第三件・採用
「どうぞ。開いてますから入って下さい」
八郎は一呼吸おいてから扉を開けた。そこは下の階と違い生活感があふれている部屋だった。しかし誰もいない。
「よくいらっしゃいました」
扉側に背を向けている大きなソファーから頭がでてきた。
「突っ立ってないでこっちに来て下さい」
ソファーの正面に八郎は周った。そこに居たのは中学生ぐらいの子供だった。
「来るのが遅いですよ」「お前があんな悪戯をしたのか」
「悪戯なんてしてませんよ。本気ですよ」
「お前みたいなガキんちょがバイトの募集!?」
八郎はおもいっきり笑ってやった。
「失礼な人ですね!それにお前でもガキんちょでもありません。僕は神林真昼です。呼び方は何でもいいですよ」
真昼は笑いながら言った。
「呼び方なんてどうでもいい。本気だと?何の仕事をするって言うんだよ」
「あれ?ちゃんと見なかったんですか?」
真昼が驚いた顔をしながら言った。「何を?」
「バイトの内容ですよ。ちゃんと家事の手伝いって書いてあったでしょ。別に店で働くわけじゃないですよ」
確かに書いてあったかもしれない。しかし、ろくに確認せずに電話したため、内容はよく見ていなかった。
「家事の手伝いって・・・・お前の両親は?」
「親なんて別にいいでしょ。それよりも貴方の名前は?後!お前じゃなくて、ま・ひ・るです」
最後だけわざとゆっくり言った。
「神崎八郎・・・」
「では、八郎さん採用です。明日から来て下さい」
「来て下さいって俺家事なんて何もできないよ」
「大丈夫です。詳しい事は明日話ます。土曜日ですし朝から来て下さい。じゃあもう帰って下さい」
笑顔で追い返された。