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144:魔術師と宝箱

 ヴァルファルドが大剣を縦に斬り込む、それをオークキングは王笏で受け止めると、その隙にジェニファーが鋭い蹴りを顔面へと叩き込むが、それを右手により防がれる。

 だがオークキングも防戦一方ではなく、何かのスキルを使用したのか、突然空気が爆発したように二人を吹き飛す。


 二人はほぼ垂直に吹き飛ばされつつも、グルリと空中で体制を変えてから天井へ足を付け、そのまま天井を足場に急降下し攻撃をするコースに乗る。

 が、オークキングもそれを予測していたのか、落下地点へ魔法を放ち、そこから土の槍が噴き出す。

 

 しかしそれを予測していたジェニファー達二人は、魔力による足場を作り左右に飛び退くと、そのまま勢いを付けて攻撃するのだった。


 ほんの一瞬での出来事に、衰弱しながらも流は魅入ってしまう。

 あれが強者の戦いなのだと。


「壱:さ、古廻はん。アイテムバッグから最後の緑の神速回復薬を出しましたよって、飲んでや」

「ああ、助かる……指もまともに動かせなかったんだ……ありがとう」


 流が回復している間にも、高度な戦闘は続き、流石のオークキングもダメージが増えてくる。

 三人の拳と剣の乱舞が一瞬途切れると、オークキングは巨体らしくない早さで二人に距離をとる。


「ブルハハハハ、流石はアームストロングよ! お前達二人相手では流石に骨が折れる。それに先程は怒りで我を忘れてしまったが、そこの人間と約束をしておったのだ。見事余に一撃を入れられたら引くとな」

「あらん、また逃げるのかしらん?」

「ああ、余は臆病なのでな? それと……貴様。名を何と言う?」


 突如名を問われた流は少し口に含んだ、飲みかけの緑の薬を一気に飲み干してから答える。


「俺は流……古廻流だ」

「ブルハハハ、覚えたぞコマワリナガレ。よくぞ余を打ち負かした、褒めてとらす!」

「ありがとうよ、出来れば二度と会わない事を褒美に欲しいんですがね?」

「ブルハハハ! 本当に愉快な奴よ。ナガレ、それは無理と言うものだ。強者は必ず惹かれ合う、余とアームストロングのようにな。それにそこの黒の鎧の男も同様だろう」

「ジェニファーだけにしてくれないか? 俺もナガレもご遠慮願いたいね」

「本当に面白き奴らよ。さて、外が騒がしくなってきおったな……。アームストロングよ、今回の一件だが、余も知らぬ間に嵌められたようだ。時に、赤髪赤目、高位の魔法を使える者で『魔術師・ザガーム』と言う男……。この名に聞き覚えは?」


 その名前にジェニファーも、ヴァルファルドも表情を強張らせその問いに答える。


「ええ、知っているわよん」

「そいつが人間の名前なら、よく知っている」

「ブルル、無論人間だ。やはりロクでもない奴か?」

「そうねん、元宮廷の筆頭魔法師よん。間違いなくロクでもないわん」

「魔法師? 魔術では無いのか?」

「ああ、そいつは魔法を極め、その先に在る『お伽噺に出る魔術を復活』させようとしている」

「ブルル……。なるほど危険なヤツのようだな。あい分かった、此度の情報に感謝を。それとナガレの天晴な戦いに褒美を取らす」


 そう言うとオークキングは空間から、自分の手に乗る程の多きさの宝箱を出し、それを王笏でコツンと叩くと蓋が開く。


「ナガレよ、先程は約束を反故にするような事をしてすまなんだ。詫びも含めて受け取るがよい、ではまた会おうぞ。実に楽しい時間だったわ! ブルハハハハハ!!」


 オークキングが大声で快活に笑いながら、出て来た箱の中へと消えていく。

 その様子を油断なく見守る四人は、箱の光が収まるまで見守るのだった。





「一体あれは何だったんだ……?」

「ボーイ、あれはね。この世の権力者の一人よん。オークキング……元はオークだったんだろうと思うわん。ミーが出会った時はすでにジェネラルクラスだったから、その前は知らないけどねん」

「ジェニファーの言う通り、この世に数種居る王の一人だ。先日お前が倒したラミアの王女が言っていたそうだが、ラミアも女王に成っているのかもしれない」

「確かに、そう言う事もあるのか……」

「うむ、そして奴らには知恵も力も双方ある。先程のオークキングは、魔物と言うより人間の思考と行動に近いだろう? それだけ高等な存在って事だ。ただの魔物なんて事は断じてない、むしろ人間は奴らに見逃されていると言っても良いだろう」


 その言葉を聞いて流は得心する。もしあの王が少しでも初めから本気であれば、間違いなく死んでいただろうから。


「それはそうと、だ。ナガレ、またやりやがったな?」

「アハン♪ ホントよ~。どうなっているのかしらん? 貴方、ステキすぎるわん」


 そう言うとジェニファーは「パチコン」と、軽めの脳殺ウインクを放つ。


「うぶぁ……やめてくれ。今は死んじゃうからマジで……」

「んま!! 失礼しちゃうわん」

「俺も巻き込まないで欲しいんだが……」


 そうこうしていると、背後に大きな影が迫る。


「すわっ! 敵か!?」

「「ッ!?」」

「……マ!」


「嵐影!! 良かった! 無事に治ったのかよ~。心配させやがってコイツめ!」


 やっと回復した流は、立ち上がって嵐影の顔に抱き着く。嵐影も流のお腹へ鼻を押し付けて甘えているようだった。


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