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短編(その他)

あさぎり町へようこそ

作者: 鴨野朗須斗

 早朝。老婆は半透明の白いごみ袋を手に、毎日の日課である畑の草取りをしていた。

 数年前夫に先立たれてから手慰みに始めた自宅の庭の隅にある家庭菜園は、今日も朝露にしっとりと濡れた野菜が青々と輝いている。徐々に膨らみ始めた果実を愛でながら老婆は思う。


 ――自分で作った野菜がこんなにおいしいのなら、あの人にも食べさせてあげればよかった。


 息子たちも育ちあがり、数年前にこの田舎町を離れた。古い小さな家にひとりぼっちの老婆には、今ではこの野菜たちが自分の子供のような存在だった。



「……今日は、随分と霧が濃いねぇ」



 誰に聞かせるわけでもなく、老婆の口から独り言が零れ落ちる。そして、老婆の言葉に答えるように、背後の霧が揺らめいた。


 それは、でっぷりと太った腹をしていた。肌は墨で塗りつぶしたように黒く、人間にはふさわしくないつるいとした光沢を放っている。申し訳程度に腰に巻いた白い布は、随分と薄汚れていた。

 黒く塗りつぶされた仏像のような姿をした化け物は、地べたにしゃがみこむ小柄な老婆と比較すると八尺はありそうな背丈で、ぱんと張った穏やかな顔に、でろりと飛び出した目玉が不釣り合いだ。本来なら眼球がはまっているはずの双眸は、てらてらと赤い粘膜が光っていた。

 そんな異形に老婆は気づく素振りもなく、雑草を黙々と抜いている。その異形は、静かに老婆に手を伸ばした。





 ふあ、とかみ殺しきれない欠伸が宗助(そうすけ)の口から漏れた。

 昨日はスマホで動画を見ていたから、寝不足だ。気だるい授業を聞き流しながら机に突っ伏して眠り込んでしまいたいが、残念ながら数学の教師はそれを許してくれそうにない。今だって、大口を開いた宗助を咎めるように、教師の眼鏡の奥から鋭い視線が彼に向けられている。宗助はシャーペンの芯を手に突き刺しながら、襲い来る眠気に抗おうとした。

 が、その努力虚しく、彼はクラス名簿の角で頭を叩かれることになる。



「いってぇ」

「自業自得じゃん」



 更衣室で、宗助はいまだにじんじんと痛む頭をさすりながらジャージに袖を通していた。彼の隣では、友人の充希(みつき)がスマートフォンを片手ににやにやと人の悪い笑みを浮かべている。



「夜更かししたんだろ?」

「いやだってさ、藤田の送ってきた動画があまりにも面白かったから仕方ねぇよ」

「まじで? エロ?」

「いや、動物系」



 宗助が無造作にロッカーを閉めると、ばたんと大きな音が響いた。充希はそれに気にした風でもなく話を続ける。



「そういや今朝、掃除ボランティアで怪我人が出たらしいよ」

「怪我ってどの程度?」

「軽症だって」

「ドジだなー。場所は?」

「岡留公園」

「近くじゃん」

「まあ今朝は霧が濃かったしね」

「ボランティアも大変だよな」



 岡留(おかどめ)公園はあさぎり(ちょう)の観光名所のひとつでもある。春は桜、初夏はつつじが咲き誇る公園だが、あいにく冬には見どころと呼べるものはない。

 だが、町主催の観光ルートには組み込まれているし、大きな遊具も置いてあるため、季節問わず近隣住民や観光客の姿が絶えることはない場所だ。



「ボランティアには、頭が下がるよ」

「俺も。金貰ってでもねぇと、掃除なんてしたくないわ」



 宗助と充希のアルバイトは、あさぎり町へと訪れる観光客のガイドである。もちろん掃除もガイドの仕事のひとつではあるが、宗助たちはこの町を無償で住みやすくしようとするボランティア――老人が主である――には頭が上がらない思いだった。無料(タダ)で労働など、宗助としては絶対にやりたくない行為だ。

 ボランティアの功績は清掃活動だけではない。彼らはあさぎり町で広く活動しているので、何かあったときにもボランティア経由で情報がこちらへと回ってくる。以前、三歳の女の子が失踪した時も、郊外の掃除へと赴いていたボランティアたちが発見し、無事保護されていた。

 とはいっても、宗助にはボランティアたちの無料の奉仕の心は理解できそうにない。小遣いを毎月五千円しか貰っていない男子高校生は、どうせなら金になることをしたいのが性であった。



「今日の体育、何だっけ」

「護身」

「まじかー」



 昇降口で運動靴に履き替えグラウンドへと出ると、宗助たち以外の生徒はほとんど集まっていた。

 宗助たちがクラスメイトの輪に駆け寄ると共に、始業の鐘が鳴る。体育教師の宮本は、いつも通りの厳しい表情で、静かに言った。



「出席を取る」



 宮本のよく通る声で、一人ひとり名前を呼ばれる。

 宮本は日本人の成人男性の平均身長を随分と下回る低い背の男だ。背が高めの宗助と比較すると、頭一つ分ほど差があった。しかし宗助は、宮本と戦って勝てるかと聞かれたら即座に否と答えるだろう。


 宮本はレスリングの選手のような、分厚い筋肉を持っていた。鍛え抜かれた胸板は、宗助の腕力では揺することもできないだろう。それに元自衛官という教師は、対人格闘にまで精通している。彼の経歴を聞けば、逆らうどころか視線を合わせることすら憚られるだろう。

 しかしその小柄ながらいかつい見た目からは想像できないが、宮本は実に穏やかな人間だった。ふざけて騒ぐ生徒を注意するときも、また、非行に走った不良を叱るときも、宮本は決して手を出さず、怒鳴ることもせず、淡々と己が所業を振り返らせるのだ。

 宗助どころかこの高校の教師ですら、宮本が声を荒げる姿すら目にしたものはいないだろう。



「渡部」

「はい」



 最後の一人が呼ばれると、次は準備体操だ。

 柔軟を含むこの運動前の準備を、宮本は特に重視している。体をほぐすために三十分ほどかかるし、その後のランニングでも同じくらいの時間を必要とする。体育の授業が三時間連続であることを、他所の人間に話すと驚かれることがあるが、このあさぎり町で生まれ育った宗助には普通のことだった。

 一時間でも二時間でも走り続けることができるし、短距離だって自信がないわけでもない。この町の外と比較すると異常ともいえる程体育に力を入れているのが、あさぎり町の特徴でもあった。


 ――そういえば、そもそもあさぎり町に住んでるって言うと驚かれるっけ。


 宗助が生まれるよりずっと前に起こった現象( ・・)によって、この町は日本どころか世界でも知らないものはいないと言っても過言ではないほど有名だ。

 この町で生まれ育った宗助には自覚はないが、あさぎり町は一部の者からいくら金を積んでも惜しくないほど恋い焦がれ、また一部のものからは足を踏み入れるのもおぞましいとも囁かれる町だった。


 準備運動を済ませた生徒たちの一部は、だらだらとした足取りで校舎の端にある射撃場へと移動する。

 宗助も自身の相棒とも言えるベレッタM92の整備を済ませ、防音のヘッドホンをかぶり構えた。ドン、と重い反動に手が痺れそうになるが、十数人のクラスメイトと共に宮本の指示に従い動く的をじっと見つめる。

 腕力がついてきたので、つい数か月ほど前から扱い始めた新しい相棒は、まだ少し余所余所しい気がした。だけど以前使っていたものよりもずっと強力で、頼もしい。命中率も前相棒ほどとは行かないが、日常で振り回しても問題がないレベルにまでなっていると彼は確信する。

 宗助は両手にずしりとした重さを感じながら、引き金を引いた。


 また別の一部は、グラウンドで思い思いの武器を振るう。それはメイスのような打撃武器だったり、大ぶりのサバイバルナイフだったりと様々だ。


 この異質さに、あさぎり町で生まれた子供たちは気づかない。何せこの町が武装特区と呼ばれ高い壁で囲まれるようになったのは、彼らが生まれるよりも随分前のことだからだ。



 数十年前の夜、あさぎり町は深い霧に包まれた。元々朝霧の名を冠する程度に霧がかかることはあったが、一寸先の視界さえ正確に補足できないような霧はこの町では初めてだった。

 そして霧の中から聞こえる悲鳴、喧騒。霧が薄くなり住民が事態を把握する頃には、死者が二百名あまり、重軽傷者は住民の三割を超えていた。何かに襲われた人たちは口々に叫ぶ。


 ――化け物だ!

 ――変な触手のおばけが!


 町は混乱を極めた。

 その化け物の姿を目にした人も、目にしなかった人も、風で木の葉がこすれる音にも怯えた。警察は必至で混乱を収めようとしたし、自衛隊も出動した。しかしその騒動を収めたのは町の有力者でも、国家機関でもない。



「やあやあこんにちは。突然おじゃまして申し訳ない」



 避難所に集まった町の住民も、警察官も、自衛官も。まるで己の目が信じられないというように、まばたきひとつせずじっとそれを見つめた。

 誰もが何も口に出せない状況で、それは飄々とした素振りで顔を自身の顔を撫でまわしながら、器用に言葉を紡ぐ。



「あたしは猫又ってぇチンケなもんです。つきましてはこの一大事、お世話になったこの町のみなさんのため人肌脱ごうと思いましてね」



 人間たちはその着物を着た、二足歩行の人語を操る猫に釘付けだった。猫又を名乗るそれはかぶっていた手ぬぐいをするりと頭から外し、大きな瞳をぱちぱちと瞬かせる。さてどうしたものか、そういった猫又の心の声が聞こえてきそうな表情で、それはもしゃもしゃと手ぬぐいをこすり始めた。猫又と人間たち、誰も声を発せられず沈黙が続く。


 しかし僅かばかり無言が場を支配したのち、住民の中からその小さな猫へと控えめな声がかかった。



「ミー、ミーなのかい……?」

「あらまぁおばあちゃん! 久しぶりだねぇ、随分と腰がまがっちまって。あたしがいる頃はまぁだもうちょっと、しゃんとしてたと思ったけど」

「ミー……」

「……ああそうそう、感動の再開はまた今度にしましょうや。あたしはミー、この町には十八年と少し住んでました。あんたら人間があたしのことを信じられないのも無理はないと思うけど、友好的な奴を集めました。みぃんな見てくれがおっかないから、あたしがまず先走りとして来たんですよ」

「君、は……君はいったい何なんだ」



 ようやく、自衛官の一人が我に返ったように猫又――ミーへと尋ねる。それに対してミーは、あっけらかんと言ってのけた。



「最初にいいましたよ、あたしはチンケな猫又だって」

「猫、また……?」

「えぇえぇ、そうです」

「君たちは、いったい何なんだ? 人を襲っている化け物と、関係が……?」

「さてさて、なんでかわからねぇですけどあっちの世界とこの町が繋がっちまいやした。あたしらの中には血の気の多いもんもおりますが、人間に友好的なあたしみたいなのもおります。あたしらは、ちょいと悪さをする奴らを諫めるために一肌脱ぐつもりです」

「あたしら? あたしらとは、いったい、何なんだ!」

「……おやおやご存じない? 見てもわからない? 随分とお堅い頭をお持ちのようで。あたしらはただの――妖怪ですよ」



 それから、猫又の言う友好的な妖怪たちによってその場はおさめられた。といっても、猫又たちに戦闘能力を持ったものはそう多くなく、武力行使が必要な場合は自衛隊の――特に頭の柔らかい――一部の力も行使されている。

 しかし猫又をはじめとした妖怪たちは、人知の及ばぬ不思議な能力を持って、怪我人を治療したり行方不明者の捜索を行い、また人間たちへの状況説明にも努めた。


 ――つまりこの町は、猫又たちがあちら側と呼ぶ妖怪の世界へとつながってしまったらしい。

 状況を把握した指揮官は、頭を抱えた。こんな報告書、どんな顔して提出すればいいのか。しかし何度まばたきしても、目をこすっても、目の前のおどろおどろしい生物たちは消えそうにない。怪我人に軟膏を塗る河童のような生き物を横目に、指揮官は大きくため息を吐いた。


 この冗談としか思えない報告書に国の上層部は腹を抱えて笑い飛ばしたくなったが、泣いても笑ってもあさぎり町に妖怪は存在する。何人もの人間が徐々に落ち着きを取り戻しつつあるあさぎり町に足を運び、己が目を疑い、狐につままれたような足取りで本部へと帰還する。

 妖怪の存在が認められたのは、最初に霧が発生してから数か月後のことだ。既に二十数人以上のお偉いさんの顔を見つめてきた猫又が、ほっと溜息を吐いた。


 それから、あさぎり町は大きく変わった。今までは特にこれといった名所もない、廃れた――よく言えば穏やかな――町だったが、妖怪という謎の生物が存在するのだ。彼らは霧のある場所にしか移動できないようで、政府はあさぎり町への入場を制限した。

 小さいとはいえ町をぐるりと囲む自衛官を派遣するほどだ。物見遊山でも、研究目的でも。すべての人の出入りを規制した。


 もちろん、あさぎり町に住む人たちも外への避難を余儀なくされた。

 妖怪に怯える者はすぐにこの町を去ったし、県内外の仮設住宅に移り住むものも多かった。しかしその中で、意地でもあさぎり町を離れようとはしない者たちもいた。


 政府は言う。死者も出ている。未知の化け物がが現れる町に、国民を住まわせるわけにはいかない。

 残った住民は叫ぶ。俺たちはずっとこの町で生きてきたんだ。ここで死ぬ。


 双方の話し合いは続いたが、十余年の歳月を経て、あさぎり町は再び開かれた。それは住民の叫びに心を動かされたわけではない、妖怪の観光化や特異能力の利用など、様々な利権や打算が渦巻いた結果だった。


 しかし一つの問題が発生する。人間に対して攻撃的な妖怪への対応だ。町の人間には、身を守る術がなかった。警察官や自衛隊が動いたところで、この小さな町に大多数の人間を配備する余裕もない。しかし一般市民を見殺しにするわけにもいかない。

 町に残った住民はもちろん、政府の人間すら頭を抱えた。そんな彼らの話し合いに立ち会った一匹の妖怪が、事も無げに口を開く。



「存在するんだから、殺せないってぇことはないでしょうや。幸いあんたら人間は、あたしらにはねぇ便利なもんを持ってるんです。その鉄のからくりが、おイタをした連中に灸をすえるのに効果的ってぇのは、既に実証済みでさぁ」



 とある猫又の言葉から、住民たちは武装を許可された。もちろん、訓練も強制される。はじめは、友好的な妖怪たちに守られる形でしかなかった。


 しかし町を離れた人たちが徐々に戻り、孫、曾孫の時代になると、人間たちは妖怪の手を借りずに己の身を守れるようになった。幼い頃からの戦闘訓練が義務教育に組み込まれ、護身のための武器を教わる。

 今でも猫又を筆頭とした妖怪たちの姿はあるが、彼らは周囲に目を光らせることをやめ、のんびりとした猫のような生活をするようになった。


 大きな力を持つ妖怪は深い霧の日にしか出現できないらしく、力の弱い妖怪は友好的なものも多い。週に一度ほど起こる深い霧の日さえ気を付けていれば、あさぎり町は不思議で住みやすい町だった。


 そしてあさぎり町はこう呼ばれるようになった――武装特区。 

 町の周りには高い壁が築かれ、あさぎり町の戸籍を置く人間以外は観光という形以外では滞在できない。

 その観光だって身辺調査を念入りに重ねた後の抽選であるし、噂では三年待ちもざららしい。

 移住なんてもっての外だ。あさぎり町で生まれるか、あさぎり町に住む人間と結婚するしか方法はない。この状況ならば元は二万人いなかったこの町も閑散とするかと思いきや、この妖怪が存在する場所で生まれ育った人間は町を離れることも少なく、あさぎり町の人口は徐々に増加傾向にある。

 不思議なものに焦がれる人間からしてみれば、あさぎり町の住民は垂涎の的であった。



 体育の授業の後、流れ出た汗を制汗剤でごまかした宗助は、午後の授業を寝て過ごした。

 体育の授業はハードなので、机に突っ伏している生徒も多い。あまりにも寝ている生徒が多いので、宮本にはよくねちねちとした苦情が行くらしい。


 ホームルームを終え、宿題に嘆く充希の愚痴を聞き流しながら、スマホと財布しか入っていない鞄を手に、宗助は駅へと向かった。今日はバイトの日だ。


 町の観光案内――と言っても、だいたいは危険な妖怪からの護衛である。

 観光ルートには人を襲う妖怪を掃除するボランティアたちも多くいるが、どうしても非武装の一般人がのん気に歩ける町ではない。

 ガイドの制服に着替えて、最後に腕章をつけ駅へと行くと、まだ列車は到着していないようだった。観光客をカビだらけにした豆腐小僧が駅員に叱られているのを横目に、ベレッタM92と弾の確認を済ませる。



「来たか」



 列車がホームに到着すると、駅員が数人ごとにガイドを振り分け始めた。この町に来る観光客は事前に町の説明、非常事態時の行動、禁止事項など、政府から厳しく指導を受けている。


 ――今日は外国人が多いな。まあ、英語わかんねぇ俺には回ってこねぇけど。


 宗助がぼうっとあたりを見回していると、不意に、列車に大きな影が差した。

 列車だけではない、宗助が立っている駅の入口すら飲み込む、大きな影だ。

 空を見上げると、列車を掴もうとする大きな手と、にやりと笑う宗助の背丈ほどもある顔が見えた。大入道だ。宗助は気だるそうに、腰元のホルスターから真新しい愛銃を抜き、大入道の額を打ち抜く。


 ――パンパン、と複数の乾いた音が響いた。よくよく見れば、自分以外のガイドや駅員、それに学校帰りの学生たちも、談笑しながら拳銃や小型のアサルトライフルを抜いている。いくつもの銃弾を受けた大入道は、ぼろりと灰が崩れ落ちるようにして姿を消した。



「宗助くん、こちらのグループお願いね」



 駅員に振り分けられた観光客は、発砲音に驚いたのかぽかんと口を開けている。宗助はその女性たちを現実に引き戻すべく、努めて穏やかな声を出し、ほほ笑んだ。



「ようこそ、あさぎり町へ」





 鈍い音が早朝の住宅街に響く。

 老婆はしゃがみこんだまま、自分の肩口からレミントンM870の銃口をのぞかせていた。散弾に砕かれた塗り仏( 黒坊)が、ぼろぼろと崩れて風に巻かれて姿を消す。



「やだ、近所迷惑だったかしら」



 そう呟きながら、老婆は何でもない顔で日課の草取りを再開した。

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[良い点] すごく好きで何度も読みに来ています。 冒頭からは想像もつかない内容で、いい意味で裏切られました!お婆ちゃん強いw あさぎり町に住みたいです。
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