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198:刀照宮典膳~動の章

「お父様……。私は悲恋を打ち続ける最中に、大部分の記憶を失ってしまいました。だから何となく辛かったと言う事と、最後がとても恨みがあったと言う感情は覚えています」


 典膳は眉間にしわを寄せ、目を瞑りその話に聞き入る。


「それから色々ありました。気が付いたら日本……いえ、日ノ本中から私を追い求めて、怖い人に日々狙われたりもしましたけど、今はその……とても大切な流様と出会い幸せです」

「そう、か……。お前には本当に苦労をかけたな。流よ、少し抜けた娘だが良しなに頼むぞ」

「任せてくれ、美琴は死ぬまで離さない」


 典膳と流は会話するように視線を合わせる。

 美琴は「私、抜けて何てないですっ!!」と抗議するが、誰も聞いてはいなかった。


「静音と話しすぎたな、そろそろ刻限か……。二人共、覚悟はよいな?」

「お父様……! で、でもそん――」

「美琴! 御父上の覚悟をこれ以上無駄にするな! 父としての最後の務めを目に焼き付けろ!」

「はい……。父上……東照宮美琴はもう迷いませぬ、その大きな胸をお借りします!」

「はっはっは。こんな愚かな父でも慕ってくれるか、ありがたき事だ。さらばだ美琴! そして流よ、後は頼んだ!」


 時刻は無情にも丑三つ時へと滑り込む、これまで典膳だったものは次第にその姿を変え、やがて赤黒い皮膚をした筋骨逞しい大男になり、その体には赤い霧のような物が噴き出す。

 意識は既に無く、まるで獣の本能と言うように「ゴアアアアアアアアアアア」と咆哮を上げる。

 

 やがて赤い霧の中から姿を現したのは、身長三メートル、巨大な一つ目が頭部にある怪物だった。


「まさかここまで変わるとはね……。美琴やれるな?」

「はい! 父上の苦しみはここで終わらせます」

「じゃあ頼むぞ美琴!」


 美琴はコクリと頷くと、朧げな存在になり悲恋へと吸い込まれる。

 まるでそれを確認したかのように、典膳を封印していた四方結界の鳥居(とりい)が崩壊し、さらに拘束していた石のような鉱物も崩れ去った。


「まさか過去にまで来て戦うはめになるとはね。ほんとに俺の人生殺伐としすぎだろ」




 流と美琴が典膳と向き合ってた頃、未来の異世界では死闘が続いていた。



◇◇◇



「参! 狐尾(きつねび)乱舞が来るぞ! 結界をピンポイント防御にして、砕けたそばから再構築!」

「フムゥッ! 兄上も無理を言う、が。やらねばこちらら死ぬだけですからな。《八卦反物魔術式展開! 八咫(やた)鏡反陣(きょうはんじん)!》」

『ビャアアウウウウウウ!!』


 〆は九本の荒ぶる尾を〝ざざざわり〟と付け根から振動させると、そこからホーミングミサイルのように、九尾が無軌道に壱と参目掛け襲い掛かる。

 参が新たに構築した八卦陣は、直径一メートル程の小さな鏡のような防御陣であったが、そこへ〆の荒ぶる凶悪な尻尾がブリザードの狂氷の如く無数に襲い掛かる。

 それを〆の尾は難なく破壊するが、同じ場所へと無数に虹色に光る鏡が構築され、その突撃力を削いでいく。


「尻癖の悪い馬鹿狐め、聖なる裁きに涙しろ! 聖印術七重(しちえ)式展開! 大召喚! 祝福の女神 ア・ラヴィ・オール!」


 壱は参が防いでる間に〆の頭上へと高速移動し、そこへ巨大な魔法陣を展開させる。

 その白い聖なる力が溢れる魔法陣は七層にまで展開され、そこから光の巨人が降臨する。

 足先から召喚された巨大な女神は、その時点で既に聖気で邪たる〆を威圧し、やがて全容が現れる頃にはその異様な姿が明らかになる。


 足は赤黒いタコのような触手が複数あり、胴体は女神とも言える人型の豊満なボディーだが、顔は緑目の梟であった。

 右手には穂先が『三又でロウソクの燭台』とも言える形の槍のような物を持っており、左手には鏡面のような銀色で、中央に獅子の顔が付いた丸型の盾を装備している。


 祝福の女神ア・ラヴィ・オールは召喚されたと同時に、〆の頭上から盾を真下に向け強襲する。

 〆も危険を察知し、ア・ラヴィ・オールへと迎撃態勢へ入ろうとする、が。


『ヴァウウウウウウ!?』

「愚妹めが、ヤラせはせん! 《反転・八卦束縛魔術式展開! 黄泉の渇望陣!!》」


 〆の真下に広がる八卦陣。そこから無数に飛び出す黄泉の住人である亡者の手は、触る者を束縛し、その者の命を渇望するように黄泉へと引きずり込む。

 流石の〆ですら亡者に足を取られて前屈みに体制が崩れたところへ、頭上から女神が襲いかかる。


「祝福の女神よ、アホウな頭を叩き治して差し上げろ!」


 ア・ラヴィ・オールが獅子の盾を〆の頭上から垂直に叩き落す。その瞬間盾に付いていた獅子の口が〆の頭へと噛みつき、盾で殴られた衝撃と、噛みつかれた痛みで〆は『ギャアアアウウウウウウッ!!』と絶叫するのだった。

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