第4話『はうつー魔法』
そこには、シベリアンハスキーの子供をデフォルメしたらこんなのかなぁ……という感じの、身長50センチぐらい、白と青、灰色で構成されている毛並みが非常に綺麗な精霊がいた。(さっきまで、見えなかったものが見えるようになったんだから、これは精霊なはずだ)
あと、シベリアンハスキーが何なのかわからない方はググることをオススメする。
「やあ、カエデくん」
話しかけてきやがった。
「こんにちは。ええと、お名前は……?」
「僕はチー。ジーチ・チー・ アルタール」
長い名前だな。チーってチワワか?
「うん、チワワって言うのは何なのかわからないけど、覚えやすいようにしてくれればいいよ」
思わず叫ぶ
「お前! おれの考えていることが分かるのか?」
「そりゃもちろん。カエデが僕を見ている以上、君の意識は僕の意識と同期しているんだからね」
ほう、面白いぞ。……うへへw
「……何が面白いの? おい! 何を想像しているんだい君は!
」
……何を想像していたかは、みなさんの豊かな想像力に委ねることにする。ただ、俺はチーの顔を真っ赤にしてやったことだけはヒントにしておいてやろう。
「お兄ちゃん。変なことをしていないで。隣の町は危機的状況なんだから」
「はいはい、分かりましたよ。精霊が見えるようになって少しはしゃいじゃったんだよ」
「……まあ、いいわ。じいのところへ帰りましょう」
「えー。また、あの寒いところを通るのかよ」
「不満言わないの。行くわよ」
俺と瑠璃とチーは、準備やらで先に帰ったシャルルの家を目指した。その間、瑠璃とチーが魔法について教えてくれた。
「ねえ、カエデ。君は魔法を使ったことがあるかい?」
「いや、ねーよ」
「じゃあ、呪術は? 呪文とか、魔法陣とか使うやつ」
「それもない」
すると、瑠璃が言う。
「チー。お兄ちゃんはね。魔法初心者なの」
「なるほどね。それじゃあ、今から僕が基礎知識を教えるね」
「ああ、頼む」
「じゃあ、いくよ。まず、呪術かな。呪術というのは、魔法陣とか呪文とか、「形」を使うことによって発動する魔法のことなんだ。で、魔法っていうのは、精霊の力を借りたうえで「祈る」ことによって発動する魔法のことだよ」
「つまりね、魔法と呪術というのは手順が違うだけで、全く同じものなの」
ふーん。なるほど。
「じゃあ、俺は祈ればいいわけだな?」
「うん、そうだよ。カエデがある程度具体的なことを祈れば、僕がそれを実行するんだ。道具みたいなものだと思ってくれたらいいよ」
ふと、さっきも見た花を見つけた。一部が凹んでいて、元気が無いようだった。森の中である。何かの生き物に踏まれたのだろう。
「丁度いいや。この花達に何か祈ってみてよ」
俺の見ているものは何でも見ている。という気味の悪い精霊チーが言った。
俺は治癒の魔法がうまく使えるらしいから、踏まれた花を元に戻るように。花達の元気な姿を想像し、祈った。
「じゃあ行くよ!」
チーがそう言うと、
「おぉっ!」
踏まれた花達が天を伺うように起きあがったのだ。
「魔法っていうのはこうやるんだよ。結構簡単でしょ?」
うん、テレビのチャンネルを変えるぐらい簡単だ。――もしも、精霊と一緒に散歩をしているなら道端の雑草か何かに試してみてほしい。
「あ、でも気をつけてね。訓練しないとあんまり多くの回数は使えないからね」
瑠璃によると、MP的なシステムらしい。
帰り道、何度が魔法を使い、魔法について教わり、シャルルの家に到着した。
太陽がその雄大な姿を半分ほど隠していた。村は真っ赤に染まっていた。
「帰ってきましたか」
「あぁ、バッチリ見えるようになってきたぜ」
「そうですか。食事の準備ができております。今日はしっかりとお休みください」
とシャルル。
「出発は明日の朝でいいわよね?」
「はい、馬車の準備は整っております」
お久しぶりです。不定期的に投稿することにします。あんなに簡単に魔法が使えたらいいのに……