第四件・電話
家に帰った八郎はこの急な展開をいまいち理解出来ないでいた。その時携帯が鳴り始めた。
「もしもし」
「よう!ハチ!またバイト探ししてんの?」
友人の昭彦だ。
「いや、バイトは決まったんだけどさあ、なんか変な感じでさ」
「何?なんかやばい仕事なの?お母さんはお前さんの事が心配で心配で」
昭彦が茶化してきた。
「ふざけんなよ」
八郎が低い怒った声で言った。
「なんだよマジでやばい仕事なの?」
心配そうな声で昭彦が言った。
「いや、やばいんじゃなくて変なの。雇主が中学生くらいの子供なんだよ。しかも仕事の内容が家事の手伝いだし」
「中学生の家事の手伝い?たしかにな。まあ、バイトが決まっただけいいじゃん。変な事言うからヤクザか何かの仕事かと思ったよ」
昭彦が笑いながら言った。
「そんなわけ無いだろう。そもそもお前がバイト紹介してくれないからこうなるんだ!」
「無茶苦茶言うなよ!まあ頑張れよ」
「ああじゃあな」電話を切って大きな溜め息をついた。
「はあー。やっぱりやめとけば良かった」
しかし、心の中では喜んでいた。バイトが決まったことと、何かが起こるのではないかという期待で。(そうだ・・・母さんに電話しておかないと)八郎は携帯を開いてダイヤルした。
「はい。神崎です。現在電話にでられません」
留守電だった。
「母さん。男の人と会ってる時にごめん。俺、明日からバイトいくから。まあ母さんには関係無いだろうけど・・・。じゃあ」