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206:超質量+B*H

 参は兄が無残に貫かれた瞬間、蘇生へと傾けていた力を行使しながら走り、兄と妹の間に割り込み、妹たる〆の猛攻を防ぐ。


「このッ!! 《八卦防御術式八重展開! 断絶の裂空!!》」


 詠唱を端折(はしょ)り、何とか〆の尾の一つが兄を貫くのを防ぐ、が。大抵の相手ならこれでも十分通用する程の防御力を持つ結界だったが、〆相手では強度が不足しており、結果――。


「やはり無理だったかッ!!」


 尾先を妖刀のように鋭くさせた〆の渾身の一撃を、参の結界で一瞬凶尾を止める。が、しかし結界を粉々に破壊して参の胸を貫くコースに凶尾が迫る。


「フンッ! ムウウウウウウウッツ!!!!!!」


 咄嗟に参は「白刃取り」するような恰好で、〆の凶尾を左右の手の平で挟み込むようにガッシリと掴み、そのまま均衡する。


「兄上、申し訳ございません。ここまでのようです」

「ガッハッ……。いい、よくやってくれた。これで流様だけでも助かれば俺達の目的も果たせたと言うものだ」

「口惜しいです、あの愚妹が反魂に協力してくれたらと思うと……」

「仕方ないだろう、それが流様のご意思だったからな」


 遅効性の連続ダメージを喰らい続け、今すぐ動けない壱は血反吐を吐きながら〆を睨み、参も兄を背に守りながら〆の凶尾を防ぐのが手一杯だった。

 そこに無情にも次の瞬間降って来るであろう、残り八つの凶尾が動き出すのが見える。


「ここまでか!?」

「クッ――!?」


 二人が死を覚悟した瞬間、間の抜けた声で〆の背後から絶叫する者が現れる。





 流は突如意識が覚醒する。しかし体は氷のように冷たく硬直し、まるで死体のようであった。死んでただけに……。


「う゛ぇっくしょい!! うぉぉぉ……クソ寒っむい……。どこだここは? ん……目の前に馬鹿でかいモフモフがいるぞ……」


 目覚めたばかりの流は状況が掴めず、動かない体を不思議に思いながらも、目だけで状況を確認し始める。

 すると目の前には真っ赤な尻尾が荒ぶっており、それが全部立ち上がると勢いよく上に伸びていくのが見える。

 

 そして伸びれば当然見える、アレが――。


「うおおおおおおお!! 何だこれは!? 超馬鹿デカイ『ケ○の穴』が見えるぞ!!!! スゲー眺めだ!!!!!!!!」


 壱と参二人の目前に迫る九本の凶尾。それが一斉にピタリと動きを止め、突如震えだす。

 そして、次の瞬間――。


『きゃあああああああああああああ!? みみみみみ、見ないでくださいましいいいいいいい!!』


 怒りで真っ赤になっていた神妖獣だった〆は、さらに真っ赤になり〝ぼぶん〟と煙を吹き元の人型へと戻る。

 その姿は黒を基調とした加賀友禅に、牡丹と水行灯(みずあんどん)が描かれた、流れを(しの)ぶ物となっていた。


「な……何だ、何が起こった?」

「フム……分かりません……」


 呆然とこの状況を見つめる二人、真っ赤になった顔で大きな狐耳を〝へにょり〟とさせて、涙を流す〆。

 その状況が全く分かっていない流の四人を見つめる、流の傍にあった美琴は「この人達は馬鹿だ」と内心思うのだった。


「それで一体これは何事だ? って言うか体が首しか動かん! 助けてくれ~」


 先程までは〆以外聞えなかった、攻撃の轟音でかき消されていた流の声は、静寂とも言える現在、はっきりと聞え流が目覚めたと知る。


「なが、古廻様!! お目覚めになられたのですか!!」

「フム! 良かった、本当に良かったあああッ!!」

「お? 壱と参もいるのか? って、さっきのデカイもふもふは〆、お前だったのかよ!? 実にモフモフらしい見事なケ○の穴だったぞ! はっはっはっはっは」

「も、もうやだあああ。お嫁に行けないッ!!」


 そう言うと〆は顔を隠してプルプルと震えていた。

 それを聞いて全てを察した二人は、顔を見合わせてから笑いだす。


「ぶっ、ブハハハハハハ! 古廻様、ケ○の穴は良かったですな! お陰で弟共々命拾いしましたよ」

「ブックククククハッハッハ! フム、本当にその通りですな。あと数舜遅かったら、兄も私も滅されていたでしょうからなぁ……そこの○ツの穴にッ!!」

「ぅぅぅぅぅぅぅ……」

「何があったんだよ、ホントに……」


 困惑する流は三人をなんとか首を持ち上げて見る、すると知らない男が一人いた。


「ん、あんたは誰だ?」

「ああ、これは失礼を。私は壱ですよ」

「は? またまた御冗談を」


 見れば金髪でアイスブルー色の瞳をした男が、身の程もある大剣を斜めに突き刺し、杖にして立っていた。


「っと、そう言えばもう憑依召喚を解いてもいいな、危うく忘れてこれで自滅する所だったか。天界へと戻れ、聖人よ!」


 壱がそう言うと金髪の男が脱皮するように天井へと姿が抜けて行き、その直後〝ぽん〟と音が鳴ったかと思うと、何時もの真っ赤な不死鳥の折紙になった壱がいた。


「おお!? 知らない人が手を振りながら天に昇って行く……さよ~なら~」

「って訳ですがな、古廻はん。愚妹がドアホすぎて喧嘩になってましてん」

「フム。本当にアホですからな。特大級のド・アホ受賞ですよ、ドアホ・オブ・ドアホですな」

「も、もぅその辺りで勘弁してください……」

「「あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?」」

「ぐすっ。ひどい……」

「「酷いのはお前の頭の中だ!!」」


 何が何だか分からないが、〆が何か悪さをしたのだろうと思う事にして話を進める。

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