ、そう言えば美琴の事で忘れていましたが、その……先程の話は?」

「あぁ、それなぁ」


 流は自分の棺替わりだった、無駄に豪華な彫刻が施された安置台に腰掛け美琴を見るが、なにやら困ったような表情で愛想笑いをしている。それを訝しげに思うが、とりあえず話を進めることにする。


「お前達は神の存在を信じるか? ……って、今さらだったな。良く分かってないんだが、時空神って言うの? あと、おかしな無機質の変な声達に改造って言うか、改変されちまってな。気が付けば妖人ってのになってた。ほら、見た目が違うだろう? いかにも人間ヤメマシタって顔つきでさ」


 〆をはじめ、三兄妹は首を傾げた後、お互いを見ながら不思議そうにしている。

 そう流が言うが、見た目は普通である事を、自分はまだ知らなかったのだから。

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