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111:恐怖の幽霊屋敷~再び

【御礼】あなたのお陰で、評価とブックマークがUPしました、本当にありがとうございます!

「壱:何を言ってるんや、この化け狐娘は。頭ぁグズグズに沸いとるんちゃうか」

「フム。鏡を見てから物を言って欲しいですな。頬を染め瞳を潤ませてるとか、不気味と言うか、不気味で気持ち悪いほど、不気味ですな」

「ナニカ、イッタカシラ?」


 瞬間二人が氷に包まれると、そのまま氷柱になり閉じ込められる。


「悪は滅びました。さ、古廻様中へ行きましょう。嵐影もおいでなさい」

「……マ」

「お前が悪に見えるが……。まぁなんだ、お前らの死は無駄にしないぞ……さらば、壱と参ともよ

「……マァ」

「おっとそうだったな、行こうぜ。しかしお前凄いなぁ、〆のあの迫力に全く動じないとは」


 そんな話をしつつ、流が執務室へと入るのを柱の陰から見守る一人の影があった。

 影がその姿を現すと、氷柱に丁寧に触れて優しく撫でる。


「御可哀そうに……。少しでも溶けるように日向へ移動しましょうか。おや、これは」


 流達が去った後にセバスが現れ、氷柱を移動させようと柱の上部ふと見る。そこには瑞々しい果物が、二つ乗っていたのだった。



「――なるほど、では本日お客様がおいでになるのですか」

「ああ、セバスにも言ったがプレゼントに何が良いと思う?」

「そうですね……。そのバーツなる者には万年筆等はいかがでしょう?」

「お~それはいいな。事務仕事が多い人だし、ちょっと良いものなら喜ぶだろう」

「ご友人の方には金属製のタンブラー等はいかがでしょうか? 高級な品も良いですが、武骨な方とお見受けしたので、温度が変わりにくい物など良いかと」

「それもいいな! ファンならあちこちへ持って行って使いそうだし、めったな事では壊れないしな」

「最後は女性ですか……。別に何も差し上げなくてもよいのでは?」


 〆は少しツンとした雰囲気になると、頬を膨らませて流れを見る。

 よく見ると少し涙目のようだったが、流にはその理由は全く分からなかった。


「おいおい、そう怒るなよ。そいつにも世話になっているから選んでくれよな?」

「そうですか……。それでは髪飾りなどはいかがでしょうか。素材を厳選した鼈甲べっこうとプラチナで装飾した花をモチーフにした物などをご用意いたしましょうか?」

「それは凄そうだな。じゃあそれを頼む。セバスには俺から伝えとくから用意してきてくれ」

「承知しました……古廻様。その、あまりつまみ食いはいけませんよ?」

「? まぁ気をつけるよ?」


 〆は「もう、仕方ありませんね」と言い残し、朧気に姿を消す。

 その様子に首を傾げながらも、流は約束の時間まで空いた予定を少し考えてから行動に移す。


「さて、俺はやる事無くなったから、気合入れて訓練でもするか。美琴今日も頼むぞ!」

『…………』

「よし、じゃあアリスが寂しがってたから、今日は地下でやるか」


 そう言うと流は、時間が来るまで地下室で特訓をしたのだった。



◇◇◇



 

 ――この時期の夜は遅い。


 領主の館の陰に日が落ちる頃、一台の豪華では無いが、立派な馬車がお屋敷街へと滑り込む。

 その車内には商業ギルドの主であるバーツと、その部下のメリサ。そして流の友人であるファンが乗っていた。


 バーツは羽織っている物が膝まである、貴族風の落ち着いた藍色の衣服を着用しており、ファンも同じようなデザインの、貴族風な深いエメラルドグリーンの服を着ている。

 メリサに至っては何時ものスーツ姿ではなく、こちらも美しい薄い紫を基調とした品が良いドレスで、緊張するように胸に手を当てていた。


「ふぅ。緊張しちゃいますね、私はまだ幽霊が居た頃に行ったきりですから」

「本当にどうなっているのか楽しみだな、俺も以前行った事があるが、幽霊に囲まれて逃げ帰って来たわ」


 ヘタレな過去を豪快に笑い飛ばすバーツと、楽しみに心躍るメリサ。


「いや~幽霊が居た頃は半端じゃなかったからなぁ。俺も冒険者が幽霊を討滅するってんで、聖水やらの補給物資を積んで、庭に入った途端囲まれて冷や汗をかいたもんだ」

「それをよくもまぁナガレは討滅したものだな。本当に凄い男だ」

「ナガレ様はお強くて、商才もあって最高ですよね! しかもかっこいいし……」

「ん? 最後何か言ったか?」

「い、いえ何も!」

「お? そろそろ流の屋敷が見えて来たぜ」


 車窓から顔を覗かせるファンは、流の屋敷へ到着した事を二人に伝える。

 屋敷の前に来ると、自動で門が開閉し、馬車はそのまま奥へと進む。

 やがて馬車が止まると、御者が馬車のドアを開け、そこには使用人達が勢ぞろいで三人を迎える。


「「「いらっしゃいませお客様」」」


「ほぉ。ナガレは何時の間にこんな使用人達を」

「凄いお出迎えですね、一糸乱れぬとはこう言う事を言うんでしょうね」

「だろう? 俺も度肝を抜かれたさ」


 そんな話をしていると奥の扉が開き、幽霊屋敷の主がやって来る。

 流は子供のような笑顔で「実に楽しそう」に、両手を広げながら三人を出迎えた。

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