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164:荒行の嵐影の隣には……

「はい、どうされましたか?」

「魔法の事で聞きたい。魔法ってのはどうやって覚えるんだ?」

「基本的には魔法学院と言う場所があり、そこで学ぶことになります。もしくは師匠となる人物に師事出来れば、教えてもらう事も可能となります」

「独学では難しいか?」


 少し考える素振りをすると、キルトは淀みなく話し始める。


「そうですね……。可能とは思いますが、難しいと思います。何せ専門用語と感覚の話を理解する必要があるもので」

「なるほど、ね……」


 流は元世界における、専門用語の数々を思い出す。

 例えばIT関係に縁遠い人に、IT用語でSGAと言われても分からないし、それがシステムグローバル領域だと説明されても意味不明だ。

 そんな感じな事を独学で学ぶのは、ネットもないこの場所では確かに難しいのではと思う。


「学院か師匠ねぇ、どこかに居ないかね師匠。お前達は魔法使えるのか?」

「はい、使えますがあまり得意ではありませんね。軽い身体強化と、夜行動するのに便利な魔法くらいで、攻撃魔法は使えません」

「なるほど、じゃあそれだけでも教えてくれない?」

「それはかまわないのですが、私共のような下手な者に習ってしまうと、その後間違った癖が付きます。それで私達も未熟なままで……」

「あ~。そう言うのもあるのね」


 申し訳なさそうにするキルトに「気にするな」と言って、また皆で楽しく食事をする事にする。

 そんな様子を美琴は、静かに黙って見ているのだった。




 食事を堪能した流は、風呂に入ってコテージの窓から海を見る。

 浴室はオーシャンビューとなっており、そこから出ると露天まである。

 それは海の中に風呂があると言う実に奇妙な物だった。

 しかも浴槽は透明であり、ぼんやりと海底が青く光っているのが見える幻想的な風景で癒される。


「この世界に来て命の危機に何度もあったけど、元世界じゃ絶対に味わえない贅沢もあるんだよなぁ……。これって相殺なのか? いや、でも、ん~?」

『…………』

「ん、美琴。今日は初めて話しかけてくれるな」


 流は頭の上に直径三十センチ程の丸くて平たい笠を被り、その上に美琴をくくり付けて風呂に入っている。

 少し重いが、それを言うと美琴が悲しむので我慢をする。


『…………』

「あぁ、さっきの事か? 手帳の言う事だから気にするなよ」

『…………』

「気にするな、俺はお前に呑まれても良いと思っているしな。大体今更だろう? お前がいないと俺はこの世界で間違いなく死ぬ、それも確実にだ。だからお前に食われようが、憑り殺されようが、その時はその時だ。あの時、お前に一目惚れしたのが運の尽きってやつだな」

『――――』


 無言になった美琴は突如震え出す。

 すると笠に〝ポツポツ〟と硬質な物が当たる音が聞こえたと思うと、流の前から白い球が降って来る。


「な、何だ!? ってこれは真珠? あ! お前泣いているのか?」

『…………』

「馬鹿だなぁ……そんな事ぐらいで泣くなよ。今はもう悲しい事は無くなったんだろう?」


 美琴はふるりと揺れて答える。


「ならもう泣くなよ。今は俺が一緒にいるんだからな?」

『…………』

「よし、それでいい。お前は笑顔が似合う妖刀だよ。ん……? 似合うのか? 妖刀に?」

『…………!』


 その言葉にちょっぴり怒った様子の美琴に流は謝る。


「あはは、悪い悪い」

『…………?』

「あ~最初にお前が出した真珠か? あれは誰にも売らない事にしたよ」

『…………』

「売っても良いって言われてもなぁ……だってあれはお前の一部だからな。だからあれは俺の物だ」

『…………!?』

「はっはっは。もし生身だったら顔が真っ赤になっていそうで何よりだ」


 そんなからかう流に、美琴は恥ずかしそうに抗議するのだった。




 流が寝静まった頃、異怪骨董やさん組と、鬼の夫婦は浜辺のガーデンソファで話し合っていた。

 傍にはアルルギルがウェイターの様に腕に白布を被せ、背後で控えている。

 テーブル周辺は、ヤシ科の観葉植物が夜風に揺れており、それが涼を演出する。

 そんな空間を囲むように、四隅にはかがり火の明かりが灯り、実に南国風のリゾート地と言った感じの場所だ。


「それでは貴方達は流様がもしかしたら生まれ変わり、それも『役 小角』の再臨と?」

「ああ、その可能性が十分にあるっちゃよ。あの方も『超越者』だったがね」

「しかも夢見が悪く、それを聞くと何かを探しているような……そう、あの方の波動を感じるさね」

「フム。それだけでは何とも……」

「ああそうだね、だからあくまでも可能性って訳さね」

「ま~確かに流様のお力は、普通じゃないのは確かやからなぁ」

「それはそうなのですが……。まあ、今はまだ焦らず状況を見守りましょう」


 〆の提案に全員が頷く。


「前鬼と後鬼は明日からどうする予定です?」

「そうだねぇ。善吉が『あんなん』だし、明日は私達が訓練しようかね」

「それがいいがよ。まだ楽鬼(がっき)を呼ぶには早いっちゃ」

「楽鬼ですか? 確か将軍の一人だったと記憶していますが……」

「そうさね。昔お嬢に幾度(いくど)も細切れにされて、しばらく廃鬼になってたアイツさね」


 〆は可愛らしく両手をポンと合わせると、思い出したように話す。


「あれは酷かったですものね~」

「オドレはどの口が言うとんのじゃ。本当に我が妹ながら、その常識の無さが怖いわ」

「フム。鬼よりよほど鬼畜ですからな! 地獄の鬼も裸足で逃げ出すのを何度見た事か……」


 前鬼はふと海の方を見る。荒行中(?)の嵐影が、夜食に真っ赤なトマトのような物を食べているのが見える。

 敵の返り血から身を守る訓練でもしているのだろうと思うと、流石の前鬼も背筋に冷たい物が流れた。

 そんな嵐影が寝そべってる隣に、何かおかしなモノが砂浜に埋まっている。


 良く見れば善吉が頭だけ出して、浜辺に埋まりながら気絶していたのだった。

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