第六件・初仕事
しばらくして階段を直していると真昼が部屋からでてきた。
「八郎さん。出かけてきますので留守番よろしくお願いします」
大きな袋を抱えていた。
「それ終わったら休んでいて下さい」
真昼が階段を降りて行った。下から三段目の所で階段にはまった。
「ここもお願いします・・・」
顔が真っ赤になっていた。
「はいはい。何時頃帰って来るんだ?」
下に降りて行きながら聞いた。
「わかりません」
真昼は必死に足を抜こうとしていた。
「まったく。やっぱりガキんちょだな」
足を抜いてあげた。
「・・・どうも」
顔がさらに赤くなった。
「車に気をつけろよ」
真昼が走って出て行った。
「仕事がまた増えた・・・」
仕事が全て終わった頃には十二時を過ぎていた。時間がかかったが掃除もしておいた。今度は何とか出来た。(まだ帰って来ないのか)真昼が出て行ってから一時間以上経っていた。(あれ?メール来てる)携帯が光っていた。真昼からだった。
(遅くなります。お昼は勝手に何か食べてて下さい。冷蔵庫の中の物は使っていいですよ・真昼より)
(ん?何でアドレス教えてないのに・・・)不思議な事だ。しかし、お腹が空いていたので余り考えなかった。冷蔵庫を開けてみたが中は空っぽだった。(えーと、どうしたら?)出かけるわけにもいかず帰りを待つしかなかった。
「ただいま〜」三時を過ぎていた。
「八郎さんお疲れ様でした。あれ掃除もしたんですね」
遊んできたのか服が汚れていた。
「お前、なんで俺のアドレス知ってんだよ。それに冷蔵庫の中何もなかったぞ」
「・・・」
真昼が何も答えなかった。少しふて腐れた顔をしていた。
「何か言えよ」
「・・・お前じゃありません」
抱えていた袋を片付けながら言った。
「別にいいじゃん。そんなこと」
「よくありません!名前は重要なんです!」
本気で怒っていた。
「わかったから怒るなって。じゃあ真昼。なんで俺のアドレス知ってんだ?」
「そんなの簡単ですよ。勝手に見たからです」
笑顔で答えた。それを聞いた八郎は呆れてしまった。
「お前なんで勝手に見るんだよ!」
「真昼!」
「真昼なんで勝手に見るんだよ!」
「だって知らないと不便でしょ?」
「〜」
呆れて何も言えなかった。
「あれ?冷蔵庫の中何も無いじゃないですか。随分食べましたね」
冷蔵庫の中を見て笑いながら言った。
「食ってねえよ・・・」
「え?」
「だから!何もなかったの!」
「ああそうでしたか。じゃあ買い物行きましょう」
そう言って真昼はさっさと出て行ってしまった。(マイペースだなあ〜)八郎も後を追って出て行った。