2 なんかレアっぽいのでした
私は春香さんからMSOをその場で貰いそのまま帰宅しました
「ただいま〜」
誰もいない家にただいまと言っても意味がないのですがなんとなく習慣として定着してしまっているようです
自分の部屋に入り鞄を開くとそこには欲しかったMSOのパッケージが見えます
「やっったあぁぁぁ〜!!」
「うるせぇ!」
「ひぃ!す、すいません!」
はい、すいませんでした。近所迷惑ですよねそりゃ
でも仕方がないと思うんです。抽選に当たらずオークションに出品されたものも学生では手が出せない金額でしたし。3の隣に0が6つも並んでるんですよ!?
そんなものがただでいただけるなんて思ってもみませんでしたよ
春香さんには感謝ですね
でもゲームの神様っていうのはやっぱりいるんですね。
きっと私が今までしてきたゲーム全てを
ストーリー制であればボスを倒し、伝説の装備すべてを集め、裏ボス・シークレットボスを倒し
レベル制やジョブ制であればジョブレベルを全てカンストし、ドーピングアイテムでステータスを限界を超えて本当の限界まで上げきり、最高レア度の武器と防具を装備し、某モンスターゲームの図鑑を埋めるように出現モンスターを全て倒し、プレイヤーランキングで常にトップに立ち続ける…みたいなことをしていたからご褒美をくれたのでしょう
『なら、このゲームも極めてみせろ』と言われているかのようです
しかもMSOはサブタイトルとして
〜己がスキルを極めてみせろ!〜
となっているのでまさにうってつけです!
稼働開始時刻は今日の午後6時ですから開始と同時に始められるように先にアバターをつくっておくとしましょう
接続器であるヘッドギアの電源をいれ頭に被り目を瞑ったまま起動句を言う
「リンクスタート」
◆◆◆
目を開けると見渡す限り真っ黒の世界に立っていた。1メートルくらい先には黒い執事服をビシッと着込んだなんか強そうな白髪のお爺さんがいた
既にいつもの外面を引っぺがしゲームモードに切り替えは終わっている
「こんにちは、AIプログラムNo.1 セバスでございます。以後お見知りおきを」
名前は執事らしい定番の名前みたいだね
「こんにちは〜」
「名前を決めてください」
「フィーでお願いします」
「了解致しました。では次にアバターの設定をしてください」
「えっと、いつものアバターをそのまま使うので設定する必要がないからスキップで」
私がいつも使うアバターは腰ぐらいまである長い黒髪にパッチリと開いた赤い瞳の目、口を開ければ明らかに凶器だろってくらい尖った八重歯。そして陶器のような血の気のない白い肌をしている。
まあ、つまり吸血鬼だ。
着ている装備はゲームによるけど大抵黒のフリルがついたドレスを着ている。無論最高レア度だ。てか無ければ作るし
このアバターは初めてVRMMORPGをした時に操作方法がまだちょっと曖昧で、リアルの自分をベースに作っていたんだけど髪の長さと瞳の色を変えただけで操作をミスってそのまま決定して作ってしまったアバターだ
でも案外顔バレしないもんだから気に入ってそのまま吸血鬼キャラでやってきたわけだ。
ついでに言うと名前も全てのゲームで共通して使っている名前だ
宮野の野を英語にしてfield、それの最初をとって語尾を伸ばしてフィーにしたんだ〜
「了解致しました。では次に種族の決定に移ります」
このMSOは種族がランダムで決まるのでできれば吸血鬼がでて欲しいと思っている。切実に。
できればランダムじゃ無ければいいんだけどな〜
まあ、聞いたところスタッフが張り切りすぎて種族を作りすぎてしまったので全ての種族を見終わる時には1~2時間経ってしまうからランダムしか選択肢がなかったそうだ(神凪春香談)
「では、このルーレットを回してください」
「はーい。ほいっと」
クルクルーとルーレットを回す。そして5のところに止まった
セバスさんが少しびっくりしたような顔をした気がする
「で、では次にこのルーレットを回してください」
「ほいほいっと。クルクルー」
次はなんか数字が無い真っ黒なところに止まった。他のところは数字あるのに
今度はあからさまにびっくりした顔をしている
「け…決定致しました。あなたの種族は吸血鬼(神祖)です。とんでもない運をお持ちですね…(1兆の1の確率なのですが…まさか当たる人がいるとは)」
「お?やった!吸血鬼だ〜しかもなんかレアっぽいし。ラッキ〜」
「では最後にステータスの割り振りとスキルの選択に移ってください。スキルは5個まで選択が可能です」
「う〜ん。あ、そうだ。今ってステータスって見ることはできますか?」
「可能です」
「よっしゃ。んじゃ確認確認」
#
名前:フィー
種族:吸血鬼(神祖)
HP: /
MP: /
STR:0
VIT:0
DEX:0
AGI:0
INT:0
スキル『再生』
ユニークスキル
#
「あれ?なんか再生ってスキルが既にあるんですけど…なんでですか?」
「えっ!?ええと、少々お待ち下さい」
「は、はあ。まあいいんですけど」
そういうとセバスさんはこちらに背を向けて指を耳に当て小声で話し始めた
「(どういうことですか!吸血鬼の神祖にスキルを決める前から、しかも再生なんてとんでもスキルつけているのですか!」
《あ、吸血鬼の神祖出たの〜?凄い子がいたね〜あれ相当ゲームやってる人、しかもそこから1兆分の1なのに〜それに神祖=神様みたいなモンだから再生くらいついててもいいじゃん〜》
「(いいえ、よくはございません!スキル枠が1個圧迫されるんですよ!?いいわけがございません!)」
《あ、それは大丈夫。5個プラス再生だから》
「(…なら問題はございません。では)」
「あ、終わりましたか〜?」
「はい、どうもすみませんでした。開発担当者に問い合わせたましたところ神祖の基本スキルなのだそうです」
「大変そうですね…」
「おわかりいただけますか…」
「はい
「ありがとうございます。では気を取り直してステータスの割り振りとスキルの選択に参りましょう」
「あ、それもう終わりました。暇だったので」
「そうですか。この度は誠に申し訳ございませんでした。ではこれよりMySkillOnlineの世界へご案内いたします」
セバスさんの後ろに長方形の光るゲートのようなものが開いた
「あれ?もう稼働し始めたの?」
「はい。ついさっきですが」
「マジですか、そんなに時間経ってたんだ…まあいいか。でも遂にプレイができる!やった〜」
「行ってらっしゃいませ」
そういうとセバスさんは脇に退いた
「はーい」
こうして私はMSOの世界に1歩踏み出した