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菜食主義のライオン(2)


 そうか、それは良かった、そう言ってトニー氏は隠された秘密の箱をゆっくりと開けるみたいにして、重たい沈黙の後に口を開いた。


 「私がそのライオンに出会う事になったのは、ライオンの生態の観察をする事になったのがキッカケだった。それ以前は不動産屋を経営してたんだけどね、なんだか飽きてしまって、しばらくの間、何かの趣味に没頭したくなったんだ唐突に。というのも私の不動産屋はそこそこ成功していてね、元々人脈があった事が理由でかなりの収入を得ていた。

 そこでライオンの生態を観察する、という事を思いついたんだ。しかし、仕事をそのまま放棄する訳にはいかない。趣味に没頭する時間を作るなら、代わりに経営を任せられる人を探さなくてはいけない。でも、2、3年だけお願いしたい、なんて事は普通の人には頼めない。私は考えた末、弟である次男に経営を頼む事にした。

 次男は、普段こそとぼけたような顔してあまり頼りなさげに見えるけど、頭の方は悪くない。彼は三兄弟の真ん中なんだ。真ん中に育った人間は、共通して世渡り上手だから経営に向いている。よく言うじゃないか、末っ子は器用、長男は頭が切れる、真ん中は気遣い上手ってね。だから次男ならむしろ私よりも経営を上手くやれると思ったんだ。

 実際、彼は上手く仕事をこなしたよ、大したもんだった。不動産屋ってのはね、客との付き合いが一番大事なんだ。物件もかなり高い所を扱うわけだから、扱うその人間がしっかりしていないとまず取り合ってもらえない。その点を彼はよく心得ていた。相談にきた客に対して、適切な加減で物腰を低くして接待したし、どんな些細なことでも記憶して小まめに連絡をとった。客の好感を得られれば、たったそれだけで物件は売れてしまうんだ。実際に売り上げは上々だった。私は安心して、アフリカ行きのパスポートをとったよ。

 南アフリカに到着してから、あらかじめ予約しておいたガイドと合流し、2、3の注意点だけ教わってから州にあるハウスへ車で直行した。アフリカは何しろ日差しが強くて、広かった。車の中に居ても、なんというかな、刺さるんだよ、日光が顔に刺さるように当たる。それにとても広々としていた。日本や韓国なんかは建物が多いだろう?人口密度が高くなると、それに応じて容れ物の数も増えるからね。しかしアフリカには遮るものはほとんど無かった。道路の幅は広いし、信号なんてそれこそ殆どない。遠くの地平線がずっと見えていて、時々車が止まってるんじゃないかと思えたりしたりね。

 ハウスまではまるまる半日かかった。車を降りてガイドと別れ、カメラやその他の生活用品をすべて車からおろしハウスのベッドに腰をおろした。新しい住居に移動すると落ち着かないものだけど、初めての国だけあって特にその感覚が顕著だった。音がまるでないんだ。普通は

 

 

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