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赤色連盟  作者: 久彌アサ
6/7

「葵、気持ち悪い」

 翌日、町唯一の高校に登校した僕に発せられた第一声は、親友の鋭い言葉だった。僕が教室に入るや否や、僕の元にやって来て毒づく。

「悪かったね、気持ち悪くて」

「いやいやいや、そういう意味でなく。なんで今日お前そんなに機嫌いいわけ?いつも、眠たそうな顔してギリギリにやって来るのに。特に月曜日」

「うん、まぁ、その」

 自分の机に学校指定のスクールバックをかけながら、歯切れ悪く答える。そんな僕に何かを察したのか、親友が勢いよく肩を揺さぶってくる。

「女子か、女子なんだな!抜け駆け禁止!」

「うあぁぁぁあ、ちょ、揺さぶるな……」

 小学校から一緒の僕の親友、吉崎彰浩よしざきあきひろ。地毛で茶髪、見た目こそチャラチャラしているけれど、実際は実直ないい奴だ。まぁ、いい奴過ぎて……といういかにもな典型例だったりもする。僕は一人っ子だけれど、確か三つ上の結構美人なお姉さんがいたはず。

「あ!」

「?」

 思わず声を上げてしまう。彰浩は驚いた様子で、肩に置いた手を離し見つめてくる。その手をとり、

「彰浩、お姉さんいたよね。お姉さんに高校の時の制服貸してもらえないかな」

と、告白したところ親友の顔から表情が消えた。

「葵、悪いことは言わない。今ならまだ引き返せる」

「違うよ!」

 明らかに勘違いをした親友に思わず声を張り上げてしまい、クラスの視線を集める羽目になってしまう。クラスのみんなに愛想笑いをして、彰浩をかがませる。もう少し身長縮め。

「昨日、ほらあの幽霊屋敷あるだろ?」

「あぁ、団地の方にある屋敷だろ?結構マジな感じの」

「マジって……、とにかくそこで色々あって、日向っていう僕たちと同い年の女の子と出会ってさ」

「……おぅ」

「でさ、その日向がさ、学校行ったことないって言ってて」

「マジ?」

「うん、そうみたいで。何か理由があると思うんだ。だから制服だけでも、と思ったんだけど」

「……そっか」

 二人してしゃがみこんで話していると、担任の先生が教室に入って来たらしく、続々と自分の席に着き始めるなか、彰浩は中々席に着こうとしない。

「葵、その日向って子、かわいい?」

「……うん、まぁ、かわいいと思う……けど」

 純粋にそう思う。クラスのどの女子よりもかわいいと僕は思っている。

「よし!分かった!葵の為に俺がひと肌脱いでやるよ!」

 バッと立ち上がる彰浩。俺に任せとけ!という良い笑顔だが、後ろで担任の香坂先生が額に青筋を浮かべている。

「吉崎、誰もお前の全裸なんて見たくないんだから、早く席つけー」

「ひっでぇよ、香坂ちゃん!」

「先生だ」

 パシンと出席簿で彰浩の後頭部を叩く先生。いつものやりとりにクラス中が笑いに包まれる。大人しい僕とは対照的に、彰浩はクラスの人気者だ。どうして親友なのか全くもって謎だ、よく言われる。席に帰り際にこちらを向いた彰浩が口パクで『任せろ』と言ったのが見えて、なんとなくニヤリとしてしまった。

 親友は今日も頼もしい。

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