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167:ターニング・ポイント

 あれから二日が過ぎ、流もだいぶ妖力での防御も上手くなった。

 善吉の「それなりに強め」の横スイングにも耐えれるようになり、今日はわりと本気の一撃を耐える訓練だ。


「よーし、来い善吉!」

「おうよ! 行くぞ~、フンッ!」


 流を吹き飛ばす事を躊躇(ためら)わない程気合を込めた、善吉の金棒が恐ろしい音を上げて迫って来る。

 その金棒の威力は、乗用車すらも簡単に破壊する威力だと思いながらも、流は冷静だった。


(うぉ~! キタキタキタ! 足に妖力を込めて踏ん張る! そして腕に五割、足に二割、美琴へ三割で振り分ける!)


 流はここ数日何度も食らった金棒から、最適な妖力の振り分けを考え実行に移す。

 その直後、金棒が美琴へと迫り刀身へ練った妖力を返す。そして『赤い鬼の籠手』を具現化し、それを両手に装備して金棒の着打を待つ。


「ぐぐうぅぅぅぅぅ!!」

「おお! 耐え抜いた!!」


 わずかに足が後ろへと下がったが、それでも金棒を美琴で完全に受け切った流は、そのまま金棒を押し上げて払う。


「うおっと!? しかも払いのけるかよ、やるな~」

「ふぃ~。いやギリギリだったぞ? もう少しで吹っ飛びそうだったからな」

「よっしゃ! ガキんちょ、ようやった!」

「防御面はそれなりに出来て来たねぇ。坊や、その籠手だけど、他の部分は出せるのかい?」


 流は鬼の籠手を一撫ですると、左まゆを上げて溜め息まじりに答えを話す。


「あぁそれな。俺も試してみたんだけど手だけだな。なぜかは知らないが、具足一式は無論、兜もスネ当ても無理だったわ」

「そうかい、なら妖力の流に無駄があるのかねぇ」

「いや、個別で出そうとしても無理だったな」

「そうなると原因は違うがよ、多分ガキんちょの精神力の問題ぜよ」


 前鬼の言葉にふと思う。確かに手はすぐ目の前に見えるから想像しやすい。

 逆に足は下を見ていると、何か違和感があって集中できない。無論体とかは論外だった。


「あ~多分それだな。なかなか難しいな」

「何を言っているさね、それだけでも十分すぎる程の力だよ。元世界でそこまで妖気を操れる人間は少ないはずだよ」

「そうだが。ガキんちょは、希少中の希少と言ってもいい程の存在だがよ」

「そう言うもんかねぇ」


 流は籠手を見ながら、呟くようにそんな事を思う。


「ガキんちょのその籠手は、防御力だけが上がる感じが?」

「今の所はそんな感じだなぁ……あ、でもこの前は円柱石を殴った時は凄かったよな? う~ん、良く分からんな」

「あれは力の入れようの問題さね、緩く殴ったつもりでも、その籠手のデザインでも分かる通り、坊やは鬼の力を意識しているね。だから力を引き出せたんじゃないのかね」


 そう言われると、鬼が刀や槍で戦っている所を想像出来なかったりする。

 鬼の戦闘スタイルとは、金棒をぶん回して殴りつけるイメージしかなかった。


「あ~そう言われると、何となく理解したわ」

「だろう? まあその辺りも追々慣れれば良いさね」

「鬼に剣豪とかいないのか?」

「そりゃいるさ。例えばウチの旦那とかね」

「え!? 前ちゃん剣豪なのか?」

「まぁ~昔はそう言われた事もあったがよ。最近はコレ一本だぜよ」


 前鬼は腕まくりのような仕草で、ぷにぷにの右腕を掲げる。


「そ、そうか。じゃあ俺はもう少し練習すれいいのか?」

「そうだねぇ、あの天女は出せないのかい?」

「あ~ちょっと待ってくれ、聞いてみる」


 流は美琴を抜くと、そこにいる天女へと聞いてみる。


「なぁ天女ちゃん。呼んだら出て来てくれるのかい?」

「坊や何を言って……え?」

「動いているっちゃ……」

「なぜ恥ずかしそうに顔を隠す」


 天女は頬を染めて恥ずかしそうにしている。しかも何故か腰をクネらせ、妖艶さ(?)をアピールしているのか?

 そんな天女はどうやら出て来てはくれないようだった。


「うーん、ダメっぽい。やっぱ妖力が刀身に(たぎ)らないと、恥ずかしがって出て来てくれないんだよ」

「オイのような存在がこう言っちゃなんだが、面妖だがよ」

「そりゃあ生きている品ってのはあるもんだが、これは群を抜いているさね。まあそれは分かったよ。じゃあコツを掴んだら、ウチの旦那と剣で戦ってもらおうかね」

「え!? 剣豪と?」

「ガハハハ、剣豪とはこそばゆいがよ。まあオイは本気を出さんちゃ、得物(えもの)は……ああ、あれがいいがね」


 前鬼は当りを見回すと嵐影が荒業(?)のために、昨夜枕にしていた海岸に打ち上げられていた流木を見つける。

 それを空中へ放り投げると、あっと言う間に手刀で流木を削り木刀にする。


「うむ、いい出来だぜよ!」

「ちょ!? 前ちゃん、流石に美琴相手にそれは斬れちゃうぞ?」

「まあ見ちょれ。ほれ、かかって来るがよ」

「知らないぞ? じゃあ――」


 流は前鬼へと美琴を袈裟懸けで斬り付ける。が、前鬼は木刀でそれを受け止め、しかも弾き返してしまった。

 その後何度か斬り結び、数分が経ったころに前鬼が流を吹き飛ばす。


「どうがよ、驚いたっちゃろ?」

「マジかよ!? その木刀の芯に実は金属でも入っているんじゃないのか?」

「何を言うとるが。こいつは紛れも無くただの流木だぜよ。ただ――」


 そう言うと前鬼は木刀に妖力を込めだすと、暗い青色に光りだし、それを全体に馴染ませるとまた普通の木刀になる。


「と、言う訳がや」

「そうか、妖力で武器も強化したって事か」

「ああそうがよ。だがそれだけじゃない、切れ味も増しているぜよ」

「だからか! さっき弾き返された時、真剣と斬り結んでいる感覚だった」

「だろう? 今回の課題は『妖力を美琴に効率よく纏わせる』と言う事を学んでもらうが」

「分かった! お願いしまっす!」


 前鬼はウムと一つ頷く。そして目の前に円柱石を出し、ゆっくりと木刀を当て、木刀を高速で振り抜く。

 すると円柱石は〝ズズッ〟と石と石がこすり合う重い音がしたかと思うと、熱したナイフで切られたバターのようにズレ、斜めに石床へと転がり落ちる。

 それは全く力を込めていない感じであり、実に自然に木刀を斜めに振り下ろしただけであった。


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 特に☆☆☆☆☆を、このように★★★★★にして頂けたら、もう ランタロウ٩(´тωт`)وカンゲキです。

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