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201:祝福は突然に

御芽出度(おめでとう)ウ御座イマス。 特殊条件『悲恋成就』ノ、達成ヲ確認。 申請中…………『可』。 申請ガ受諾サレマシタ。 此レヨリ、対象:古廻流ト、対象:妖刀・悲恋美琴ノ、魂ノ融合ヲ、申請…………『可』。 申請ガ、受諾サレマシタ。 此レニヨリ、対象:古廻流ノ肉体ト、魂ノ器ガ大幅ニ改変、サレマス。 …………『緊急』時空神・万世ノ帝、ノ、遅効性術式ガ、対象:古廻流ノ魂ニ、確認サレマシタ。 魂ノ改変ニヨル、異常ヲ感知。此レニヨリ、対象:古廻流ノ魂ハ、人ノ枠ヲ逸脱シマス。 『理』ニヨル修正ヲ実行…………。 『失敗』≫


 流は意味も分からず、無機質に流れる多数の声に戸惑う。


「お前らは一体何だ!? 俺と美琴をどうするつもりだ!!」


≪私ハ『(ことわり)』デス。 先程ノ、失敗カラ、対象:古廻流ノ、魂ヲ解析。…………『成功』…………ック!? 時空神・万世ノ帝ヨリ、ノ伝言デス。 『間抜けな理よ、ご丁寧に改変ご苦労。それをトリガーとして、その男の魂に仕込んだ術式を発動させた。精々悔しがるがよい』以上デス。 此レニヨリ、対象:古廻流ノ魂ノ修正ハ、不可能ト、ナリマシタ。 変質シタ魂ヘ、悲恋美琴ノ妖力ガ流入シマス≫


「一体何を――!? グガアアアアアア!! 体が、グゥゥゥッ! 燃えるように寒いッ!!」


≪『告』対象:古廻流ノ魂ニ、膨大ナ妖力ガ、注ガレタ事デ、魂ト肉体ガ『人外ヘト変質』シマス。 此レ、ニヨル、古廻流ノ『妖人化(ようじんか)』ヲ、申請。 …………『可』。 申請ガ受諾、サレマシタ。 対象:古廻流ノ妖人化ヲ開始・完了、マデ。 五・四・三・二・一・妖人化ガ完了シマシタ。 弄バレタ魂達ヨ、貴方達ナラ『運命ヲ打チ破ル』事ガ、出来ルト信ジテいマス≫


 『理』の一方的な告知が終わった瞬間、流の体からも白い妖気の渦が噴出し、美琴の紫の妖気と重なり白紫の螺旋となり、繭のようになる。


「これは……一体? み、美琴! おい、どうなっているんだこれは?」

『…………ぇ? すみません! あまりの幸福感に気絶していました』

「幽霊が気絶すんな! それよりこれは……」

『ぅぅすみません。私にも分かりませんが……え? えええええええ!? な、流様……そのお姿は一体……?』

「は? 姿?」


 流は悲恋を鏡のようにして自分の顔を見る。


「な……な、なんだこれは……。俺、人間やめちゃったみたい!」

『やだ、カッコいい……』


 普段なら「お前そのネタをどこで」とツッコミたかったが、今は自分の変化にそれ所じゃなかった。

 まず手を見れば「微妙に爪が尖って」おり、皮膚は今までと同じだが「奇妙な模様」が腕に見える。それは文字のようでもあり、記号のようでもあった。

 さらに特徴的だったのは首から上、つまり顔のパーツが変わっていた。


 髪の毛は日本人らしいの黒髪から「異様に輝く白髪に黒のメッシュ」が入っており、目に至っては濃い茶色の角膜から「薄い赤紫色の角膜」になっており、瞳孔は「縦に割れた輝く銀色」だった。

 

「理不尽すぎるだろ。俺の了解も得ずに妖怪化とかねーわ」

『でもカッコいいから、良いんじゃないですかね?』

「お前なぁ……って、それどころじゃねーだろ今は!! この渦巻く妖気はどうすれば止まるんだ?」

『えっとですね。こう〝エイヤ!〟って感じでどうです?』

「お前ねぇ、もう少し知性を感じる説明とか出来ないの? 何が『エイヤ!』だよ」


 その瞬間渦巻いていた白紫色の妖気が、花の蕾が開くように解放される。


「うっそだろ!?」

『ほら、だから言ったじゃないですか!』

「うっ……。マジスンマセンでした美琴さん。って――!?」


 綻び始めた妖気の隙間から突如突き出す電撃の拳。

 咄嗟に流は両腕をクロスさえてガードしてしまう、が。


『な、流様!!』

「グゥゥゥ、痛った……くない?」


 困惑する流、そして典膳は殴った方なのに、ダメージを受けているようで赤い霧が瞬時に右の拳を治す。

 肉体すら別物に変わりはて脅威だった、攻撃力と防御力の塊みたいな典膳の雷撃を纏った拳の一撃を受けたが、痛みらしきものは感じず、ダメージらしきものは皆無であった。


「一体どうなって……いや、今はそれどころじゃねぇ。まずは早く親父さんを楽にしてやらねーとな!」

『っ……はい!』


 自分の攻撃が効かないのが不思議だったのか、典膳は首を傾げていたがまた攻撃を再開する。

 流を壁際に追い詰めたのをいい事に、左右の拳で電撃を纏ったままラッシュをかける。

 その緩慢だった攻撃も、追いつめて不動の状態から繰り出しているからか、速度も乗って恐るべき威力になっていた、が。対する流はその全てを『紙一重に見切って』かわしていた。


「グウガアアアアム!!」

「すでにアンタの攻撃は遅すぎて当たらんよ。すまない親父殿、もうこれしか救える手がない。美琴……新たな力をここに示せ」


 なおも続く猛攻の中、流は白鞘に納められている悲恋美琴の柄に手を乗せる。

 そして典膳の右の拳が流の頭を捉えたと思えた刹那、それは消える。


「ジジイ流・抜刀術奥義……太刀魚――極」


 流は典膳の拳を掻い潜り、下へ潜る様に身をかがめると、そこから「ドラゴンサイズの太刀魚」を放つ。

 その攻撃はとても静かで、とても美しく、とても非情だった。


 白鞘から抜刀された悲恋美琴は透明感のある紫色に輝き、そこから放たれた太刀魚はこれまでの物と違い、鏡のような鱗を持つ正に龍のようだった。

 それが「二頭」現れ白紫(はくし)に輝く妖気を(まと)い、典膳へと襲いかかる。

 

 典膳は突如正気が戻ると、今何が起きたのかが分からなかった。

 気が付けば右肩から左下へと龍が駆け抜け、それを目で追おうとすれば左肩から右下へと同じ龍が貪りつくす。

 そして気が付いたら「上半身が四つに分かれて」おり、そのまま〝どしゃり〟と床に倒れる感覚と、天井を見上げる自分がいた。


 ふと見れば、そこには流がおり、悲恋美琴を手に自分を見下ろしているのが分かった。

 瞬間、典膳は悟る「ああ、やっと解放された」のだと。

 

 そこに痛みや恐怖、そして憎しみすらも無く、ただ自分の娘のために多少は役に立てたと言う思いと、それを成した流への感謝の気持ちがあった。

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