第2話『大きい机と小さい椅子と』
瑠璃はつないでいる手と逆側の手を天井にかざした。すると、眩いばかりの白い光が、手を握り合う俺たち兄妹を包んだ。
体が熱くなった。頭と心臓がが締め付けられたような感覚が俺を襲った。吐きそうだ。
次の瞬間、光が消えた。そこは、確かに「エルフ」なんかが住んでいそうな森であった。
木と木の間から光が差し込んでいる。明るい感じの森。あっちこっちから、聞いたことのないでも、綺麗な鳥の囀りが聞こえる。なんとも異世界のテンプレートのような森。
「驚いた?」
「あぁ、もちろんだ。部屋からこんな森に一瞬で移動してしまうなんてな」
驚いたているのは事実だが、俺は落ち着いたトーンで言った。
「この森はね、精霊たちが住んでいるの」
でしょうね。そうとしか思えんよ、こんな雰囲気の森なら……
「おぉ、そうか。じゃあ、俺をその精霊たちに会わさせてくれるんだな?」
完全に求められているであろう台詞を完璧に言ってやった。
「いいえ、会わせられないわ」
本日二度目の
は?
なんでだよ! なんでなんだよ! 精霊の森……みたいなところに連れてきておいて、ずっと会いたかった精霊に会えないとかどうよ……がっかりだ
……取り敢えず、会話のキャッチボールを繋げる。
「ん? 精霊に『会わせられないってどういうことだ?」
「精霊を肉眼で見るのは無理、訓練がいるわ」
「じゃあ、なんで瑠璃は俺の目に見えているんだ?」
「それは、私がエルフ、つまり妖精だからよ」
「ん? 妖精と精霊って違うものなのか?」
精霊とか、妖精とかってゲームやら漫画やらで、かなり使い古されていると思っていたが、違いがあったとは驚きだ。
精霊は無理だけど、妖精であるエルフになら会えると、瑠璃は俺をフェルナ村というエルフの村に案内してくれた。その道中に精霊と妖精の違いについて説明を受けた。
ごちゃごちゃしていて分かりにくかったから3つにまとめてやろう。
1.訓練なしだと、精霊は目に見えない。しかし、妖精は目に見える。
2.精霊はマナを生み出せるし、魔法も使える。妖精は、マナは作れないが精霊の力を借りて魔法が使える。
3.精霊は存在できる場所が存在するが、妖精はどこにでも行くことができる。
以上だ。
こっちの世界に来てから20分ほど経過した頃だろうか。特になんの問題もなく、俺と瑠璃はフェルナ村に到着した。直後、俺と瑠璃は村長である「シャルル・エルシャ」という老人の元へ向かった。
村の周りは木の柵で囲まれていてかなり小さい印象をうけた。家が10軒ほどで、あとはほとんど畑。村長の家は村の入り口のゲートから真っ直ぐに伸びる道の先にあった。
コンコン、と瑠璃が扉をノックをした。すると
「やっと来ましたか。待っておりましたぞ」
いかにも村長らしい声がドアの向こうから聞こえた。
「じい、入りますよ」
瑠璃は扉を開けた。そこには、耳こそ尖っているが、普通の爺さんがいた。
「おお、ルノア様! こちらが『カエデ様』ですか!」
「えぇ、私の兄のカエデよ」
ルノア様って……瑠璃のことか?
「こんにちは! シャルル・エルシャさん! はじめまして!」
挨拶は大事だ。ルノア様について考える前に、俺は元気よく挨拶をした。
「はい、はじめまして。カエデ様。ルノア様もカエデ様もどうぞ中にお入りください」
俺は、瑠璃に手を引っ張られ、村長の家のダイニングに連れて行かれた。
ダイニングには、大きめの机と明らかに小さな椅子が2つあった。
「どうぞ、お二人共椅子にお掛けください。私は立っておりますから」
普通は、若いものが立ち、老人が座るという画にするべきところだろうが、今回はお言葉に甘えた。……それにしても小さな椅子だ。
「カエデ様、ルノア様からお聞きになっていますか?」
「何をですか? シャルル・エルシャさん?」
「シャルルで結構。ええと、その様子だと聞いていないみたいですね……素質の話ですよ」
第3話は明日、21時頃投稿の予定です。