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134:さようならまで残り五ミリ

 カーズとの和解から数日がたった頃、おかしな客が屋台へ現れる。

 それは閉店準備をしていた頃にやって来た。

 年の頃は三十代半ば程で、趣味の悪い柄のシャツを着ている下品なアクセサリーを身につけた男だった。

 その男は清掃中のテーブル席へと座ると、ニヤニヤしながらメイドの言葉を待つ。


「申し訳ございません、本日は終了致しました」

「いやいや、メイドさん。俺は別に品を買いに来たわけじゃないんだ」

「はぁ、ではどのようなご用件で?」

「なあに、ここの主に用事があってな。主は居るかい?」


 販売車の中で作業をしていた流は、その言葉で中から顔を出す。


「俺がここの店主だが何か?」

「お~お~。噂通りに若いね~♪ それで、今回の落とし前はどう付けてくれるんだい?」

「は? 何を言っているのか分からないんだが?」

「はっはっは。冗談はよしてくれよ? オイ! お前達こっちへ来い!」


 男が怒鳴ると流の屋台からは死角だった場所から、怪我をした男達がぞろぞろと出て来る。


「見覚えは?」

「知らんなぁ、どこのゴミクズだ? ゴミはゴミ箱へ入れるべきだと思うが?」

「て、テメエ!!」

「あ~キミ。煩いから黙ってろ、ワカッタナ?」

「へ、ヘイ……」


 趣味の悪い服の男はチンピラへ睨みを利かせると、流へ向けて椅子へ座り直す。


「おいおい、可哀そうじゃないか? こんなに怪我をさせた相手を忘れるなんてな?」

「さぁ? 何の事かさっぱりだなぁ。あ! 思い出した」

「それは良かった。じゃあコイツ等の治療――」

「確か突風で吹き飛ばされたゴミじゃないか。すまんね~ゴミが風に飛ばされても、いちいち気にしないのでね」


 流は男の話を遮りこう続けた。


「あははは~。おい兄ちゃん。あまり大人を舐めるもんじゃねーぞ?」

「はぁ?」

「あ~あれか? ギルドが守ってくれるから、平気ですとか思ってるんだろう? 甘い、甘いなぁ~大甘だ。そのギルドに支援しているのは誰かって考えたことがあるか?」

「さてね、俺はそんなくだらない事は気にしないのでね。で、何が言いたい? 俺も暇じゃない、とっとと用件を言え」

「だから言っているだろう? 怪我をした奴らへの慰謝料と医療費を請求しに来たわけよ、分かった?」

「あ! そう言う事ね~。よく分かったよ、それで聞きたいんだけどいいか?」

「分かってくれて何よりだ、それで何だ?」

「な~に、簡単な事だ……。今死ぬのと、寿命で死ぬのとどっちがいい?」


 瞬間、流の体から目の前の男には強烈すぎる死の気配が放たれる。

 どんなド素人にも感じられる「ソレ」は、今すぐそこにある死を覚悟させるに十分な迫力だった。


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃッ!?」

「……どうした、それが答えか? なら、シネ――」


 流はゆっくりと美琴を抜刀し、男へと迫る。何時の間にか出来ていたギャラリー達も、あまりの迫力に息を呑み、チンピラ達も声すら出せない緊迫した状況の中――


 メイド達は普通に後片付けをしていた、しかも今日の晩御飯の話をしながら。


「ひゃ、ま、ま、待ってくれ!!」

「……何だ?」

「おおおおれ、俺を殺せば雇い主! そうだ、雇い主のアルマーク商会が黙っていないぞ!!」

「何だそれは? まあいい、それがお前の遺言だな。さようなら目の前の名も知らぬ阿呆、そしてこんにちは、阿呆の居ない素晴らしき世界」


 そう言い放つと、誰にでも見えるような速度で美琴を男の首筋へ一閃する直前――


「待てナガレ!! その屑を斬るのは待ってくれないか!?」


 その言葉でピタリと男の首筋に美琴が触れる直前、刃が止まる。

 が、首筋に触れてもいないが、八センチほどの鋭利な刃物で切ったような、一筋の赤い線が出来、その赤い線からはジワリと血が滲み出る。


「ふぅ~。間に合って良かった」

「バーツさん、一体どうしたんです? 一応この馬鹿には寸止めで、痛い目を見てもらうつもりでしたが」

「実はな……。ちょっと奥のお前の馬車、じゃなく販売車の所で話そうか」


 バーツは一緒に連れて来た職員に野次馬を散らさせ、誰も近寄らない様に警備させてから、流の販売車の前にテーブルを移動させて話す。


「実はな、到着が遅れたから俺は聞いてはいないが、予想するにアイツ等が言っていた事は事実だ。アルマーク商会……と、言っていなかったか?」

「アルマーク商会ですか?」


 先程と変わらぬ姿勢で動かない男の方を見る、すると立ったまま気絶しているようで、メイドが邪魔そうに蹴りを入れていた。


「あぁ、そう言えばバーツさんが来る直前にそんな事を言っていましたね。それがどうしたのです?」

「うむ。実はな、アルマーク商会と言うのは、この国でも有数な力を持つ大商家だ。それが今回の騒動に目を付け、早速妨害工作を仕掛けて来たと言う訳だ」

「今回のと言うとスパイスですか。なるほどね、それで自分達の既得権を脅かされると言うので潰しに掛かったと?」

「流石だな、その通りだ」


 バーツは流の頭の回転の速さに満足気に頷く。


「奴らも香辛料は取り扱っている、もちろん高値でな。その中に当然コショウも入っているが、今回大量にお前が流している情報をいち早く掴んだアルマーク商会は、お前の事を取り込もうと画策している」

「つまり自分の傘下に収めて、うまい汁を吸おうと?」

「ああ、その通りだ。それでチープな手だが、始めに最初は身分を明かさず怪我人を作らせ、それがアルマーク商会の仕入れ人だったと明かし、賠償を請求する。もしそれを力で排除したら、憲兵を動かしお前を拘束するだろう。またそれをしなくても、難癖を付けて排除する」


 流はやれやれと首を振り、ため息交じりに話し始める。


「はぁ、そうなると難癖が問題ですね。となると……既に何かを言って来ました?」

「ははは、その通りだ。驚くぞ? お前がコショウを密売していると言いだした」

「それはまた凄い話ですね」

「だろう?」


 お互い呆れるようにため息を吐く。

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