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147:嫉妬に狂う王都

「こ、これは何だね? 異様に毒々しいが……」

「これは即効性はありませんが、どんな薬より効く神の回復薬ですよ。通称『神薬うさちゃんぱわ~』と言ったところですかね?」

「は? 神薬? うさちゃんぱわ~? 何だそれは??」

「まま、騙されたと思って、一気に飲んでみてくださいよ。ほらほら」


 流はバーツの口元へ怪しげな色の液体を流し込む。


「ふぐぅ!? むお!?」

「どうですか?」

「こ……これは!? 確かに即効性は無いが、徐々に骨折が治って行くのを感じるぞ!!」


 その様子に驚愕するギルド内。


「でしょう? とても貴重な品ですからね。あ、ちなみに売る分はありませんよ?」

「そんな貴重は物を俺なんかのために……」

「何を言っているんですか、この事態の収拾をしてもらわないとね?」

「うむ、そうだったな! ってもう治ったぞ!! これなら十分即効性と言えるぞ!? その他の痛い所も無くなった! ぬぅ!? 腰痛も膝の痛みも全部無くなったぞ!? 嘘だろう……」


 バーツの驚き様にまたも驚愕するギルド、もう驚愕の大安売りである。


「効果が実感出来て良かった。さて、少し部屋で話したい事があります。まぁ今更ですが……」

「分かった、すぐ行こう。メリサも来い。手の空いている者は外の様子と、情報の収集。それと倉庫がどうなったのかを確認して報告してくれ」


「「「はい!」」」


「では行こうか」


 バーツの部屋へ入る前に、メリサはお茶を用意すると言って途中で別れる。

 その間にこれまであった事を流は詳細に話し、その途中でメリサも合流した。


「そんな事があったんですか……」

「しかもオークキングだと? 信じられん……何故そんなバケモノがトエトリーに」

「その豚王が言ってたんですけど、元宮廷の筆頭魔法士を知っていますか?」

「ああ、ザガームだろう? あのクソがどうしたんだ?」

「ええそいつです。何でも今回の件に、そのザガームが絡んでいるようです」

「何だと!? では、ザガームがアイテムボックスを使って、この町へオークを送ったと?」

「ええ、ジェニファーちゃん達もそれが気になって、今も倉庫の中でアイテムボックスを見張っています」

「なんと……」


 バーツはしばらく考えると、メリサに指示を出し領主の館と、冒険者ギルドへ連絡をする。


「ではメリサ頼む」

「はい、すぐに伝えます!」


 メリサが出て行った後、バーツはギリっと奥歯を噛みしめながら、絞り出すように話す。


「今回の件は間違いなく王宮と、商業ギルド本部が関わっているだろう」

「まさか、スパイスの一件で?」

「ああ、それが切っ掛けだろうな。あいつ等は常にトエトリーを敵視し、隙あらば攻めて来ても不思議じゃないほどに、敵対心を持っている」

「すみません、俺のために街へ迷惑をかけてしまって……」

「いや、誤解するな。これはすでに避けられない状態だったのだ。奴らが何時攻めて来るかは時間の問題だった。その対応のために、冒険者ギルドマスターも王都へ行っているからな。それが今回のスパイス騒動で、直接的な手段に打って出ただけの事だ」


 それにしてもあまりにも、やり方が酷いのではないかと流は思う。


「しかし、もう少しやり方と言うものがあるでしょう。あんな豚王を街へ放つなど正気の沙汰ではない。下手したらトエトリーが壊滅しても、不思議じゃなかった」

「ああまったくその通りだ。連中の嫉妬心は、最早病気の域なのだろう。大体今回の倉庫は、本部直轄の倉庫だったしな」

「なるほどね。それでこの後どうしますか?」

「うむ……」


 バーツはしばし考えると、流へと予定を伝える。


「まずはスパイスの件を早急に進める事とする。それが奴らに最大の牽制なるしな。それで、持ち帰った答えは出たのか?」

「ええ、当初の予定よりは早く、そして多く輸入が出来ると思います」

「おお!」

「それでなんですが、暫くトエトリーから離れる事になります。もし用事があれば屋敷へ使いを出してください。早急に戻ってきますので」

「そ、そうか。何だかお前が居ないと、とても不安なんだが……」

「大丈夫ですよ、強い冒険者は沢山いますからね。それに領主の館に最近雇われた、ヴァルファルドさんって武人も、とても頼りになりますよ」


 その名前を聞いて、バーツはふと思いだした顔をする。


「ヴァルファルド? もしかして漆黒のヴァルファルドか? 全身黒い鎧で、女好きそうな顔をした、無精ひげで四十過ぎくらいの」

「そう、確かにそんな感じの人ですね!」

「まさか騎士団を捨ててまで、駆けつけてくれたのか……」

「騎士団ですか?」

「ああ、彼は王都近衛騎士団の団長だった男だ。先日、殺盗団の護衛にいた男の事は話したろう? そいつと同期のはずだ」

「なるほど……」


 以前ヴァルファルドが、「全てを捨てて来た」と言っていた意味がようやく分かった。

 しかしそこまでしてトエトリーに来た、その真意は何だろうと疑問にも思う。


「今、その本人も倉庫に居ますよ?」

「なんと!? それでは挨拶に行くとしようか。ナガレはどうする?」

「じゃあ俺も頼まれた事は終えたと、挨拶してから館へ戻りますよ」

「うむ、では行こうか」


 バーツは階段を下りながら考える。このまま応酬がなし崩し的に、予想しない方へと推移するのではないかと。

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