表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/539

161:善吉、そうお前は善吉! 中

「潰れてしまえ!」

「……ジジイ流・参式! 四連斬!!」


 流は拡散タイプの参式を、金棒へ八連撃にして叩き込む。

 当然その勢いは止まらなかったが、金棒は予定より流の「後ろ」へとずれて打ち込まれる事になる。

 そのズレた隙間を縫うように頭を下げながら掻い潜り、金棒より内側へと入る事に成功する。


 その先にある右スネを確認すると、流はそこへ真横に一閃し、そのまま善吉の股の下を潜り、背後へと抜けていく。

 抜けながら、美琴を逆刃に構え妖力を籠手と美琴へ込めていく。

 そして股の下を完全に抜けた瞬間、数歩そのまま進み一瞬止まると業を繰り出す。


「ヒグマは居ないがデカ物には違いない、ジジイ流・断斬術! 羆破斬(ひぐまはざん)!!」


 ――羆破斬は本来、背後から追いかけて来る巨大なヒグマを、カウンターで袈裟懸けに斬り倒す荒業だが、美琴の妖力でその威力が上がった現在は――


 善吉の足が背後にある状態から、流は自信の左足を勢いよく右足の裏側へと回し込む。

 すると体は左回りに回転し、それと同時に右足も左回りに足を運び、上半身も同じように回転する。

 やがて回転が徐々に早くなり、その高速回転を三度行いながら遠心力を付けて、善吉の右フクラハギに向けて襲い掛かる。


 美琴の妖力で練り上げた羆破斬は「紫の大きな丸鋸(まるのこ)」の様になり、善吉の右足を斜めに斬り飛ばす。

 それは元の業である力任せの荒い切断では無く、鋭利な刃物で一瞬のうちに斬られた、断面の美しさすら見てとれる程のものだった。


「なっ、消えた!? どこに行った――ぐああスネ!? 居ない!? どこっつ何だああああ??」


 善吉は突如右足の踏ん張りが効かず、滑る様に右側へ倒れた事の意味が分からなかった。

 その後訪れた激痛が善吉を襲い、やっと状況が掴めた時にはすでに最悪の状況だった。


「ぐあああああああッ!! あ、足が無くなって――」

「待たせたな善吉ぃぃぃぃぃッ! 散々(なぶ)ってくれやがって……覚悟はいいか?」


 倒れる前は届く事が無かった眉間の弱点を、倒れた現在、狙える位置まで来た事で形成は逆転する。


「なぁ!? ま、ま、待ってくれ!! 足が無いからもう無理だ!!」

「泣き言は地獄に帰ってから言うんだな。ジジイ流・刺突術――」

「はい、そこまでだよ!」


 流が業を放つ刹那、後鬼が愛用の龍を模った煙管(キセル)で美琴を止める。


「……後っちゃん?」

「まったく、こんなに早く善吉を倒しちまうとはねぇ。本当に坊やは末恐ろしい程の逸材だよ」

「って事はこれでクリアかい?」

「ああ、おめでとうさね」

「「「おおおお!」」」


 後鬼の言葉で沸き立つ観戦者達。


「まったく、それに引き換え善吉。油断しすぎじゃないのかい?」

「いやあ、言い返せないですよ。まさか足を斬り飛ばされるなんて思ってもみませんよ。はっはっは」

「ふぅ~。ちょっと待ってな」


 そう言うと後鬼は落ちている足を片手で持つと、善吉の元の足にくっ付けてからブラから呪符を出す。


「ほれ、治療(なお)しな」


 呪符から白い布のような物が噴き出ると、斬られた足に絡みつき、そのまま暫くすると消えていく。その後には綺麗に治った足が付いていた。


「お~。治りました! ありがとうございます、後鬼様」

「凄いな後っちゃん、その布は因幡の薬みたいだな」

「馬鹿言っちゃいけないよ、坊やの斬り方が良かったんだよ。因幡様の薬と比べるなんて、烏滸(おこが)がましいにも程があるさね」

「そう言うものか。何にせよ、良かったな善吉!」

「はっはっは。本当に一時はどうなるかと思ったぞ。強い(おのこ)よな。名をなんと言うんだ?」

「俺は古廻流だ、よろしくな」

「うむ、こちらこそよろしく頼む。流よ」


 死闘が終われば不思議と敵意も消える。

 これが怨恨から来るものならそうも行かないのだろうが、訓練と言うものなら問題ないと流は思う。

 もっとも一般人からすれば、命を狙われた時点で普通に話す事は出来ないのだが……。


「それでこの後は?」

「そうだなや……大体は分かったんが、まだまだ防御が不安がよ。死闘は無しにして、金棒で殴って来るのを防ぐ鍛錬をするぜよ」

「それがいいね。善吉、潰すんじゃなく払う感じで、坊やを軽めに払ってやってみな」

「分かりました。じゃあ流よ、まずは軽めにいくから受け止めてみよ」

「うっし、頑張るか!」


 軽めと言えど、金棒の重さと振り抜く速度で流は受け止めるのに苦戦する。

 その場に止まる事は出来ず、数歩下がるのが当たり前で、下手をすれば吹き飛んでしまうのだった。


「さて、どうしたものかねぇ」

「かと言って、アイツを呼ぶには確実に早すぎるがよ」

「そうなんだよねぇ。尽く予想の上を行く坊やだよ……。善吉の足、見たかい?」

「ああ、そらもう穴の空くほど見ちゅうが。あれはいくら何でも鋭すぎるっちゃ。もし不意を突かれ攻撃されれば、下手をしたらオイ達すら手痛いダメージを負うかも知れんがよ」

「まぁあれだね、一度お嬢と相談してから方針を決めようかね。さて、お嬢は……ぇ!?」


 〆がいるだろうコテージの方を見ると、そこは……修羅場だった。

 もし面白かったらブックマークと、広告の下にある評価をポチポチ押して頂いたら、作者はこうなります→✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。


 特に☆☆☆☆☆を、このように★★★★★にして頂けたら、もう ランタロウ٩(´тωт`)وカンゲキです。

 ランタロウの書く気力をチャージ出来るのは、あなた様だけです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ