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018:冒険者ランクは複雑です?

「そうだ、一つ聞きたかったんだよ。メリサがしてた眼鏡のレンズは何で無いんだ?」

「メガネ? あの顔の黒いのか? あれは魔鏡眼まきょうがんと言って視力の補助と言うか強化する魔具だな。例えば一キロ先の文字も見えるスゲーのもあるんだぜ? フレームに魔法陣が刻まれていて、それで視力を上げているんだわ」


(って事は普通の眼鏡も商売になるかもな)


「でも高いんだろ?」

「まぁそれなりにするわな。望遠機能付きのは金貨三枚が相場だな」


(やっぱり売れそうだな! あ、でも視力は個人で違うからだめか……売れても老眼鏡くらいか? あと凄いルーペ)


「なるほどねぇ、そんなのがあるのか……そう言えば、ファンは一体どんな商売してるんだ?」

「おっと、そう言えば言ってなかったか? 俺もかなり稼いだから領都級の称号を持ってるんだぜ? 屋号は『ファン運輸商会』って言うんだ。でもちょっと特殊でな。普通は店舗を構えて商売するんだが、俺の場合は店舗を持たず、仲間達と行商専門の商売をしているんだ。でも今回危なかったろ? 殺盗団が幅をこの辺りにも効かせ始めやがったから、しばらくは領都で商売するっきゃねーかな」


 そう言うとファンは落ち込んだようだったが、店員にエールを頼むとまた元気になった。


「それと俺は冒険者ギルドにも登録してるんだぜ? 同じ冒険者同志なら護衛も安くつけられるしな。今回は急ぎだったから護衛を見繕う時間が無くてな、問題無いと思ったらアレだからなぁ、マジ助かったぜ」

「お互い様だろ? ま、それのお陰でこうして知り合えた訳だから、あの盗賊に感謝だな」

「ちがいねぇ」


 そう言うと二人は笑って盃を重ねる。


「俺の腕前は三星トリプルの称号を持ってるんだが、冒険者ランクって知っているか?」

「いや全く分からん。セリアも酋長級? とか言ってたがさっぱりだったな」

「ははは、それは酋滅しゅうめつ級だな。酋長ってのは通常ソロで討伐するもんじゃなくてな、複数のPTで討伐するもんなんだよ。それをお前はソロでやるたぁ呆れるぜ」


 ファンによると冒険者ランクは全部で十クラスあるらしい。


 下から〝一星級シングル〟から始まり、〝二星級ダブル〟と来て〝三星トリプル〟の全部で三つで、モンスターのサイズは最大で大型まで討伐可能な範囲まで。


 その上に巨大生物を滅する実力がある〝巨滅きょめつ級〟があり、〝酋滅級〟はその上になる。

 そして一流冒険者と言われる者の最終目標としてあげられるのが、ドラゴンクラスを滅する〝竜滅りゅうめつ級〟となるらしい。


 ここまでの前提として「パーティ単位での討伐」と言う事。


 ソロでの討伐は推奨されていないが、ソロでの討伐が可能な場合は称号の後ろに《 + 》が付くと言う事だ。


 例えばソロで十匹以上のモンスターを相手に勝利か、レア個体やボスを単体勝利出来る実力があれば《+》が一つ付き、レア個体やボスクラスの個体を複数の雑魚と同時に、またはレア個体とボスを滅する事が出来る実力なら《++》が付く。

 星級はどのランクでも《+》の色は銅色で、巨滅級は銀色。そして酋滅級は金色で、それが《+》の最高ランクになるらしい。

 

「だからナガレ、お前の場合は実力的には酋滅級++になる訳だが、まだ冒険者になって無いからなぁ……因みに酋滅級より巨滅級の方が力は強い事が多いが、脳筋が多くてな。だから知恵がある分、難易度高いって事で酋滅級の方が上なんだ」

「なるほどな。でもそれじゃあまだ六つしかランク埋まってないだろ? 残りの四つは?」

「あれはまぁ、なんと言うか『アレ』だ。人外認定だな」

「なんだそれ?」


 その上についてファンは語りだす。


 強大な力を持つドラゴンをソロで倒す・・事が出来る者の称号を〝極武きょくぶ級〟と言い、王と名の付く存在を滅するのが〝王滅級〟と言う。


 そして世界に現在六人しか居ない、その分野のスペシャリストが持つ称号を〝幻想級〟と言う。


 最後に人外中の人外として居ると言われるのが〝神託級〟と言われる存在で、名前の通り「神より任命された役割を持つ者」が持つ称号らしい。


「極武級の倒すって何だ? それに神……か? そんな存在が居るのか?」

「あぁ極武級のそれは殺す事は出来なかったが、その間際まで追い詰めて逃がした状態で、それが最低合格ラインって感じだな。そして神様って奴だがどうなんだろうな。教会の奴らなら詳しく知っていは居るとは思うが、俺には分からん。でも居るとはされているな」


 その後数時間ファンと歓談した後、空から落ちてくる光の雨を見ながら流は宿へと戻る。

 宿の娘が迷惑そうにドアを開けてくれたので、詫びにチップを渡し自分の部屋へと入るなり流はベッドへ大の字にダイブする。

 マットレスが硬いベッドに横になりながら、流はこれまでの濃い数日を考えていた。


「異世界か……鉾鈴が俺を呼んだ? 何故……そう言えば昔ジジイがウチの家系は武門の出だからって理由で、命の危機にマジで遭いながら修行をさせられたな……今思えばあんな危険な事を子供にやらせるか? それも俺だけ……もしかして呼ばれたのはそれも関係あるのか?」


 考えると、どれも関係ありそうだし、でも何も関係が無さそうな事柄を色々思い出す。


「はぁ~やっぱり全部ジジイが悪い……気がし……」


 そう言うと流は眠りに落ちたのだった。



 ◇◇◇




 ――その頃、トエトリーの商業ギルドのマスタールームでは会合が行われていた。


 メンバーは五人で立場は様々だった。

 一人目は商業ギルドのマスターであるバーツ。

 二人目はトエトリー冒険者ギルドのマスター

 三人目から五人目は空中に浮かぶ丸い玉に、目玉が付いた通信の魔具からの声だった。


「って言うと、バーツはその子がサムライ・・・・だとでも本気で思っているワケ?」


 見た目は二十代前半ほどで切れ長の鋭い目付きだが、色白で作り物のように整った顔付、そして美しい金髪から見える長い耳と、エメラルド色の目をしたエルフの女が確認するように言う。


「ワシものう~俄かには信じられんのう~ほんにサムライ、いやさ『侍』なのかのう~?」


 目玉からの声だけだが、高齢な感じでおっとりとした口調の男性がサムライと侍のニュアンスが違ったのか言いなおし、エルフに同意する。


「ククク、されど持っておったのであろう? あの、カタナ……いや『刀』を。だが物証には足りないのではないか?」


 どこが楽しいのか何故か含み笑いを込めた、中年の男の声が魔具から疑問を提起する。


「はあ~、やれやれだね。何時まで同じ話をしてるんだい! アンタらとあろう者が、疑心暗鬼とはね。黒髪・黒目・おまけに『刀』だろ? そして極めつけはここに居る全員が知ってる国名とは違うが『ニホン』の場所の情報。もう十分すぎる程の証拠じゃないかい?」

 

 肝っ玉な感じの口調で、少しとうがたった女性が叱りつけるように他の三人へ魔具から苦言を呈する。


「それにだね、妾達はもう二度と失敗は出来ないんだよ!? 分かってるのかいボンクラ共!」


「まあまあ、ヴァレリア様も落ち着いてくださいな。そしてもう一つ皆さんにお見せしたい物があります。まずはこれを」


 バーツは大きなテーブルの上に丁寧に箱を置いた。中から出て来た物に一同は驚愕する。


「ウソ!! それは!?」

「なん……じゃと!?」

「ククク……ッ!!」

「それ見た事か!! これで分かったろボンクラ共……どう見てもこれは……ギアマンじゃないか!!」


 一同が驚愕した品、それはクリスタルガラス製のワイングラスだった。


「やはりこの地に町……いや、都市を建設した我らの先祖は正しかったと言う事デスネ。遅くなりました皆様、ご挨拶が遅れ申し訳ないデスネ」


 言葉が聞こえた方を見ると入口のドアがスッっと開く。

 そこには四十代程の上品が服を着たような紳士然とした、鍛えているのが良く分かる体と品の良い顔立ちがミスマッチな男と、フードを被った人物が入って来た。


「これはクコロー伯爵、それに領主様も我がギルドへようこそ」

「俺も挨拶が遅れたな、すまない。それでバーツ、どうなっている?」


 クコロー伯爵はテーブルの上のワイングラスを凝視しているが、フードの男――領主の方は気が付いていないようだった。


「まずは領主様、テーブルの上をご覧ください」


「テーブル? おお!? なんと美しいグラスなのだ! その曲線美と言いボウル下部の細工はどうだ! 素晴らしい、そしてなぜそこまでクリアなのだ!! リムのなんと滑らかな事か、きっと氷の女神と口づけをするかの様な口当たりなのだろうか……ステムは妙齢の婦人が朝露を撫でる小指のようだ、それに――」 


 フードを着用しているので顔は不明だが、声からすると十代後半か、二十代前半程の男性に思える。

 そんなどこかの骨董狂いを思い出しそうな残念な男、それがこの町の領主だった。



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