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102:開放的なお食事処で楽しもう

 運ばれてくる料理は、どれも見たことが無い食材で満たされていた。

 最初に運ばれて来た物は、赤色のスープで染色したんじゃないかと思うような、色鮮やかな野菜が入っている。


「これはまた凄い色だな。現地の野菜か?」


 その質問にセバスが気品ある仕草で一礼をし、その後説明を始める。


「そちらは現地の物で色味茸と申しまして、流星の降る夜に生えるキノコとなっています。食感は元世界のエリンギに近く、香は白トリュフが熟成したような芳醇な香りが特徴です」

「何だか凄そうだな、じゃあ早速……。これは凄い! 本当に濃厚な白トリュフみたいな香がするが、こっちの方が舌に絡みつく美味さがある。これは食べた事のない美味しさだな!」


 そんな流の様子を微笑ましく見ている三人。壱に至っては落書きのような顔が綻んでいた。


「うん、お前達も一緒に食べようぜ? 俺一人でこんな美味い物を食べるのも勿体ない」

「いえいえ、そんな古廻様と一緒になんて」

「フム。そうですな、我らは仕える者ですから」

「壱:あ~。ダメだなお前らは。違うって言うんや、古廻はんはご一緒に僕らと食べたいと言うてくれてるんやから、ここはご相伴にあずかろうやん」

「ははは、流石壱だな。せっかくの美味い飯だ、一緒に食べようぜ?」

「もう兄上ったら……でもそう言う事なら、いただきましょうか」

「フム。ですな。セバス、すまないが私達のも頼む」

「承知しました」


 その後に来たのは魚料理で、こちらも見た目が変わっていた。

 マヒノと言う魚で赤身が特徴だが、それが特徴がありすぎる。

 まず異様に「美しい程の生」であり、その生身のような赤さは「太陽に透かしたルビーのよう」なのだから。


「こちらはこちらの世界で産で、マヒノと言う赤身の魚を蒸した後に、この世界では出汁と言う物がありませんので、日本から取り寄せた羅臼昆布とトビウオ節から取ったものを、こちらの世界で一般的なクースと呼ばれる野菜で巻いたゼリー状のソースでお召し上がりください」


 赤身でも熱を通すと普通は少し白くなる物も多いが、この魚はまるで生のような赤身と照りだった。


「わぁ、これは美味しいですね。昆布の風味が心地よく、トビ節との調和が見事です」

「フム。さらにこの野菜、クースですか? これもまた異世界の食材ですが、魚の味を濃厚にさせるようですね」

「壱:ほんまや、魚だけだと淡泊な味なのに、全部絡めると濃厚な味わいになるなぁ」

「本当だなぁ。この世界の食材って、合わせると化けるのが多いのか?」


 壱はどうやって食べているのか、折紙のクチバシでパクパク食べている。しかしあちこちが汚れているようだ。

 それらを食べ終ると、メイン料理が運ばれてくる。


「メインは養殖オークのステーキです。農場管理者から直接仕入れているので、新鮮でジューシーさがウリとの事ですので、是非お試しください」


 その一言で流の顔が曇る。


「ちょっと待て……オークって養殖出来るのか? って言うか、オークってやっぱり食べるのかよ!?」

「はいお館様。この世界では一般的な食材のようです。また養殖と言うのは、オークの小さい集落を発見した冒険者が、逃げ出さない様にオークを囲み、その隙に養豚家が周りに魔法で壁を作り、その中で飼育されているようです」

「すげぇ……命懸の養豚かよ……」


 オークが人をさらい、悪逆非道な行いをするのに人は眉を顰める。

 しかし人も似たような事をしていると言う現実を知り、異世界の逞しさに絶句していると、アツアツのステーキがテーブルへ並ぶ。


「まぁ食べてみるかな……ッ!?」

「これはッーー!?」

「フムゥーー!?」

「壱:うっまーー!?」


 驚く四人を見てセバスは満足気に、ニコリと微笑む。


「元世界の豚肉は生食は危険とされていますが、このオークは生でも食べれるのです。見た目に反して綺麗な肉体らしく、細菌や寄生虫が全く居ないようです」


 ナイフを入れると、軽く弾力があり、そのあと〝プリッ〟と弾けるように切れる。

 ただ不思議な事があった。そのミデァムレアに焼かれたオークのステーキは切っても「肉汁が出ない」と言う一見不味そうな感じだったが、しかし……。


「なんだこれは、噛んだ瞬間に肉汁が肉から弾け飛んだぞ!」

「まるでジューシーな果物をほおばったかのよう……」

「ふむぅ~。ワイルドな料理に見えますが、弾ける肉汁と、柑橘系のソースがまたなんとも上品にまとまっている」

「壱:ちょい待ちぃ~な! つついた瞬間『肉汁ぶしゃ~』ってぶっかかったやん!? でもウマー!」


 流達は肉汁の猛攻と戦い、返り血にくじるまみれになりながらも完食する。


「何かあれだ……すっごい食べきった感がある……」

「ええ、本当ですね……世の中にこんな食べ物があったなんて……」

「フム。特に最後の肉汁が弾ける調理法には驚きましたなぁ……」

「壱:まったくや、お陰で今火い着いたら勢いよく燃えそうやん……」


 全員が満足気に空を眺めているのを確認したセバスは、会心のタイミングで最後のデザートを運ばせる。






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