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10話:家族って感じ

10話:家族って感じ


 宿に戻って来た僕とアイリスは裏口へ行くと、丁度旦那さんも本日分の解体が終わったようだった。

 ご丁寧に分けた骨は洗い終え綺麗に並べてくれてある。

 骨を早速鞄に仕舞い、ついでに今後解体する予定の本体も置いておいても仕方が無いのでバッグに仕舞う。

 本体は先程まで入れていた空間ではなく別の小さめの空間だ。中は氷で満たされ鮮度を落とすことがなく保存が可能なチート空間です。


 旦那さんには夕食期待してます。といい残し部屋に戻るがまだ灯達は帰ってきていなかった。


「何してるかわかる?」

「今試験の真っ最中じゃのー」

「そっか、カリーナ頑張ってるのね」

「我は眠くなってきたのじゃ……」

「僕もだよ、一緒に寝る?」

「うむ……我はここがいいのじゃ」

「臭くない?」

「我の好きないい匂いじゃ」

「なら良かったよ」


 アイリスは僕の右腕を開いて身体を入れ肩に頭を置いてきた。

 僕の方をチラチラ見て目が合うと『えへへー』っと年相応の笑顔を向けてくるものだから可愛くてしょうがない。とりあえず右腕でなんとか頭を撫で続けるといつの間にか寝息が聞こえ始め僕もいつの間にか眠りに落ちていた。


「全く……こんな幸せそうな顔しちゃってさ、こっちは大変だったっていうのに。まるでお父さんと娘ね」

「我はこんな寝顔をしておるのか……マジマジと見ると恥ずかしいのじゃ」

「この感じだと多分アキ達はもうお風呂入ってるわね。私達もお風呂行こうか」

「行くのじゃ!」


 起こすことなく灯たちはお風呂へ向かって行った。


 灯たちが戻って来てドアを開ける音で目を覚ます僕とアイリス(本体)は一緒に目を擦り伸びをした。

 あれ?っと思いお互い横を向くとどちらからでもなくふたり同時に笑った。


「完全に父と娘ね」


 完全に油断していた僕は灯がいたことに気づいておらず必要以上に驚いてしまう。


「うおっ!? 灯さん?お帰り……怒ってる?」

「お帰りなのじゃ……怒ってるのじゃ?」

「怒ってないわよ。元々こんな顔よ知ってるでしょ?

 ……ただアキとの子供ができたらこんな感じかな?って思ってたの」

「子供ができたら我にもちゃんと見せるのじゃー」

「まだ何もしてないんだから気が早いよ」

「じゃあ早速今夜から励むのじゃ!」


「「おいっ!」」


 色々とぶっこんできた女神様の本体は『えっ?何が変なこといったのじゃ?』と完全に分かっていなかった……


「まあそのうち……ね」


 いやいや灯さん上目遣いしながらそんな顔でこっち見ないで……今すぐにでも押し倒しそうです。

 僕は一向に構わん!のですよ!


「灯は今日どうだった? 上手くいったかな?」

「その前にまずこの見た目直して欲しいかな……」

「ああそうだね。カリーナ姿も可愛いよ!今度はツインテールにしようかな……」

「まあアキが見たいならしてあげるわよツインテール……少し髪伸ばそうかな……」


 おっと、心の声が漏れていたようだ!いかんいかん。

 でも、ツインテしてくれるのか……やっべぇな。理性持つかな?しかも黒髪も伸ばしてくれるのか……僕たまらないっす!


「楽しみが増えたなー」

「それで今日だけど、ちゃんと身分証は作れたわよ。ほらね!」


 灯は、どやっ! といわんばかりに左手を腰に当て右手を前にまっすぐ伸ばし掴んだ鉄のカードを見せてくる。


 そこに書かれている文字は……

 まあ読めませんでした。


「で、なんて書いてあるの?」

「私が読めるわけないでしょ?」

「ですよねー……アイリス文字って何とかなる?」

「うーむー……そうじゃのー……アースリザードの魔石は持っておるか?」

「ここにあるよ」


 アイリスに魔石を渡す。

 その魔石をアイリスは割った……

 っていっても本の一部だけどね。

 ふたつの欠片を持ち、魔石は返してくる。

 受け取ると、アイリスは粘土をこねるように魔石の欠片をひとつずつゆっくりとこねて丸く整えた。

 丸くなったふたつの魔石を持った掌に魔力を込めると、魔石は僕と灯の腕輪へと飛んできた。

 腕輪が光出し少しの熱を感じる。

 光が収まった時、腕輪にはふたつの宝石が輝いていた。まあ一つは魔石だけどね。


「その魔石を押してみるのじゃ」


いわれるままに僕と灯は魔石を押すとウインドウが開く。


「「んん?」」


ふたりで首を傾げていると……


「カードにそのウインドウを向けるのじゃ」


「「おおーーーー!!」」


「どうじゃ?すごいじゃろ?褒めてもいいのじゃ!」


 確かに凄かった。まさかカードにウインドウを向けると文字を読み取り自動で翻訳してくれるなんて……

 これならこの世界の本も読める……

 アイリス様々だった。


 ちなみにードには


カリーナ

16歳

火魔法・水魔法

傭兵 ○

討伐 ○


 って書いてあったようだ。まあ上手く誤魔化せたようでなによりです。


「それで試験はどうだったの?ずいぶんと時間がかかったようだけど」

「そうなのよ!【鑑定】の能力を持ったお婆ちゃんがいて魔法が使えることに気づいちゃってね……」

「ステータスはバレてないんだよね?」

「あれはそもそも我が生き物を見やすくするために作った神用の数値じゃ。人間がわかるはずないのじゃ!

 それに試験の際は我が灯の力を封印したから一般人程度にしか見られておらんのじゃ安心しよいのじゃ」

「それなら安心だよ。ありがとねアイリス」

「うーむ、我がふたりいると名前がごっちゃでわからないのじゃ……何か略称を付けるのじゃ!」

「そうだなぁ……じゃあ、本体が【アリス】で分体が【アイリ】なんてどうかな?」


「「わるくないのじゃ!!」」


「なにそのセンス、アキやるわね……」

「気に入ってもらえたようで何よりだよ。この際だからアイリは服も黒くして見た目も独立してもいいんじゃない?」

「我は構わないのじゃ」


 アリスの許可もでたし、アイリは服を黒くした。

 これでどう見ても双子である。

 後で女将さんに子供やっぱりふたり追加って訂正しないとね……


「それでアキの方はどうだったのよ」

「……うん」

「えっ?何があったの?」

「えっとー……死にかけちゃった」


「あれ?危険は無いか確認したわよね?」

「……はい」

「アリスちゃんも危険は無いっていったわよね?」

「……はいなのじゃ」


 仁王立ちした灯の前で正座で怒られる僕とアリス。

 俯きながらも時々顔を合わせては小声で『ママ怖いね』なんていうと『パパが優しくしてくれればいいのじゃ』なんて返してくる。

 そんなふたりを見て怒る気も無くなったのか灯が聞いてくる。


「でもアキのステータスだって普通の人間よりは強いんでしょ?そんなに強い相手だったの?」

「まあ初戦から竜種じゃったからの……無理はないのじゃ」

「15mくらいのワニだったよ。本当に怖かったけど……やっぱり命を奪うって奪われる危険があるってことを身に染みて理解したよ」

「まだ私にはその感覚は理解できないけど……怪我とかは無いの?」

「うん。そこは攻撃される前に魔法一発で倒したからね……全力出して魔力切れ起こして死にかけたけどアリスが助けてくれたよ」

「まあ折角できた友達じゃしの……助けるに決まってるのじゃ」

「アリスちゃんありがとね」

「どういたしましてじゃ」

「まあそんなことがあったからそんなに仲良くなったのね。完全にアキ見た感じ親バカのお父さんよ」

「そりゃこんなに可愛かったらしょうがないって!アリスとアイリは嫁にはやらん」


「「パパッ!!」」


 ノリノリでした。


「ねえパパーアリス弟か妹がほしいのじゃー」

「ママーアイリもほしいのじゃー」


「どうするよママ?」

「どうするもなにもまだ付き合ったばかりで結婚もしてないわよ!」

「そういう訳で愛しの娘達よ結婚するまで待っててね」

「わかったのじゃ」

「しょうがないのじゃ」


 そんな感じで第一回プチ家族会議は終了し、夕飯を食べに食堂へ向かう。

 今日のメニューは【アースリザードのシチュー】か【アースリザードのから揚げ定食】だった。

 僕等家族は皆がシチューにしたのだが旦那さんはおまけでから揚げを付けてくれる。

 娘達は大喜びです。


「「ん~んまっ!!」」

「これやべぇな!!」

「噛むたび肉汁が溢れてくるよ!」


 大絶賛でした。まだいっぱいあるからっていったら灯まで目を輝かせてました。

 喜んでくれたようでなによりです。

 食事も終え部屋に戻ってくると娘達はおねむのようで、ベッドに寝転ぶなりふたりで抱き合って寝ている。

 可愛らしい『『すぅーすぅー』』と規則正しい寝息が聞こえる中で灯から小さい声で誘われる。


「お風呂行こうか」

「いいよ」


 そうして僕はまたお風呂へ入るのだった。

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