1-17 灰色の男はファンタジーな生き物と出会う⑨
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不思議な夢を見た。
さっき寝たはずだからこれは夢に違いない。というか、俺の視界に俺がいる時点で夢じゃなければおかしい。支離滅裂で自分で言って、何言ってるんだかよくわからんけど。きっと夢だからだろう。
俺がリリを腕に抱いた状態で日本の各地?を旅しているようだった。リリの首には緑色の小さなきんちゃく袋みたいなのがかけてある。あれ?あんなのあったか?
景色がいくつも切り替わっている。いくつか特徴的な建物や風景が見える。
赤茶色と白色の金属製の電波塔、いまだに展望台にのぼったことないけど、あれは東〇タワーだな。あれの建設には一部に戦車の装甲を使ったのだとか、その外観からはまったく想像もできないけどな。
大きな山が見える。遠くから見たときの白と青のコントラストが綺麗だ。あれは富〇山だな。言わずと知れた、日本一高い山。そして、今なお生きた火山。なんらかの拍子に『火を噴くやま』にならないことを切に祈る。
たくさんの神社や寺が見える。たくさんの烏帽子をかぶった神官?が連なって神事をしている光景。たくさんの鳥居が連なっている参道、湖岸に映える金色の建物、絶壁の上に経つ建物と舞台。海の上に浮かぶように経つ建物とぽつんとある鳥居。すべて木材で作られた社と巨大なしめ縄。
遥か彼方、島と島を結ぶ大きな橋。橋の下の海には、勢いの激しい潮の流れ。ところどころには大きな渦が見える。あれは渦潮かな?最後に見えたのは、これまた山。火口部分には巨大なカルデラが見える。阿〇山か?地理の教科書で見たことあるような景色だった。
映像の共通点がわからない。まぁ、夢なんだからわけがわからなくて当然なのだろうけど。そのあとは何か見覚えのある風景になった。これつい最近見たことがあるぞ。屋敷の地下にある橙花の畑か。俺が地面の土をスコップで掘り起こして穴を掘っている。隣ではリリが楽しそうにぴょこたんぴょこたんと飛び跳ねている。しかし、俺は作業に集中しているのか、まったく気にしていないようだった。掘った穴には、リリが身に着けていた緑色のきんちゃく袋から芽の出た種みたいなのを取り出して入れて、土をかぶせていた。土をかぶせ終わったあたりで、例のモンスタープラント君たちがのっしのっしとやってきた。俺が種を植えたあたりに水を撒いていると、モンスタープラント君たちが種を植えたあたりを踏まないように周りを囲むとキシュキシュと根っこを動かして踊り?始めた。正直キモイ。ビジュアル的にとてもキモイ。すごくキモイが、心なしか喜んでいる様子に見える?自分たちの仲間が増えそうだからか?いや、俺には植物の気持ちがわかるわけではないから、完全に直観だが。
種を植えた周りでは、リリがぴょこたんぴょこたんと楽しそうに跳ね回って、モンスタープラント君たちがキシュキシュうねうねと根っこを動かして踊って、そしてそれらを見つめる俺。それぞれの見た目のギャップがありすぎて、ものすごいカオスだ。もはや怪奇現象。
そして、そこで映像が途切れた。
ふと、目が覚めてしまった。なんか夢を見ていた気がするけど、よく覚えていないな。
まだ周りが暗い、今何時だろう?ということで、スマホで時間を確認したがまだ朝の3時。朝まであと3~4時間あるし、もう一度寝ようと思ったけど、なぜか目が覚めてしまった。暗闇の中でぼーっとここ何日かのことを考える。なんか最近、急に周りの環境が目まぐるしく変わりすぎではなかろうか。俺みたいな一般人になにをどうしろっちゅーねん。
どれくらい時間がたったのか、答えの出ないことを考えるのも飽きて(現実逃避ともいうが)、リリはちゃんと寝ているのだろうかと考えたとき、ぽつりと聞こえた。
「…………おとうさん、おかあさん、さみしいよぅ、あいたいよぅ」
そんなつぶやきが聞こえてきてしまった。
そりゃさみしいよな、まだこんなに小さいのに。ふつうならまだ両親と一緒に暮らして親に甘えている頃だろう。それが突然、こんなわけわからんところに一人で来て、おまけに周りは知らないものだらけで、不安にならないほうがおかしい。
俺はリリを起こさないように注意しながら、そっと毛布ごと持ち上げると、胡坐をかいた膝の上にのせて、やさしく何回も頭を撫でてやる。こんなことをしたところでリリの寂しさが解消されるわけでもないし、俺のこの行為がただの自己満足だとしても、今はこんなことしか、この小さなリリにしてあげられない。リリには、明日から俺ができる精一杯のことをしてやろうと思った。
まだ出会って何日も経ってないのに何言ってんだと言われそうだが、これが世にいう父性というやつなんだろうか。俺にはまだ自分の子供はいないからよくわからないけど。でも、この時この瞬間に、俺のこの胸に湧いたこの温かい気持ちは絶対に偽りなんかじゃないと、とてもとても強く感じた。
しばらくの間リリを撫でていると、そのうち俺も眠気に襲われて、このモフモフを抱き寄せたまま、朝までぐっすりと寝るのだった。




