第七件・怪我
結局あの後も真昼に振り回された八郎は家に帰って今日一日を振り返って日記をつけていた。
―今日は非常に疲れた。確かに普通の生活とは違うがなんだか望んでいたものとは違う。まあしばらくは頑張ってみるとしよう―
次の日八郎は学校にいた。
「ようハチ!」
後ろから声をかけられた。友達の昭彦だ。
「よう昭彦。朝っぱらから元気だな」
「なんだよ元気ねえな」
昭彦がつまらなそうな顔をして言った。
「別に。いつもだろ?」
めんどくさそうな顔をしながら言った。
「確かにな。それよりバイトどうだったんだよ」
「それがさあ」
八郎は昨日の事を話した。
「へえ。何か面白そうなバイトだな」
「お前はやらないからそんなこと言えるんだよ。あいつの相手は疲れるぞ」
「今度会わせてくれよ」
「あいつがいいって言ったらな」
「よし。約束だぞ」
昭彦が走っていった。(ものずきな奴だ)
「おい。もう授業始まるぞ」
後ろから担任に言われた。教室に入って行った。
学校が終わった八郎は真昼の家に行った。
「あれ?まだ時間じゃないですよ」
商店街を歩いていたら真昼に会った。また、あの袋を抱えていた。
「暇なんだよ」
真昼がジッと顔を見てきた。
「な、何だよ」
「どうせ補習さぼって逃げて来たんでしょ?」
当たっていた。
「そ、そんなわけないだろう」
動揺していた。
「まあいいですけどね。それより荷物、持って下さい」
買い物袋を持っていた。
「また買い物したのかよ」
「いいから持って下さい。気がつかない人はモテませんよ」
痛いところをつかれた。
「うるせえ。ガキんちょに言われたくないね」
スネをおもいっきり蹴られた。
「早く来て下さい」
うずくまっていると目の前に買い物袋を置いてさっさと行ってしまった。
ボーっと過ごしているといつの間にか七時になっていた。
「留守電頼みますよ」
大きな袋を抱えて出て行った。(あれ何だ?)すごく気になった。毎回出かける時に持っている。
よく考えると昨日の買い物の時も持っていた。
ずっと考えているとふと写真が目に飛び込んで来た。(何だこれ!?)真昼の両親と思われる人の顔が破かれていた。(どういう事だろう?)考えているとしたから物音がした。(泥棒!?)近くにあった掃除機のホースを持ってゆっくり下に降りて行った。電気がついておらず真っ暗だった。階段を降り終わった瞬間いきなり猫が飛びかかってきた。
「おわっ!!なんだよ猫かよ!びっくりしたなあー・・・」
電話が鳴った。着信アリのテーマソングだった。
「!!!」
声にならない悲鳴が出た。玄関の方からだった。(なんだよ。たくよー)少し膝が震えていた。玄関に行くと真昼の携帯が落ちていた。
「も、もしもし・・・」
怖がりながらでた。
「どうかしたんですか?声が震えてますよ」
真昼だった。
「なんだ真昼かよー。なんだよ」
ホッとした。
「ちょっと怪我したんで迎えに来て下さい」
「はぁっ!?怪我?大丈夫なのかよ!?」
恐怖が完全に吹っ飛んでしまった。
「それほどでもないんですが。とりあえず来て下さい」
遊びに誘うような軽さだった。場所を聞いた八郎は必死に走って行った。