124:切り裂く者
「おいおい〆。あまりイヂメてやるなよ、せっかく肉を美味しく食べてるのに可哀そうだろう」
「うふふ。それは失礼しました」
それを見ている漢が三人、その様子を見て〝ぺっ〟と唾を吐きつつ、胡散臭そうに見ている。
その人物達が居る後方のテーブルでは、壱と参、そして前鬼が飲んだくれていた。
「フム。こんな娘に魅力を感じるのがおかしいですからな、言うなれば毒婦」
「壱:まったくやで! 良く言っても、ヤヴァイ・怖い・女狐が精々やがな」
「フム。しかし今日は気分が良いですな、コレのおかげで! フォフォフォ」
「壱:せや、コイツは優れもんやからな! どや愚妹め、くやしいかぁ~くやしいかぁ~ん? ブッハハハ」
「壱っちゃんも、参ちゃんも煽りすぎると後が怖いがよ? まぁ見ている分には、こがん面白いものは無いっちゃ。ガッハッハッハ」
そう言うと三人は爆笑して、前鬼が持って来た秘蔵の日本酒をがぶ飲みする。
だが三人を見つめる……いや、射殺す視線で睨みつける恐ろしいモフモフがいた。
「兄上方……そこのコンロで焼かれるか、私に焼かれるか、溶鉱炉に叩き落されるか、活火山に叩き落されるか、そろそろ選ぶ時が来ましたよ?」
「「「焼かれる未来しかない!?」」」
そんな三人のテーブルの回りには狸型の超強力な結界が張ってあり、〆が『開けなさい!』とお怒りになっているようだったが、いつもの事なので気にしないでキルト達の元へと行く。
「おーい、キルト達。今日は無礼講だから気にしないで気楽に楽しめよ~?」
「は、ありがたく」
キルト達とも話したかった流は、その後夜朔を連れて別のテーブルで話す事にする。
これまでの経緯や、そして幽霊屋敷に踏み込んだ時の事を聞きながら、流はキルト達が屋敷へ攻め込んで来た時の事を思い出す。
「――そっかそれは大変だったなぁ。しかしお前らも運がいいのか悪いのか、よく生き残ったなぁ」
「ええホントですよ、キルトさんが私達を止めてくれなかったら、間違いなくシメ様に地獄へと送られていたでしょうからね」
「あ、それ俺も見たぞ? あれは酷いよな。何の悪夢かと思ったぞ」
「「「私達の口からは何とも……」」」
ふと〆の方を見ると、某人型決戦兵器のように結界に両手を突っ込み、絶対的な恐怖を拒絶する領域を切り裂こうとしている。
それを見た三人は悲痛な叫びで「ちょ、やめーやあああ!」とか「フムウウウッ! 出力最大!」やら「ギャー!? 一面に警報が出とるがよ! だから言ったちゃのに!!」とか言っていたが気にしないでおいた。
「そう言えば、お前達と一緒に来た侵入者はどうした?」
「御館様へ報告は上がっていませんか? あいつらの殆どは使えない馬鹿が多かったので、憲兵に引き取らせました」
「そうなのか。で、残りは?」
「使えそうなのは別の建物で教育中です。今後我らの下部組織として諜報や脅威の排除を担当する予定です」
(おぉぅ。そんな組織まで俺の物に、ますます厨二病がはかどってしまうッ!!)
「お館様?」
「あ、ああすなまい。思わず病について考えていた。まあ焦らずやってくれよ、今はまだ脅威は……。ああ、うん。脅威だらけだな。はぁ」
「お任せください。と、言える程実力は今はありませんが、今後確実に強くなるのでご期待ください」
「ああ期待してるぞ? そして命は大事にするんだぞ? 死んだら終わりだし、せっかく知り合った顔が居なくなるのは寂しいからな」
「こんな元凶賊と言われた我らに何とお優しい……」
「それにこれまで迷惑をかけて来た人達に、償いをするにもいいだろうしな」
キルト達はこれまで生まれた時から、スラムの路地裏の殺伐とした世界で生きて来た。
文字通り生きるか死ぬかの世界。油断すれば殺され、他者を殺さなければ自分が死ぬと言う、裏の世界で生まれ育った男女五人。
そんな人生で初めてとも言える、温かい言葉を主人から掛けられた事に心底感じ入る。
他人は基本的に信用しないし、同僚も敵として認識していた、荒んだ心を持つ物ばかりだったのだから。
「俺もこの世界の人間だったら、お前達を許せなかったかもしれない。が、お前達も知っているように俺は違う世界から来た。だからそのせいもあるのだろうな」
「ええ、聞きましたが今でも信じられませんよ。お館様が違う世界の住人だなんて……」
その後、後鬼も合流したので、キルト達に元世界の話を色々してやると、大変盛り上がった。
そんな楽し気な会話に、流はエールを片手に話に花が咲く。
楽し気な会話を聞きながら、後鬼は狂気に襲われた三人組を見る。
「はぁ~。困った男共だねぇ~」
もうすぐ破れるだろう結界を見ながら、後鬼は呆れたようにぽつりと呟く。
どこかで〝パキャアアン〟と言う何かが壊れた音がして、その後少しの間の後、海辺で巨大な炎が巻き上がったようだが、気のせいだと思う事にして流はエールを飲み干すのだった。
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