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101:魔改造築ビフォーアフター

「フム。どうでしたか兄上、流様のご様子は?」

「壱:せやな……これまでの戦闘の経験から、かなりの腕になっとるね。ただ、今回おうた蛇の化け物なんやけど、美こっちゃんの攻撃が弾かれると言う事があったんや」

「フム、それはまた……。まだ流様の剣術は未熟とは言え、あの美琴の妖力を込めた斬撃が効かないとなると、あの方に早く来て欲しいものですなぁ」

「壱:せやなぁ。早よう雷蔵様に来ていただかないと、万が一って事もあるさかいな」


 朝日が差し込み始めた窓を見ながら、二人は雷蔵の到着を心待ちにする。


「それと憚り者が、こちらの動きに気が付いている感じはありますかな?」

「壱:いや、今の所は無いと思いたいんやが、あのクソの第一目標は異怪骨董やさんの殲滅、次に古廻家の断絶やさかいな」

「フム。やはりここの防衛拠点としての価値が、ますます上がりそうですな」

「壱:せやな……この場所と言うか、この街の霊的守護力は凄まじいからな」

「元世界からの資材搬入の上限が決まっている以上、中々進みませんが早急に対応するとしましょう」

「壱:ああ頼むで参ちゃん。後はもう一人の愚妹がどう動くかやな……」


 その言葉にピクリと参は眉を潜めるが、そのまま黙って窓の外を眺めるのだった。



◇◇◇



 目が覚めると遮光したカーテンからフワリと風が舞い込み、実に気持ちよい昼だった。


「寝たな……さて、今日は何をしようかな。まずは美琴の手入れだな!」

 

 手入れと言っても特に何もする事が無い美琴は、流の感謝の気持ちとして、タオルで拭くのが日課になっている。


「しかし昨日の蛇娘には驚いたな。美琴の斬撃が通じないとは思いもしなかったな」

『…………』

「そうだな、妖力を上手く込めれば斬れたはずだよな。もっと上手く扱わないとな」


 暫く美琴と妖力の込め方、業との繋ぎ方などを話して食事をするために、二階のホールへと向かう。


 どうやったのかは不明だが短期間に二階の数部屋をぶち抜き、そこへ食事処を作ったと言う報告があった。

 今回その場所を利用するのは初めての事なので、少し楽しみな流れである。

 部屋の前に付くと、豪華な木製の大きな扉が自動で開き、使用人達と異怪骨董やさんの面々が揃っていた。

 入室するなり全員の挨拶が響く。


「お? 全員揃っているな。おお……凄いなこれ。部屋の半分が外に露出しているのか?」


 改装された部屋は一階の部分も延長され、その上に部屋を作ったようで部屋の半分程がドーム状のガラス張りの開放的な空間になっていた。


「フム。如何でしょうか? 私の使役する者達が一晩で作り上げたにしては良い出来かと」

「一晩!? そ、そう言えばそうだよな、時間的に……て言うか、どんどん豪華になって行って怖いんだが。と言うか、材料はどうやって用意したんだ?」

「フム。それはこちらの材料を兄上の力で加工した物や、異怪骨董やさんの道具で何とでも」

「そ、そうか。無理しないようにな。それとふと思ったんだが、道具は持ち込めるのか?」

「フム。この手の道具に関しては、さほど制限もありませんからな」

 

 自分の知らない間に、色々改築されている屋敷に少し引き気味の流である。

 参と話しながら用意された席へ向かうと、その隣には〆が嬉しそうに微笑んでいるのが見える。


「おはようございます、古廻様。愚兄から聞きましたが、美琴の攻撃を弾くような鱗を持つ敵が現れたんですか?」

「あぁ、そうなんだよ。もっとも魔法で強化していたらしく、死んだ後はすんなり切断出来たんだがな」


 〆は話ながらも流の席を引き、そこへ座らせると自分も隣に座る。


「魔法……ですか。この世界ではかなりの力があるようですね」

「ああ。昨日聞いたばかりだが、この世界の水道や照明を始め、全て魔法の力で動いているらしい。特に魔具と呼ばれる物は、魔物から取れる魔核と言われる物が動力らしいな」


 そう言うと流はアイテムバッグから魔核を二つ取り出す。


「これがその魔核だ。売却も考えたが、何かに使えるかもと思って持ってきたんだ。検討してみてくれ」

「フム。一つは私がお預かりしましょう。もう一つは妹が」

「ええそうですね。私も何かに使えないか考えてみましょう」

「あぁそうだ。このアイテムバッグだが、容量が三十キロしか入らないんだよ。しかも凄い高額だろ? もっと手軽に大容量の収納出来る物は無いのかな?」


 〆は少し考えてから、あるアイテムに思い至る。


「そう……ですね……。あ、そう言えば『うわばみ瓢箪ひょうたん』と言う物があります。大酒呑みのうわばみが、付喪神化して瓢箪に憑依した物です。ただ、いくらでも物は入るのですが、中々思う物が出て来ないのですよ。なので現在はお蔵入りしているのです」

「そうなのか……」


 以前バーツよりアイテムボックスの存在も聞いていたが、高額なのと「ボックス」と言う単語から、かなりの大きさだと思われ携帯性が悪いと言う感じがする。


「もし出来ればだけど、その魔核やこっちの魔法を使って、その瓢箪を改造出来たりしないか?」


 その問いに〆達は驚き、その可能性を考え出す。


「壱:流石古廻はんや! 着眼点がちゃいますなぁ」

「フム。これはいけるかもしれませんぞ?」

「うふふ、可能性が広がりますね。まだ魔法が未知な所も多いので、今後研究が必要ですが、十分に成功の可能性はあるかと思いますよ」


 三人が色々な改造方法に思案しているのを眺めながら、昼食が運び込まれて来るのを楽しみに見ている流だった。



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