筆箱さんと鉛筆さん
筆箱さんは幸せだ
たくさんの文具を抱き締められるから。
ぎゅーっとぎゅーっと
抱き締める。自分の腕から離さないように。
でも、やっぱり
今回もダメだった。
筆箱さんは泣いた。
また鉛筆さんが死んじゃったから。
誰にもわからないように一人で泣く
何故なら、鉛筆さんの死と同時に新しい仲間もやってくるから。
「初めまして」
新しい鉛筆さんは照れ臭そうに言った。
初めまして、安心させるかのように筆箱さんは笑う。そして、鉛筆さんと筆箱さんは仲良くなる。
仲良くなればなるほど筆箱さんは不安になる。時間が経てば経つほど、鉛筆さんの体は小さくなる。
ある時、とうとう筆箱さんは泣いてしまった。
「どうしたの」
寂しいんだ、君が居なくなるのが、とても寂しいんだ。
少し悲しそうな顔をしながら、でも鉛筆さんは笑う。
「寂しい思いをさせてごめんね」
でも、と言葉を続けた
「私は幸せだわ。
あなたという友達が出来て幸せ。
それにね、
私ね、大切に使って貰ってるの。
たくさんたくさん使って貰ってるの。
必要とされることは嬉しいことだわ。」
鉛筆さんは満足気に少し自慢気に語る。
その様子があまりにも幸せそうで、
筆箱さんはやっぱり少し悲し気に、でも笑った。
《君の幸せを理解することは僕には出来ないけど僕が君の幸せの一因になれたことは誇らしいな》