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117:大盤振る舞い

「このまま少々お待ちを…………。では、オープーン!!」


 流は内部から蓋型のシャッターを開けると、屋根が出来上がる。

 途端、さきほどまで漏れ出ていた、かすかなスパイスの香が辺りに広がりだす。

 その様子に思わずバーツ達だけではなく、野次馬も歓声を上げる。


『『『おおおおおお』』』


「こ、これは凄いな! 高級な雰囲気がある店構えだ。屋台とは思えん」

「それに見て下さいよギルドマスター。魔具の照明が実にイイ感じで奥の品まで照らしていますよ」

「こいつはスゲーぜナガレ! このアイディアだけでも驚くぞ」

「だろう? だがこいつの力はここからだ、たのむ料理長!」

「承知致しました。皆さん後ろへとお回り下さい」

「後ろだと? 何があるって言うんだ、それにこの香は先日ナガレの屋敷で食べた魚料理の……」

「行ってみましょう! ファンさんも早く!」

「お、おう。何があるんだ?」


 野次馬も遠巻きに後ろへと移動すると、そこでは料理長が腕を振るって料理をしていた。


「これは……」

「まさかここでスパイス料理を!?」

「考えやがったな!」

「ふふふ、どうだファン。スゲーだろう?」

「ああ、驚いた。それで何が食べれるんだ?」

「ちょっと待っていてくれ」


 そう言うと流は折り畳み式のテーブルと椅子を出し、三人を座らせる。

 屋台から漂う何とも言えない香辛料の香が辺りを満たし始めると、バーツ達始め野次馬も唾を飲み込む。

 少しすると料理長が盛り付けた料理が出来たので、流はテーブルへと料理を並べる。


「バーツさん、まずは食べてみてください。見た目は不気味ですが味は保証しますよ?」

「う、うむ。見た目が少しアレだが食欲を猛烈に掻き立てられる香だ。どれ……」


 その様子をメリサとファンは凝視し、野次馬も見守る。


「こ、これは!! 美味いぞ、美味すぎる! コクがあって肉がスプーンで救うだけで崩れる程柔らかい、それに野菜の味がまた最高だ。見た事も無い穀物との相性もまたいい! この白くて柔らかい野菜が全体を引き立てているのか……美味すぎる!」


 大事な事だから二度言いましたとばかりに、バーツは美味いを連呼する。


「お前達も食ってみろ、驚く美味さだぞ?」

「じゃあ早速……ッウ!? 何ですかコレ、見た目はアレですけど、止まらない美味しさです! それにこの玉ねぎのトロミがもう、もうこのスパイスの味と香りがぁ~」

「メリサまで!? お前達よくその見た目で食べる気になるな。まぁ俺も食べるけど……って!? なんだこれは!! このトロミのあるアレと酷似した物体がここまで美味いとは! しかも俺が大嫌いなニンジンまでスゲー美味いぞこれ!」


 三人は周囲の目などおかまいなしにスプーンを進める。

 その様子に野次馬はおろか、騒ぎを聞きつけたギルドの職員まで出てくる始末だった。


「ははは、こんなに喜んでくれるとは思わなかったよ。これはな、『カレーライス』って言う食べ物だ。白い穀物は米と言う。そしてカレーの中に入っているゴロっとした野菜はジャガイモだ」

「こんな料理があったとは……先日お前の屋敷で食べた料理には無かったようだが?」

「ああ、それはですね、これだけでおなか一杯になるからですよ。あの時はスパイスの可能性を知って欲しかったので、あえて色々な食材で作りました」

「なるほど、理にかなっておる。この販売車は水回りはどうなっているんだ?」

「タンクがあるので、そこから魔具を使い水を上げています」

「なるほど、これは凄い物だな(ここではこれ以上は危険だな)」


 カレーライスの美味さと、販売車の出来に関心していた三人だったが、ここで予想外の事態になる。

 周囲で見ていた者達が、もう我慢が出来ずに自分達もと騒ぎ出す。


「ギルドマスター! 俺達にも食わせてくれよ! 金なら出すから頼む!!」

「もう我慢出来ねー、こんなの見せられたら死にそうだよ~」

「お願いします、あたしにも食べさせてください!!」

「お、おい。お前達まで。だがこれは貴重な品でな、金貨でも無いと食べれないぞ?」

「「「そんなぁ~」」」


 がっかりする野次馬と職員達。

 それを見た流は、ニヤリと口角を上げるとバーツへ提案する。


「バーツさん、ここは宣伝も兼ねてあるだけ無料で提供したいのですが、いいですかね?」

「何だと! こんな高価な物を無料でだと? いいのかナガレ?」

「ええ、今回は特別と言う事で。ただみんな聞いてくれ、この料理が美味かったと宣伝してくれよな。そして俺は香辛料の店を開く! この屋台を見たら是非買いに来てくれ、びっくりするくらい安くするぞ!」

「何だって!! 香辛料の店だと?」

「だからさっきからいい香りがしていたのか」

「嘘! そんな高価な物がタダで食べれるの!?」

「ああ、だから喧嘩しないで食べろよ?」


「「「わああああああああ」」」


 突如野次馬達が歓声を上げ、一気に群がる販売車の後方では、流が順番にカレーライスを提供する。

 大混乱になるかと思えば、ギルドの職員達が客達を整理して、列をはみ出さない様にしている。

 そんな様子を離れた場所から見ている三人は、流の狙いを予想する。


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