底辺だって良いじゃない!
「おらー、3番台出ないわよー!」
「おいそろそろ帰るぞ」
ガンガンとパチンコ台を叩く彼女に俺は声を掛ける。
「ちょ、ちょちょちょ待って~、今月3万負けてるのー! 取り返さないと帰れないー!」
「吸い取られるだけだ、さっさと終わらせろこのパチンカスが」
俺は彼女――大空 十和子の頭をドツく。
「うぇ~~~ん、後生だからあと1回!」
「死ね」
彼女の背を蹴飛ばす。いや、勿論軽くだけど。
「ひ~ん、このDV男! ヒモ! ごく潰しー!」
「DVでもねえしお前、後半全部ブーメランだかんな? とっとと働けクソニート」
そう、この女、逆ヒモっつうか、俺んちの居候である。
日銭も稼がずこうして俺の金でパチンコをするクズ女なのだ。
「あーあ、万次郎くんのせいで今日も赤字だぁ~!」
「どの口がそれ言えんだよこのアホ」
パァンパァンパァンと3発軽く往復ビンタを食らわせて、本日のパチンカスは強制終了。
「はー怒鳴ったらお腹空いた。ご飯食べよご飯」
「俺の金でな」
全く、どーしよーもねえ女だ。
「今日何食べるー?」
「お前その台詞だけだと彼女が何か作ってくれるみてーに聞こえっからムカつくな」
なのになんで付き合ってるのか。
――まぁ、うん。察してくれ。
「へへへぇ、あたしの手料理食べたいー? 食べたいー?」
「黒コゲのデス料理なんざ誰が食うかボケ」
俺は辛辣に言い放つ。コイツの料理、食えたもんじゃねーからな。
それから尋ねる。いつもの問答。
「つか、マジでお前働く気ないん?」
「働いたら負けって言うじゃん」
それを言って良いのは、某ニートアイドルと、かつて話題になった父つぁん坊やだけだ。
お前みたいなクソニートパチンカス女は、きちんと労働にいそしめ。
「え~やだ~~~働くと疲れる~~~」
「誰だってそうして生きてんだよ」
全く、もう。
「あたしだって働こうと頑張ったけど~~~、世の中と政治と野球が悪いの~~~」
「野球は悪くねーよ。飲み会で話しちゃいけない話題の事になってんじゃねーか」
どうして、こう。
「分かった、じゃあ働く! 自宅警備する!」
「世の中ではそれを引きこもりってんだ、覚えとけ」
コイツには、甘やかしちまうんだろうな。
「い~も~ん、万次郎くんがあたしを捨てるまではず~~~~っとニートするも~~~~ん」
もにゅん。
「う」
その様子に十和子がニタリといやらしい笑いを浮かべる。
「はっはっは、生まれ持った良い顔とEカップは役に立つなあ」
「てめぇ……この底辺女が!」
全く、本当に、男って奴も、どうしようもない。
「底辺だっていいじゃな~い、こうして楽しく話せていれば、それで人生は上々だよ~」
「よくねーし、自分の人生を謳歌してるトコ悪いが、その人生は俺に依存し過ぎなんだからな」
そう言うと急に十和子は真剣な顔になる。
「大丈夫。依存してるのは自覚してるから」
「なお悪い」
言いつつ、許してしまう俺も同罪かね?
「まぁそのうち万次郎くんには返すよ~、倍返しで!」
「期待してねえけど、自分の食い扶持くらいはどーにかしてくれ」
そうして今日も俺たちは、クソみたいな会話を繰り広げつつ食事に行くのだった。
(終わり)
ども0024です。
なろうでの短編はちょっとぶり、アホな会話劇を思いついたので投げときます。
どうしようもないクズ女って書いてて楽しいな……。
彼氏もなんかこう、駄目人間感としては同類。
ダメ人間同士の愚かだけどなんか楽しい生き様が好きです。




