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4話:整理しましょう

4話:整理しましょう


 コジャナーイ王国を出た僕と灯は街道沿いを歩く。

 地図通りなら、このまま歩いていけば、王都から一番近くの村であるダイ村がある。

 しかし、何時までついて来るのでしょうね……


「後ろを向かないで聞いて。ずっとつけられてる。」

「えっ?ちょっとどうするの?」

「大丈夫、僕に考えがあるから。このまま気づかないふりして歩こう。ほらもっと近づいて!」

「えっ、ちょっと! きゃっ!」


 強引に引き寄せるが、灯も抵抗せずに顔を赤くして俯きながらもされるがままになっている。むしろ腕を絡めてきて積極的だった。

 彼女がいたらこんな感じかな? そんなことを考えていたら灯が、


「ねぇ、アキ? さっきいってた事だけど……本当に?」

「ん? 何が?」

「その、えっと……付き合うって」

「僕は、さっきもいった通り灯のことがずっと恋愛感情で好きだよ。でも灯は違うんだよね? だったら僕はこのままの幼馴染の関係でいいよ。でも、灯は絶対守るから安心してほしい」

「うん、私もしっかりアキのこと考えるね。昨日まであんなにだらしなかったのに急に格好良くなっちゃってさ!」

「ずっとこういう状況に憧れてたからね」

「知ってるわよ。アキの夢が叶ったわけだ」

「一緒にヒロインもついて来てくれたしね」

「ばかっ!」

「そろそろいいかな? そこから一回森の中に入るよ。入ったら僕にしがみついて。

 絶対に手を放しちゃダメだよ!」

「うん、わかった」

「じゃあ、行くよ」


 僕と灯りは道を外れ、森に足を踏み入れた。

 追っ手から死角になった瞬間に僕は灯を抱きしめ木の上に飛んだ。

 驚く灯の口を押さえ反対の手で『しぃー』って人差し指を立てたジェスチャーをする。灯は驚きながらも頷いた。

 追っ手が更に森の奥に入っていくのを確認して、僕は灯に、ここにいるようにいった。

 しかし、灯は一緒に行くと聞かなかったため、一緒に行くことにした。


「おい、どこまで行くつもりだよ。誰を探してんだ?」

「!?」

 

 僕等を探しているんでしょうけど、いってみたかったよねこの台詞。

 【偽装】で試しに自分を森に偽装したら存在を感知されなくなった。どうやら森の一部として認識されるようだった。

 気配までは消せないだろうと思って【隠蔽】も使ってるけどね。

 灯にも【偽装】と【隠蔽】を掛けて下がってるよういった。

 僕は刺客の背後から声をかけると幽霊にでも会ったかのように驚き、後ろに飛び退いたと同時に投げナイフを投げてくる。

 驚きながらも確実に僕の頭に突き刺さるコースだった。いい腕だ!

 そのナイフが僕の眉間に刺さったかのように見えた時に悲鳴が響く。


「ぐあああ、何をした……」

「お前に返しただけだろ、殺さないでやったんだから睨まれる筋合いわないぞ」


 ナイフを投げた手に何故かナイフが突き刺さり、血をぽたぽたと垂らしながら痛みに耐える刺客は、未だに理解ができていなかった。

 簡単な話ですよ【転送】でナイフの飛んでいく先を右手にしてあげただけだから。


「……お前は何者だ?」

「知ってるだろ? 召喚された異世界人だよ」

「……来たばかりでこの適応力はありえない」

「まあ、そんなことはいいだろ? で、お前を寄越したのは誰だ? 王か?」

「……」

「姫か?」

「…、…」

「姫だな。 もう帰って伝えろ、姫にお前は必ず殺すってな」 

「それはできないな、刺し違えてでもお前はここで殺させてもらう」

「それこそできねーよ、俺が灯を残して死ぬわけないだろ。っと」


 話も途中に、刺客は投げナイフを投げてくる。

 話をしている間に、治癒魔法をかけていたようだった。

 しかし、向かって投げられたナイフはどれも届かず地面に落下する。

 僕がただ話してるだけと思ったら大間違いですよ!


「……お前、本当に何をした?」

「さあね、もういいだろう。お前のはすべて奪ったしな。

 城に送ってやるから姫に伝言をしっかり伝えろよ」

「おい、まt」


 話も途中に刺客の姿は消えた。

 僕が、王国に転送したからね。細工はしたけど。

 王族はやっぱりクズだったな、この際、コジャナーイ王国潰すか?

 おっと、いかんいかん! 灯ちゃん放置してた。 


「アキ……大丈夫なの?」

「僕は大丈夫だよ、まあ詳しい話は宿ででも話すよ。とりあえず村に行こうか」

「うん」


 今度は、何もいわず灯が自分から腕を組んできた。


「灯?」

「えへへ、嫌じゃないでしょ?」

「最高だけど?」

「じゃあ、行こっ!」

「そうだね、灯って胸が結構あったんだね」

「普段は着やせするタイプなんです」

「自分でいうなし」

「嬉しいくせに」

「もっと当てて」


 胸が強調される服でダイレクトに当たる衝撃は見た目以上の大きさを感じさせた。

 正直たまらん。贅沢極まりないです。


「ほら、行くぞ」

「うん!」


 そこからは、邪魔も無く街道に戻り歩き続けた。

 そんな2人が村に着いたのは、日が暮れる前だった。

 まさか村まで4時間も歩くとは、さすがに疲れた。精神的に、体力はまだ余裕あるな。

 

 村に入る前に門番に止められる。


「初めて見る顔だな、身分を証明するものはあるか?」

「無いですね、入場料はいくらですか?」

「身分証がない場合だと、ひとり銀貨2枚だな」

「わかりました。ではこれでお願いします」


 銀貨を4枚渡すと問題なく村へ入ることができた。

 銀貨4枚あれば誰でも入れるってのも怖いよね。

 身分証ね……


「身分証ってあったほうがいいのかな?」

「この国では作りたくないな。どこにいるのかが王国へ筒抜けになる可能性がある」

「じゃあどうするの?」

「早くこの国を出て、身分証を作るつもりだよ」

「行く当てはあるの?」

「敵対している国へ行こうと思う。そこまでは追っ手も来ないだろうしね」

「私はアキに付いて行くからね」

「ありがとう。とりあえず今日の宿を探そうか」

「そうだね!」


 僕たちは村にある唯一の宿屋【怯える亭主(スケアードダディ)】へ行った。

 出てきたのは、体格のいい女将さんだった。肝っ玉母ちゃんって感じの人だ。 


「いらっしゃい」

「2人泊まりたいんですけど空いてます?」

「生憎だけど、1人部屋がひとつしか空いてないよ」

「じゃあ、灯だけでも泊まりなよ。僕は外で寝るから」

「嫌だよ。私は今日アキの足引っ張りっぱなしだもん。泊まるならアキが泊まって!」

「う~ん、女将さん料金2人分払うので1人部屋に2人って可能ですか?」

「あんたらがそれでいいなら私に文句はないよ、でも値引くつもりはないからね」

「灯、一緒でもいい?」

「私は大丈夫だよ」

「じゃあすみません、2人お願いします」

「あいよ、2人で銀貨5枚だよ」

「ではこれで、お願いします」


 銀貨を5枚渡す。


「部屋はそこの階段を上がった2階の突き当りだよ。夕飯は今から準備するから1時間経ったら右手側にある食堂で食べれるようにしておくよ。」

「わかりました。ありがとうございます」

「朝飯は6時からだから忘れずに起きるんだよ」

「はい、それでは」

「ごゆっくり」


 余談だけど、女将さん名乗らなかったな。大体始めて行った宿屋で良くしてもらって、旅のサポートしてくれるのに……

 まあ、人付き合い苦手だしいいけどね!

 

 部屋はシンプルで、ベッドと荷物を置くスペースしかなかった。


「お風呂はやっぱり無いよね……」

「まあ、そこはちゃんと考えてあるから大丈夫だよ。多分何とかなるから」

「じゃあ信じようかな」

「とりあえず、夕飯までに今までの話をしようか。気になっているでしょ?」

「そうね、教えてもらおうかな」


 そうして、2人でベッドに腰かけて、今日の出来事を話していく。


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