162:善吉、そうお前は善吉! 下
恐ろしい形相の〆を抑えるべく、壱や参。それに執事達三人も必死になって体を押さえ、その行動を何とか抑え込んでいる。
その話しを聞くと、早く地獄へ善吉を送り返したい内容だった。
「許さない許さない許さない許さない許さない! あの鬼いいいい!! 古廻様に何と言う事を許さないいいいい!! アイツは見た事がある……善吉、そうお前は善吉いいいいいいいいい!! その愚鈍な図体を十センチ四方に圧縮してやるううううう!!」
そこには黄金に光る瞳孔を縦に割った荒ぶる何かが居た……。
「や、やめええええや!! 古廻はんは修行中なんやから邪魔すんなボケェ!!」
「フンムゥ!! やめるのです妹よ! 落ち着くのですよ!!」
「〆様! 何卒お静まりを!」
「お嬢様、落ち着いてください、どうか、どうか!」
「し、〆お嬢様お願いだから卵の殻を剥くように落ち着いて! あ、微妙な例えだ」
五人の静止を今にも振りきりそうになっている〆。
見るからに恐ろしい状態に、善吉の命が風前の灯になっている事を本人は知らなかった。
「……相談に行くのはまた後にしようかね」
「……それがいいぜよ」
こうして妖力を操り戦う方法学びながら、流はその日の訓練を終了する。
ふと見ると、海岸には嵐影が砂に埋もれて、頭の上に美味しそうなスイカを乗せていた。
どうやら相当厳しい修行(?)をしているらしい。そんな嵐影の鬼気迫る荒行を思うと、思わず背中が凍り付く。
夕方になり流達は、メイド達が用意したバーベキューコンロの前に集まる。
嵐影も呼んでみたのだが、どうやら修行(?)中らしく、野生に戻り獲物は自分で狩ると言うのでそのままにしておいた。獲物はいるのだろうか……。
「ふう~、今日は中々濃い一日だったな。ところで……どうしたんだお前達、まるで嵐の中を彷徨ったような恰好で?」
「嵐でっか? ええ彷徨ったと言うより、放り込まれたって感じでっけど」
「フム。恐ろしい嵐でしたな、それも暴力的で殺人的な」
「「「私達の口からは何とも……」」」
「〆……お前は一体何をしたんだ?」
「も、もぅ。みんな冗談はその辺りにして、ほら! お肉が来ましたよ♪」
凍てつくようなジト目を向けられた〆は、美味しそうなお肉を流へと運んで誤魔化すが、何かしたのだろうと流に突っ込まれて、額と鎖骨あたりに冷や汗を流す。
「はぁ~。まあいい。何か大変だったみたいだけど、お前達もがんばってくれ」
「任せてや~。明日も愚妹が暴走したら守ったりますよって」
「フム。ビーチの安全は我らにお任せを」
「な!! 何を言っているのかしらね? そ、それはそうと古廻様。今日はどうでしたか?」
「う~ん……。前ちゃんと後っちゃん、説明してくれるかい?」
厚切りのステーキ状のモルモル牛をぱくつきながら、前鬼が答える。
「そいがなぁ。予想以上ちゅうかなぁ~」
「そうなんだよお嬢。坊やは既に妖力を使いこなしている、しかも上級と言ってもいい程にね」
「まあ!! 私の古廻様はそこまで天才だったなんて♪」
「お前んやないわ、ボケッ! それで……そんな事あるんかい? 僕は少なくても半月はかかると思っとったけど」
「フム。半月ですら人としては破格。それが初日でそれとは一体?」
流はそれを黙って聞いているが、後鬼がロックにした十二年物の麦焼酎を一口呑みながら話す。
「それなんだがねぇ、確証は無いんだけど……坊やは昔何処かで、妖力を使った事があるんじゃないかと思うさね」
「そうだがよ。とてもじゃないが、ありゃあ人の練れる妖力じゃないぜよ。妖力をよしんば練れても、それは『超越者』にかなり近い感じかもしれんがよ」
その言葉が出ると、骨董屋さん組は真顔になって聞き返す。
「超越者……ですか?」
「ああ、その可能性は否定出来ないさね。考えて見みなよお嬢、これまで美琴ちゃんから妖力を借りていたとは言え、少しコツを教えただけで、いきなり妖力の具現化までする。さらにそれを飛ばす事なんて出来るかい?」
「もっと言うとだがよ、具現化した妖力を籠手にしてガードをしたり、板状にして滑らせたり、苦無にして投げたかと思うと遠隔爆発させたりしたんぜよ?」
「た、確かにそれは凄すぎますね。古廻様、お体に異変はございませんか?」
「特には無いな、健康そのものだぞ」
周りの反応が驚き半分、憂慮半分のような反応に困る流。そしてその気になるワードを聞いてみる。
「一応は聞いたんんだが……あらためて聞くけど、その超越者って何だ?」
「そう、ですね。一言で言えば私達に近い部類になる……と言う認識が一番近いかも知れません」
「なにぃ!! 俺にもケモ耳が!? 〆とおそろいになるのか、フフフ」
「ち、違いますよ! いえ嬉しいんですけど、違います。その……」
「フム。妹が言いにくそうなので続けます。つまりは『人間をやめる』と言う事になるかも知れません」
「なっ!?」
あまりの事に絶句する流だったが、妖力を得て異常な戦闘力を使っているのは理解している流は、しばらく開口したままになった。
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